トップ④ ideaMaker 応用編 / A2. 修飾子

A2.修飾子 ― 「ここだけ」設定を変える

「この部分だけ中身をぎっしり詰めて丈夫にしたい」「ここに穴をあけたい」――そんな「ここだけ」のお願いをかなえるのが修飾子(しゅうしょくし)です。むずかしそうな名前ですが、やっていることはとてもシンプルです。

しくみ ― 「印刷されない透明ブロック」をかぶせるだけ

修飾子の正体は、箱・球・円柱のかたちをした「印刷されない透明なブロック」です。使い方は3コマで説明できます。

① かぶせる透明ブロック(修飾子)を、設定を変えたい場所に重ねて置きます。
② ルールを書く「重なったところは充填率30%にする」のように、ブロックの中だけのルールを決めます。
③ あとは自動スライスすると、重なった部分だけルールが変わります。ブロック自体は印刷されません。
用語:修飾子(モディファイア) 「ここだけ設定を変えてね」と場所を指定するための、印刷されない透明なブロックのこと。マスキングテープで「ここだけ塗る」と囲むのと同じ発想です。

で、何に使うの? ― 具体例カタログ

「できること」を聞いてもピンと来ない機能なので、よくある困りごとから逆引きできるようにしました。

こんなとき修飾子でこうする
壁フックの根元がいつも折れる根元に箱をかぶせて、そこだけ充填率50%に。全体を50%にするより材料も時間も大幅節約
大きな置物が重い・時間がかかる見えない胴体部分だけ充填率を5%に下げて軽量化・時短
ネジをねじ込む部分がすぐバカになるネジ穴のまわりだけ充填率を上げてねじ山が効くように
デュアル造形でロゴ部分だけ色を変えたいロゴの位置に修飾子をかぶせて、重なり部分だけ右ノズル(別の色)を指定
奥まった場所のサポートが外せないその場所に修飾子をかぶせて種類を「サポートブロッカー」に → そこだけサポートが付かない
買ったSTLに取り付け穴がない円柱を差し込んで種類を「重複領域を削除する」に → 穴があく(手順は下)
梁の中央部分だけ別の設定でスライスされたプレビュー
スライス結果の例。修飾子をかぶせた中央部分(オレンジ)だけ、別のルールで造形されます(出典: Raise3D ideaMakerマニュアル)

手順 ― キューブの一部だけ充填率を変えてみる

  1. モデルを選んで「修飾子」を押すツールバーの「修飾子」をクリックすると、修飾子パネルが開きます。
  2. 「修飾子を追加」で形を選ぶ箱・球・円柱の3種類が標準で付属しています。変えたい場所の形に近いものを選ぶと、画面に透明ブロックが現れます。
    修飾子パネルと修飾子リストの画面
    修飾子パネル。左のリストに追加した修飾子が並びます(出典: Raise3D ideaMakerマニュアル)
  3. 変えたい場所にかぶせるふつうのモデルと同じように移動・拡大縮小して、設定を変えたい部分に重ねます。はみ出しても大丈夫——効くのは「モデルと重なった部分」だけです。
    モデルに修飾子を重ねた状態
    白いモデルにオレンジの修飾子(箱)をかぶせた状態(出典: Raise3D ideaMakerマニュアル)
  4. 「+」でルールを決めるパネルの「+」を押すと「何を変えるか」の一覧が出ます。例えば「充填密度」にチェックして、数値を入れます(例: 全体は15%のまま、ここだけ30%)。充填の形も変えられます。
    修飾子で変更する設定を選ぶ画面
    変えたい項目(例: 充填密度)にチェックを入れるだけ(出典: Raise3D ideaMakerマニュアル)
  5. スライスして中身を確認「スライスを始める」を押し、プレビューで層を送ると、重なった部分だけ充填の濃さ・模様が変わっているのが見えます(上の「具体例カタログ」の図のような色分けで確認できます)。
よくある勘違い 修飾子のブロックは造形されません。「余計な箱がプリントされちゃうのでは?」と心配しなくて大丈夫です。あくまで「ここだけ設定を変える」という範囲指定の道具です(※下の「種類」で『サポート構造』を選んだときだけは、修飾子自体がサポート材として印刷されます)。

「種類」を変えると、もっといろいろできる

修飾子パネルの「種類」プルダウンには6つの選択肢があります。「重なった部分をどうするか」がそれぞれ違います。ここまで説明してきたのは、いちばん上の標準タイプです。

