フィギュアの髪の毛の構造を分析し計画を立てる

 こんにちは!Z造形師です。

それでは3DプリンターのForm3でフィギュアを造形するために、さらにモデルを修正していきましょう! 

複雑な部分の分割方法:「髪の毛」編

 それではまず「髪の毛」をどう分割すれば、3Dプリンターでの造形後にうまく組み立てができるのか?
これを考えるために、「髪の毛」をよく観察していきましょう。
無計画にやると、あとで「髪の毛」が頭にうまくはまらないとか、頭と髪の毛のあいだにすき間ができて固定できないなど残念な結果になりがちです。

髪の毛」組み上げの確認と計画

ぱっと見たところでは、まず「ポニーテール」の「緑の輪」はポニーテールと一体化したいところですが、着色を考えると分離しておいたほうが良さそうですね。
とは言え「ポニーテール」「緑の輪」は、「最後に頭にダボで接合」で問題なさそうです。

それでは「前髪」を見ていきましょう。

前髪から出ている髪1本は、後付けするほうが無難のようです。
顔の左右下側に見られる細い別れ毛に関しては、先端が太い毛に戻っていて強度は大丈夫そうです。
なので、太い毛と一体で出力しましょう。

前髪全体に関しては、オデコ以外に頭と接合箇所がなさそうです。
顔面前からの差し込み方式でセッティングするようにしましょう。

さて次に「後ろ髪」を見ていきましょう。
Blenderで厚みをつけておいたので、頭にめり込んでいますね。

耳のあたりの「もみあげ」周辺の毛に、注目してください。
ここは「前髪」「後ろ髪」「ロングヘアー」が交差する部分です。
ここの処理が最も複雑になる部分なので、じっくりと見て考えていきましょう。
まず「前髪」ですが「後ろ髪」に食い込んでいますね、ここは「後ろ髪」をブーリアンで削って「前髪」優先にしましょう。

「ロングヘアー」も見てみましょう。
後頭部にかぶせるような形状ですね、耳の前に髪の毛の房がありますが上(斜めうしろ)からセッティングする仕組みにすればこのままで使えそうです。

では「後ろ髪」との取り合いはどうでしょうか。
後頭部から耳のあたりまでかなり食い込んでいます。
頭への装着順序は、「後ろ髪」→「ロングヘアー」なのでここでも「後ろ髪」からブーリアンで削って「ロングヘアー」優先にしましょう。

今度は「前髪」と「ロングヘアー」との取り合いです。
重なり具合からここは「ロングヘアー」からブーリアンで削ってしまうのが良さそうですね。
前髪優先でいきましょう。

さて髪全体を詳しく見てきましたので、まとめておきます。

①「ポニーテール+緑の輪」:緑の輪からブーリアンで削る
②「ポニーテール/緑の輪+ロングヘアー」:ポニーテール/緑の輪からブーリアンで削る
③「後ろ髪+頭」:後ろ髪からブーリアンで削る
④「ロングヘアー+頭」:頭からブーリアンで削る
⑤「後ろ髪+ロングヘアー」:後ろ髪からブーリアンで削る
⑥「前髪+後ろ髪」:後ろ髪からブーリアンで削る
⑦「前髪+ロングヘアー」:ロングヘアーからブーリアンで削る
⑧「前髪+頭」:前髪からブーリアンで削る

このようにまとめますと、複雑に見える作業も実は単純な作業の積み重ねであることがわかりますね。
※これらの接合部分の形成後に、ダボ付けを行いましょう。

Zbrushでサブディバイドする 

接合部分の形成作業の前に、もともとのハッカドール2号の3Dデータをなめらかな仕上げにしておく必要があります。
各サブツールにZbrush内でサブディバイドが必要です。
この時「クリース(折り目)」が必要な箇所があるか無いか、よく見て考えてから進めるようにして下さい。

 ・:そのままディバイド3回

 ・ロングヘアー:クリース(しきい値22)設定後ディバイド3回

 ・前髪:クリース(しきい値20~90)設定後ディバイド3回

 前髪は複数のサブツールで構成されています。
それぞれのサブツールで最適の「クリースのしきい値」は、違っているようです。
「クリースのしきい値」数値の基準は、数値が大きいほどクリース範囲が小さく、数値が小さくなるほどクリース範囲が大きくなります。
つまり数値が大きいとなめらかで、小さいと角張る、このように覚えておけば良いのではないでしょうか。

