はじめに
Form3+は次世代型の光造形3Dプリンターとして一躍注目を集めています。特にデスクトップタイプでありながら、さまざまな材料が使用できて、尚且つ産業用のクオリティを実現していることから、多くの業界での利用が期待されています。
また用途もプロトタイプから冶具、最終品の製造に至るまでさまざまな目的で使用されており、個人でも導入ができることが期待されています。
そんなForm3+ですが、それでは実際に導入する際にどのぐらいの価格がするのでしょうか。またランニングコストなども実際どの程度かかる物なのでしょうか。
弊社、アイ・メーカーには現在Form3+に関するさまざまなお問合せをいただいており、中でもひときわ多い内容が導入と運用で「いくらかかるのか?」というお問合せです。
そこで、今回はForm3+の価格とランニングコストというテーマで、導入に即した試算を公開してみたいと思います。是非、皆さまの導入の一助になれば幸いでございます。

Form3+と材料、付属品の価格一覧リスト
最初にForm3+と材料、付属品類をまとめた値段のリストをご紹介します。その後、導入パターンごとのコストをご紹介します。
Form3+本体の値段
Form3+ | 711,000円(税込み:782,100円) |
スタンダードレジンの値段
名前 | 特長 | 積層ピッチ(ミクロン) | 値段(税込み) |
グレイレジン | 高精細で滑らか | 25、50、100、160 | 20,000円(22,000円) |
ホワイトレジン | 積層跡が目立たない | 50、100 | 20,000円(22,000円) |
クリアレジン | 透明レジン | 25、50、100 | 20,000円(22,000円) |
ブラックレジン | マットブラックの質感 | 25、50、100 | 20,000円(22,000円) |
ドラフトV2レジン | 高速造形用 | 100、200 | 20,000円(22,000円) |
カラーキット | 専用インク付属で調色が可能 | 25、50、100 | 24,000円(26,400円) |
エンジニアリングレジンの値段
名前 | 特長 | 積層ピッチ(ミクロン) | 値段(税込み) |
タフ2000 | ABSライクの物性 | 50、100 | 24,000円(26,400円) |
タフ1500 | PPライクの物性 | 50、100 | 24,000円(26,400円) |
デュラブル | PETライクの物性 | 50、100 | 24,000円(26,400円) |
グレイプロ | 高強度なグレイ | 50、100 | 24,000円(26,400円) |
ハイテンプ | 高耐熱レジン(最高239度) | 50、100 | 27,000円(29,700円) |
ESDレジン | 静電気拡散性 | 50、100 | 27,000円(29,700円) |
フレキシブル80A | ゴムライク | 50、100 | 27,000円(29,700円) |
エラスティック50A | シリコーンライク | 100 | 27,000円(29,700円) |
リジッド4000 | ガラス繊維配合、高硬度 | 50、100 | 27,000円(29,700円) |
リジッド10K | セラミック配合、最高硬度、高耐熱 | 50、100 | 40,000円(44,000円) |
鋳造用レジン
名前 | 特長 | 積層ピッチ | 値段(税込み) |
キャスタブルワックス(紫) | 鋳造用レジン。ワックス配合率25% | 25、50 | 40,000円(44,000円) |
キャスタブル40(ブルー) | 鋳造用レジン。ワックス配合率40%。柔らかい | 25、50 | 40,000円(44,000円) |
Form3+の価格と導入コスト
Form3+の価格と導入コストは、導入する材料や付属品などによって異なります。
Form3+本体の値段
Form3+本体の値段は販売当初は575,000円(税抜き)でしたが、価格改訂が2回あり、現在は711,000円(税別)となっています。これは3Dプリンター本体に加えて、ビルド・プラットフォーム、フレキシブルレジンタンク、電源ケーブルやスクレイパーやピンセットといった工具類、IPA(イソプロピルアルコール)で洗浄する仕上げキットを含みます。

