【徹底解説】Tough 1500 レジン V2は何が変わった?「靭性」データの正しい読み方

【徹底解説】Tough 1500 レジン V2は何が変わった?「靭性」データの正しい読み方
こんにちは、Formlabs正規販売店の技術担当です。
先日、Formlabsよりエンジニアリングレジンの人気製品「Tough 1500 レジン」のアップデート版、「Tough 1500 レジン V2」が発表されました。すでに多くのユーザー様からお問い合わせをいただいておりますが、スペック表(TDS)を見ても「具体的に何がどう良くなったのか?」が分かりにくいというお声も耳にします。
特に「靭性(Toughness)」という言葉は非常に広義です。ハンマーで叩いても割れない強さなのか、曲げても折れない粘り強さなのか。この違いを理解しないと、せっかくの試作が無駄になってしまうこともあります。
そこで本記事では、Formlabs公式の技術情報をベースに、私たち販売店の視点で「Tough 1500 レジン V2の実力」と「カタログ値の正しい読み解き方」を徹底解説します。
1. カタログ値の裏側を読み解く:V1 vs V2
そもそも「靭性(Toughness)」とは何か?
材料選定において、最も誤解されやすいのが「強度」と「靭性」の違いです。
- 強度(Strength): どれだけ強い力に耐えられるか(硬さ)。
- 靭性(Toughness): 破壊されずにエネルギーを吸収し、変形できる能力(粘り)。
例えば、セラミック(陶器)は非常に硬く強度が高いですが、落とすとすぐに割れてしまいます。これは「靭性が低い(脆い)」からです。一方、金属は強い力が加わるとぐにゃりと曲がりますが、すぐには破壊されません。これが「靭性が高い」状態です。
実製品のプラスチック部品、特にPP(ポリプロピレン)などが使われる箇所には、単なる硬さではなく、この「粘り強い靭性」が求められます。
数値で見る「V2」の劇的な進化
今回の「Tough 1500 レジン V2」は、単なるマイナーチェンジではありません。以下の比較表をご覧ください。特に注目すべきは「破断伸び」と「ガードナー衝撃強さ」です。
| 指標 | 測定内容 | V1 (旧) | V2 (新) | 現場での意味 |
|---|---|---|---|---|
| 破断伸び | 破断するまでどれだけ伸びるか | 63% | 165% | 限界を超えた力がかかった際、バキッと折れずにグイッと伸びて耐える能力。 |
| ガードナー衝撃強さ | 薄い板への落下衝撃耐性 | 2.5 J | 5.9 J | 筐体カバーやパネルなど、面に対する衝撃への強さ。 |
| 破壊靭性 | 亀裂が入ってからの進みにくさ | 低い | 約10倍 | 一度傷が入っても、そこから亀裂が広がりにくい(=完全に壊れるまで粘る)。 |
| ロスフレックス | 繰り返し曲げ耐性(疲労) | ~5,300回 | >8,000回 | ヒンジやクリップなど、何度も動かす部品の寿命。 |
現場での活用イメージ
この数値の変化は、実際の設計・試作現場において以下のようなメリットをもたらします。
- スナップフィット・嵌合部: 「破断伸び」が165%に向上したことで、組み立て時に「パチン」とはめ込む際、爪が折れるリスクが激減しました。これまで微調整が必要だったキツめの嵌合も、V2なら樹脂の弾性で許容してくれるケースが増えます。
- ドローンやロボットの外装カバー: 従来のアイゾット衝撃値だけでなく、薄肉形状の実態に近い「ガードナー衝撃強さ」が倍増しています。これにより、落下や衝突時のパネル割れを効果的に防ぐことができます。
- 配管クリップ・リビングヒンジ: 「ロスフレックス(疲労耐性)」と「破壊靭性」の向上により、繰り返し開閉するクリップや、振動が加わるパーツでも、白化や破断が起こりにくくなります。
2. 【販売店の技術ノート】PP(ポリプロピレン)ライク素材としての完成度
ここからは、私たち販売店が実際に多くの素材を扱ってきた経験から、「Tough 1500 レジン V2」の真価について補足します。
「PP(ポリプロピレン)」に限りなく近づいた
日本の製造業において、最も多用されるプラスチックの一つがPP(ポリプロピレン)です。タッパーから自動車バンパーまで幅広く使われますが、光造形(SLA)でこのPPの挙動を再現するのは長年の課題でした。
