Form 4L徹底解説!
大型光造形の速度・失敗リスクを克服した新技術とは

「大型の光造形(SLA)3Dプリンターは、造形が完了するまで時間がかかるのが当たり前」
「大きなパーツを出力して、翌朝確認したら失敗していた時の絶望感」

これまで大型モデルの造形に携わってきた皆様であれば、このような経験や「諦め」に近い感覚をお持ちではないでしょうか。これまでの大型機は、そのサイズゆえに、どうしても生産スピードや成功率においてトレードオフを受け入れざるを得ない側面がありました。

しかし、その常識は過去のものになろうとしています。
2024年春、驚異的な造形スピードで業界に衝撃を与えた「Form 4」。その革新的なテクノロジーを、大容量サイズへと拡張した待望の新機種Form 4Lがついに発表されました。

本記事では、Formlabs製品を長年取り扱ってきた販売店の技術担当としての視点から、Form 4Lが従来の「Form 3L」からどのように進化したのか、そして日本の製造現場にどのようなメリットをもたらすのかを、カタログスペックの裏側にある「現場のリアル」を交えて徹底解説します。

大型光造形のボトルネックを解消する
「Form 4L」

Form 4Lは、単にForm 4を大きくしただけの製品ではありません。従来の大型光造形が抱えていた「速度」と「安定性」という2つの大きな課題を、根本的な技術刷新によって解決した産業用マシンです。

1. 速度革命:LFSからLFDへの転換

Form 4L最大の特徴は、心臓部である造形エンジンの刷新です。Form 3Lで採用されていた「LFS(Low Force Stereolithography)」方式から、Form 4で初搭載された「LFD(Low Force Display)」方式へと移行しました。

従来のLFS方式は、レーザービームをガルバノミラーで制御し、1本の線で塗りつぶすように描画していました。高精細ではあるものの、造形面積が広がれば広がるほど、レーザーが走る距離が長くなり、造形時間が指数関数的に伸びてしまう物理的な制約がありました。

対してForm 4Lが採用したLFD方式は、高出力なLEDパネルと液晶画面(LCD)を組み合わせ、モデルの断面データ(1層分)を「面」として一気に紫外線照射します。これにより、造形エリアの中にモデルが1つあっても、あるいはエリア一杯に数十個並んでいても、1層あたりの露光時間は変わりません。

Form 4LのLFD方式と従来のLFS方式の造形プロセスの違い
Form 4LのLFD方式は「面」で露光するため圧倒的に高速

▼ 造形方式による違いと進化

項目 従来のForm 3L (LFS方式) 新機種 Form 4L (LFD方式) 現場への影響
光源 レーザーユニット (LPU) LEDパネル (バックライトユニット) 光源強度が大幅アップ
描画方法 点と線による描画 (ベクター) 面による一括露光 (マスク式) 面積による時間増大がない
最高速度 標準的な速度 最大 80mm/時 (※) 圧倒的な時短を実現
主な特長 繊細で滑らかな表現力 超高速かつ高精細 試作サイクルを日単位で短縮

※「ファストモデルレジン(Fast Model)」を使用し、積層ピッチ200μmで造形した場合。

具体的な成果として、造形速度はForm 3Lと比較して2〜4倍に向上しています。例えば、車のシート部品や大型の治具など、以前は20時間以上(つまり丸一日)かかっていた造形が、Form 4Lでは数時間で完了するケースも珍しくありません。これは、「夜セットして翌朝確認する」というワークフローから、「朝セットして昼に確認し、修正して夕方にもう一度造形する」という、1日で複数回のPDCAを回せる環境への変化を意味します。

2. サイズと生産性の両立

Form 4Lの最大造形サイズは 353 x 196 x 350mm です。これはForm 3Lと比較して約13%の容量アップとなりますが、単に「より大きなものが作れる」こと以上の意味を持ちます。

  • 分割出力の手間を削減:
    これまで分割して造形し、後工程で接着していた大型パーツを一体造形できるようになります。これにより強度の均一化と工数削減が同時に達成されます。
  • 圧倒的なバッチ生産能力:
    LFD方式の特性上、プラットフォーム上に隙間なくパーツを並べても造形時間は伸びません。小型コネクタやブラケットを大量生産する際、Form 4Lはその巨大なビルドエリアを活かし、驚異的なスループットを発揮します。

3. 「失敗しない」ための安定性強化

大型造形において、ユーザーの皆様が最も恐れるのは「造形失敗」です。材料コストも時間もロスが大きいからです。Form 4Lは、このリスクを最小限に抑えるためにインテリジェントコントロールシステムを搭載しました。これは6つのオンボードセンサーが常にプリンターの状態を監視し、自動で最適化を行う機能です。

特に注目すべきは以下の2点です。

  • レジンの高速予熱:
    赤外線ヒーターを搭載し、レジン温度を素早く最適化します。冬場の寒い工場内でも、造形開始までの待ち時間を大幅に短縮し、初期層の定着不良を防ぎます。
  • 強力なミキシング:
    再設計されたミキサーが、タンク内のレジンを効率よく撹拌します。これにより、フィラー入りの高機能レジンでも成分が沈殿せず、均一な物性で造形することが可能です。