修飾子の種類プルダウンに表示される6つの選択肢
「種類」のプルダウン。重なった部分の扱いを6種類から選べます
種類なにが起きる?使いどころ
親モデルと重なるスライス設定を修正します
(標準。このページの手順はこれ)
重なった部分だけ、充填率などの設定を上書きするここだけ頑丈に/軽くしたいとき
サポート構造修飾子そのものがサポート材として印刷される。サポート用の設定(充填率など)も指定できる自動では付いてくれない場所に、手動でサポートを置きたいとき
サポートブロッカー重なった部分にはサポートを作らない「ここのサポートは外しにくいから要らない」という場所の指定に
テクスチャブロッカー重なった部分にはテクスチャ(表面の模様)を付けない模様付きモデルの一部だけ、ツルツルのまま残したいとき(模様の付け方は A3. テクスチャ
重複領域を削除する(実験的)重なった部分を造形しない=くり抜き穴あけ・えぐり。円柱を差し込めば丸穴、箱なら四角い穴に
重複領域のみを保持する(実験的)重なった部分だけを造形する(それ以外は消える)モデルの一部分だけを切り出して造形したいとき
テクスチャブロッカーで一部だけ模様なしになったキューブ
「テクスチャブロッカー」の例。六角形の模様のうち、修飾子をかぶせた部分(矢印)だけ模様なしに(出典: Raise3D ideaMakerマニュアル)
「(実験的)」とは? 開発中の機能、という意味です。ふつうに使えますが、複雑な形ではうまくいかないことがあります。使ったときは、スライス後のプレビューで結果を確認してから造形しましょう。
修飾子の形は、箱・球・円柱だけじゃない 修飾子リストの下の「+」を押すと、読み込んである別のモデルを修飾子として使うこともできます。「星形にくり抜きたい」「ロゴの形だけ色を変えたい」など、好きな形のSTLを型にできます。

やってみよう ― 穴あけのクリック手順

いちばん分かりにくい「どこを押せばいいの?」を、穴あけを例にクリック単位で示します。例として、板に丸い穴をあけます。

  1. モデルをクリックで選び、ツールバーの「修飾子」を押す修飾子パネルが開きます。パネルは開いたままで大丈夫です。
  2. 「修飾子を追加する ▾」→「円柱」をクリック画面に半透明の円柱が現れ、左の修飾子リストに「default-cylinder」が追加されます。丸い穴なら円柱、四角い穴ならを選びます。
  3. 円柱を「穴をあけたい位置」に差し込む画面上の円柱をクリックして選び、ふつうのモデルと同じように、ツールバーの「移動」で位置を、「拡大縮小」で太さを、「回転」で向きを調整します。
    コツ円柱の直径=穴の直径になります。貫通させたいときは、円柱をモデルより長くして、両側に突き抜けさせてください。
  4. 「種類」を「重複領域を削除する(実験的)」に変える修飾子パネルに戻り、「種類」のプルダウンから選びます。これで「重なった部分=削除」のルールになります。
    種類で重複領域を削除するを選び、モデルの角に箱をかぶせた画面
    公式マニュアルの例。「種類」を「重複領域を削除する」にして、消したい場所(赤枠)に修飾子をかぶせた状態(出典: Raise3D ideaMakerマニュアル)
  5. 「スライスを始める」→ プレビューで穴を確認プレビューの層送りスライダーで、修飾子をかぶせた部分が消えている(穴になっている)ことを確認してから造形します。
    修飾子をかぶせた部分が消えたスライス結果
    スライス結果。かぶせた部分(赤枠)が消えています(出典: Raise3D ideaMakerマニュアル)

穴あけは「修飾子」と「ブーリアン」どっちを使う?

穴あけ・くり抜きは A4. ブーリアン(減算)でもできます。違いは「元のデータが変わるかどうか」です。

 修飾子(重複領域を削除)ブーリアン(減算)
元のSTLデータ変わらない。スライスのときだけ消える穴のあいた形に変わる
やり直し円柱を動かすだけ。何度でも気軽に試せる実行後の調整は不可(やり直しは元データから)
確実さ「実験的」機能。複雑な形では失敗あり → プレビュー必須確実。複雑な形でも安定
穴あき版の保存できない(見た目はそのまま)STLとして書き出して再利用できる
使い分けの目安 位置や大きさを試行錯誤したい・元データを残したい → 修飾子確実にあけたい・穴あき版をデータとして保存したい・形が複雑 → ブーリアン(A4)。「修飾子で位置を決めてから、最後にブーリアンで確定する」という合わせ技も便利です。
このページでおさえること ① 修飾子=印刷されない透明ブロック。かぶせた部分だけルールを変える。 ② 一番よく使うのは「ここだけ充填率を変える」(根元の補強・軽量化)。 ③ 穴あけは円柱を差し込んで「種類」→「重複領域を削除する」。 ④ 気軽に試すなら修飾子、確実・保存するならブーリアン。 ⑤ 効果は必ずスライスのプレビューで確認。

参考: ideaMakerマニュアル: Modifier(英語)