今回のV2は、多くの量産品で使用されるPP素材の代替として、非常に優秀な近似値を示しています。切削PPや射出成形PPと比較しても、手で曲げた感触や衝撃への耐え方が遜色ないレベルに達しました。「量産材料に近い挙動で機能評価をしたい」というエンジニアにとって、この信頼性の向上は非常に大きな価値があります。
運用上の注意点・Tips
高性能なレジンですが、運用にはいくつかのコツがあります。躓きやすいポイントをまとめました。
- サポート材除去のコツ: V2は粘り気が強いため、常温で無理にサポート材をもぎ取ろうとすると、モデル側が引っ張られて伸びてしまう(白化する)ことがあります。ニッパーで丁寧に根元から切るか、二次硬化前に、ドライヤーやお湯で少し温めると、サポート材が柔らかくなり、モデル本体に負荷をかけずに除去できます。
- 洗浄の重要性: Tough系レジンは粘度が高く、洗浄不足になりがちです。表面に未硬化レジンが残ってベタついていると、本来の物性が出ないばかりか、経年劣化の原因になります。IPA(イソプロピルアルコール)ですすぐだけでなく、柔らかいブラシを併用したり、洗浄液の汚れ具合をこまめにチェックしたりすることが重要です。
3. ワークフロー最適化のヒント:粘度の高いToughレジンこそ「Form 4」と「専用洗浄液」で
今回のTough 1500 レジン V2のように、高機能なレジンほど「粘度が高い(ドロっとしている)」傾向があります。この特性を理解し、ツールを使い分けることで、試作効率はさらに向上します。
粘るレジンも高速造形。Form 4 との相性
従来のLFS方式(Form 3+等)では、高粘度レジンを使用すると、レジンが隙間に流れ込むのを待つ時間が必要なため、造形スピードが低下する傾向がありました。
最新機種 Form 4 は、この課題を解決しています。
- ヒーター搭載レジンタンク: レジンを温めてサラサラにし、流動性を高めます。
- リリーステクスチャ: タンク底面の特殊加工により、フィルムへの貼り付きを防止。
これにより、Tough 1500 V2のような高粘度レジンであっても、驚くほどの高速造形が可能です。「タフな材料を使いたいが、時間はかけたくない」という場合、Form 4 は圧倒的なパフォーマンスを発揮します。
「ヌルヌル」を解消する 洗浄液 3D Medsupo
「Tough系レジンは、洗ってもいつまでもヌルヌルする…」という経験はありませんか? 高粘度レジンはIPA(アルコール)だけでは落ちにくい場合があります。
洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ) は、レジンの溶解力に優れた炭化水素系洗浄液です。
- 強力な洗浄力: 粘り気の強いレジンも素早く溶解・除去します。
- リンス不要: 乾燥性が高く、サラッとした仕上がりになります。
- コストパフォーマンスに優れた価格設定: 大量出力時のランニングコスト削減にも貢献します。
ベタつきによる「造形失敗」や「物性不足」を防ぐためにも、専用洗浄液の導入をおすすめします。

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まとめ
■ ここがポイント
- ✓ Tough 1500 レジン V2は、「伸び(165%)」と「薄肉衝撃強度」が大幅強化され、より実用的なPPライク素材へ進化しました。
- ✓ 材料選定時は、単なるアイゾット衝撃値だけでなく、用途に合わせて「ガードナー衝撃(面強度)」や「ロスフレックス(疲労)」も確認しましょう。
- ✓ 高粘度レジンの扱いにくさは、Form 4 の加熱機能や、洗浄液 3D Medsupo の併用で劇的に改善できます。
新しいTough 1500 レジン V2のサンプルパーツの手触りを確認したい方や、Form 4 で実際に出力した場合の所要時間を知りたい方は、ぜひ私たちにお声がけください。専門スタッフが貴社の用途に合わせた最適な運用をご提案します。
ユーザーの皆様からのご相談、お待ちしております。
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