【技術パート:販売店の技術ノート】

ここからは、カタログスペックだけでは見えてこない、実際に運用する販売店だからこそお伝えしたい「技術的なポイント」と「運用のコツ」を解説します。

カタログには載らない「運用のリアル」

私たち販売店がForm 4Lの実機に触れて最も感動し、また皆様にお伝えしたいメリットは、最高速度の速さよりも「剥離工程の劇的な改善」です。

■ ここがポイント:剥離力の低減と新タンク技術

大型の光造形(SLA)では、硬化したレジンをフィルムから引き剥がす際に強い物理的な力がかかります。Form 3Lをお使いの方なら、造形中に「バリバリ」「バコン」という大きな音が鳴り、モデルが脱落したり層ズレが起きたりする現象に悩まされたことがあるかもしれません。

Form 4Lでは、レジンタンク(レジンを入れるトレイ)の底面に**「リリーステクスチャ」**と呼ばれる微細な凹凸加工が施された多層フィルムを採用しています。この技術と柔軟なフィルム構造により、空気が通りやすくなり、硬化したレジンがフィルムから「スルッ」と滑らかに剥がれるようになりました。

  • サポート材への負荷激減:
    剥離抵抗が下がったことで、モデルを支えるサポート材を細く、少なく設定しても造形が成功しやすくなりました。
  • 表面品質の向上:
    無理な力がかからないため、表面の積層痕も目立ちにくく、非常に滑らかな仕上がりになります。

注意点・Tips:導入前に知っておくべきこと

Form 4Lをフル活用していただくために、いくつかの注意点も共有します。

  • レジン消費量の感覚:
    造形速度が上がると、当然ながらレジンの消費サイクルも早くなります。従来の1Lカートリッジでは交換頻度が高くなりすぎるため、5L単位でレジンを供給できる「Resin Pumping System」の導入を強く推奨します。これにより、レジン単価を下げつつ、交換の手間を減らすことができます。
  • PCスペックとデータ準備:
    Formlabs専用ソフトウェア PreFormは非常に優秀ですが、Form 4Lのフルサイズで高精細なデータをスライス処理するには、PCにも相応のパワーが求められます。特に複雑なラティス構造や大量のパーツを配置する場合は、メモリ(RAM)やGPUに余裕のあるPCをご用意ください。
  • 二次硬化(ポストキュア):
    造形物が大きくなると、当然洗浄や二次硬化を行う機材も大型のものが必要になります。Form 3L用の「Form Wash L」や「Form Cure L」はそのまま利用可能ですが、設置スペースの動線確保は事前の確認が必須です。

アクション案内:まずは実力をお確かめください

「本当に自社の重たいデータでも速くなるのか?」
「LFD方式特有のピクセル感は気にならないのか?」

このような疑問を解消するために、私たちは実機を用いた検証環境を整えています。カタログ値ではない、皆様自身のデータでの実力をぜひ体験してください。

Form 4Lの実機による造形テストとサンプルの様子
Form 4Lと造形サンプル
  • 実機見学・デモ:
    弊社のショールームにて、実際の動作音や操作感をご確認いただけます。
  • ベンチマークテスト:
    お客様のSTLデータをお預かりし、造形時間のシミュレーションやサンプル造形を行います。

【コラム:ワークフロー最適化のヒント】
Form 4L運用の「落とし穴」と対策

大型造形こそ「洗浄コスト」の見直しを

Form 4Lによって造形の生産性が向上すると、次にボトルネックとなりがちなのが「洗浄工程」です。特に大型パーツの洗浄には、洗浄機(Form Wash L)に数十リットル単位の洗浄液を満たす必要があります。

ここで課題となるのが、一般的に使用されるIPA(イソプロピルアルコール)のコストと管理リスクです。

  • コスト:
    大量のIPAは揮発しやすく、頻繁な継ぎ足しや交換が必要です。
  • 安全性:
    引火性の高いIPAを大量に保管・使用することは、消防法上の保管数量制限や、作業環境の安全管理においてハードルが高くなります。

解決策:洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)

そこで、Form 4Lの導入と併せてご検討いただきたいのが、弊社が推奨する洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)です。これはIPAに代わる、炭化水素系の第4石油類洗浄液です。

■ 洗浄液 3D Medsupo を導入するメリット

  • 揮発性が低く長持ち:
    IPAのようにすぐに蒸発しないため、長期間タンクに入れておいても液量が減りません。大量の液を溜める大型洗浄機には最適な特性です。
  • 安価なランニングコスト:
    液自体の持ちが良く、交換頻度が減るため、トータルでの運用コスト(TCO)を大幅に圧縮できます。
  • 安全性の向上:
    有機則(有機溶剤中毒予防規則)に非該当であり、引火点もIPAより高いため、より安全な作業環境を構築できます。

Form 4Lで「造形の効率化」を図ると同時に、洗浄環境も見直すことで、工場全体の生産プロセスを一段階引き上げることが可能です。

まとめ

Form 4Lは、これまでの「大型=遅い・難しい」という光造形の常識を過去のものにする、革新的な3Dプリンターです。

  • 圧倒的なスピード:
    LFD技術により、大型モデルの造形時間を「数日」から「数時間」へと劇的に短縮しました。
  • 確かな信頼性:
    インテリジェントコントロールシステムと新設計のレジンタンクにより、剥離抵抗を低減し、大型造形特有の失敗リスクを克服しています。
  • トータル運用の重要性:
    生産量が飛躍的に増えるからこそ、洗浄液 3D Medsupoなどの周辺環境も含めた、持続可能な運用設計が鍵となります。

「自社の開発サイクルを加速させたい」「現在の3Dプリンターでは追いつかない」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
Form 4Lのカタログ請求や、現在の環境からの乗り換えシミュレーション、サンプル造形のご依頼など、技術的なご質問は以下の窓口よりお待ちしております。

出典:大きさ、速度、安定性の全てを叶えるForm 4Lの技術

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