 ちなみに前髪にこのような凸凹が見られました。
こんな時は「クリース(折り目)」をかける前に、「Shift」を押しながらこのような部位をドラッグしてスムースをかけておきましょう。

その時スムースの効果がきつすぎたなら、「Z強度」を小さくして弱めてからドラッグするときれいに行きます。
「Z強度」の調整は、「Shift」を押したまま上部にある「Z強度」スライダーを調整するとできます。

 ・後ろ髪:クリース(しきい値60)設定後ディバイド3回

ここはロングヘアーでかくれてほとんど見えませんので、ゆるめで大丈夫だと思います。
 耳元のもみあげはあとで調整します。

 ・ポニーテール:クリース(しきい値45)設定後ディバイド3回

このポニーテールは左右対称で作成されていて、部品としても左右に分割されています。
なので、まずはどちらか半分を削除しておいて、片側だけを加工してから左右対称のコピーで複製しましょう。
「穴閉じ」してあるポニーテールをクリース→ディバイド3回してから、ミラーコピーします。
「ミラーコピー」は、「Zプラグイン/サブツールマスター/ミラー」です。

 ・緑の輪:「ポリグループ/自動グループ」→「PSクリース」→ディバイド3回

以上の処理をほどこした、まだ荒削りのものですがサブディバイドで整えた「髪の毛」が下図です。

 この「髪の毛」に先ほど①~⑧に箇条書きした内容を実行していくわけですが、実はほんとに今まで行ってきた基本的なブーリアン作業ばかりなのです。

では何がポイントかと申しますと、それはこの①~⑧を実行する「順番」にあるのです。
まさにパズルを解く手順のような感じですね、では順を追って考えていきましょう。

①「ポニーテール+緑の輪」:ブーリアン作業は特に問題点なし

②「ポニーテール/緑の輪+ロングヘアー」:ブーリアン作業は特に問題点なし

③「後ろ髪+頭」:耳前の髪のみ注意

④「ロングヘアー+頭」:耳前の髪のみ注意

⑤「後ろ髪+ロングヘアー」:ブーリアン作業は特に問題点なし

①~⑤では、耳の前にある小さな髪の毛が気になりますが、おおむね①→⑤の順番で作業的には問題ないようです。

残る⑥~⑧ですが、この作業はすべて「前髪」がらみです。
⑥→⑧の順番に作業して大丈夫なようです。

⑥「前髪+後ろ髪」:後ろ髪からブーリアンで削る

⑦「前髪+ロングヘアー」:ロングヘアーからブーリアンで削る

⑧「前髪+頭」:前髪からブーリアンで削る

ここでやはり気になるのが「耳前の髪の毛(後ろ髪のもみあげ部分)」ですね。
構造的に変えたほうが無難かとも思いますので、ここで一度検討してみましょう。

各髪の毛のパーツの関係を見ていくと、「後ろ髪の耳前の髪の毛」が「前髪」によってほぼ分断されていることがわかりました。
このまま作業すると「耳前の髪の毛」は切り取られてしまいますが、それでは困りますね。
ではどうするか、これは「耳前の髪の毛」を「後ろ髪」ではなく、「前髪」側の部品として移植することで解決できると思われます。

さてこの作業ですが、問題点は「前髪」についた「耳前の髪の毛」が顔形状と干渉せずにぴったりと接合面にはまり切るのかという点です。
前から差し込む予定の「前髪」ですが、本当に大丈夫なのか?検証しておかなければ後で困ることななりますね。

 入るか入らないか、微妙な所は多分に「勘や経験」が頼りになってきます。
見たところ前からの差し込みでも問題はなさそうですが、この「耳前の髪の毛」自体が顔に超接近しているので、念のため少し離していおたほうが無難と思います。

それでは次回、「①→⑧」ならびに「耳前の髪の毛移植」を順を追って見ていきましょう。

この章のまとめ

今回はフィギュアにおいて最も複雑な構造である「髪の毛」の分割接合について、最初の検証と計画立案の手法をご紹介しました。
データをよく観察して、その問題点や改善点を抽出して、手順を考えたり構造の再構築をしたり・・・このあたりは経験的な第六感もあるかもしれません。
設計図のようなものや手順も、そのつど書き留めておくことも大切な作業といえますね。