内容
- Form3+本体×1
- ビルド・プラットフォーム×1
- フレキシブルレジンタンク×1
- 工具類(ヘラ、スクレイパー、ピンセット等)
- 仕上げキット(洗浄用キット)
- 電源ケーブル
- 専用ソフトウェアPreForm(WEBからダウンロード)
これに加えて、ユーザー様でご用意いただくものは洗浄に使用するエタコールが必要です。Form3+は液体のUV硬化レジンに紫外線をあてて硬化させるため、造形後にIPAで洗浄しなければなりません。
トータルコスト(税抜き):711,000円+エタコール(10,000円)
使用できる材料:スタンダードレジン(ホワイト、ブラック、グレイ、クリア、ドラフト)、カラーキット、キャスタブルワックス
Form3+ | 711,000円(税込み:782,100円) |
スタンダードレジン | 20,000円(税込み:22,000円) |
カラーキット | 24,000円(税込み:26,400円) |
キャスタブルワックス | 40,000円(税込み:44,000円) |
エタコール | 8,000円(税込み:8,800円)+送料2,000円 |
※エンジニアリングレジンを使用するためには二次硬化機Form Cureが必要です。
Form3++Form Cure+レジン1本
エンジニアリングレジンを使用する場合、Form Cureは必須のツールです。
エンジニアリングレジンとは、強度に優れるタフ2000、デュラブル(PPライク)、グレイプロや、高耐熱のハイテンプ、柔軟性があるフレキシブル(ゴムライク)、エラスティック(シリコーンライク)、リジッド(ガラス繊維配合)などの特殊な用途に使用するレジンです。
こうしたレジンはForm3で造形後にさらに追加で紫外線を照射し二次硬化する必要があります。またキャスタブルワックスも二次硬化は必ずしも必要ではありませんが、二次硬化した方が本来の焼失性能が発揮できると言われています。
トータルコスト(税抜き):711,000円(Form3+本体)+101,000円(Form Cure)+エンジニアリングレジン(24,000円~40,000円)+エタコール(8,000円+送料2,000円)
使用できる材料:全てのレジン
Form3+Form Cure+Form Wash+レジン1本
Form3で洗浄から二次硬化まで全て一体でそろったセットが、Form3に自動洗浄機のForm Wash、二次硬化機Form Cureを含めたセットです。Form WashとForm Cureをそろえることで完全自動化が可能になります。
造形後の洗浄は本体に付属している仕上げキットで可能ですが、Form Washを使用すれば、ビルド・プラットフォームごと洗浄することができます。また、洗浄後の取り出しも自動で行ってくれるため、Form Washまで整えればものづくりがとてもスムーズになります。
トータルコスト(税抜き):575,000円(Form3本体)+92,000円(Form Cure)+66,000円(Form Wash)+エンジニアリングレジン(21,800円~37,800円)+IPA(1,500円~3,000円)
使用できる材料:全てのレジン

レジンタンクの導入コスト:材料の種類分かかる
Form3では、材料1種類ごとにレジンタンクが1個必要になります。Form3本体にはレジンタンクは付属していますが、レジンの種類を増やす場合、レジンタンクもセットで用意する必要があります。
スタンダードレジン5本を使用する場合の導入コスト
例えば、スタンダードレジンを全色使用する場合には、以下の導入コストがかかります。
- Form3本体:575,000円
- スタンダードレジン:18,800円×5本=94,000円
- フレキシブルレジンタンク:19,000円×4個=76,000円
- 合計:745,000円(税抜き)
Form WashとForm Cureを追加した場合
- Form3本体:575,000円
- スタンダードレジン:18,800円×5本=94,000円
- フレキシブルレジンタンク:19,000円×4個=76,000円
- Form Wash:66,000円
- Form Cure:92,000円
- 合計:903,000円(税抜き)
レジンを全種類導入した場合
例えばレジンを全種類を最初に用意する場合には以下のコストがかかります。
- Form3本体:575,000円
- スタンダードレジン:18,800円×5本=94,000円
- エンジニアリングレジン(タフ、デュラブル、グレイプロ):21,800円×3本=65,400円
- エンジニアリングレジン(ハイテンプ、リジッド、フレキシブル、エラスティック):24,800円×4本=99,200円
- キャスタブルワックス:37,800円
- フレキシブルレジンタンク:19,000円×7個=133,000円
- 合計:1,004,400円(税抜き)
※リジッド、グレイプロ、エラスティックは通常のフレキシブルレジンタンクでは対応していませんが、仮で計算しています。
Form WashとForm Cureを追加した場合
- Form3本体:575,000円
- スタンダードレジン:18,800円×5本=94,000円
- エンジニアリングレジン(タフ、デュラブル、グレイプロ):21,800円×3本=65,400円
- エンジニアリングレジン(ハイテンプ、リジッド、フレキシブル、エラスティック):24,800円×4本=99,200円
- キャスタブルワックス:37,800円
- フレキシブルレジンタンク:19,000円×7個=133,000円
- Form Wash:66,000円
- Form Cure:92,000円
- 合計:1,162,400円(税抜き)
Form3の導入コストまとめ
上記の試算からForm3の導入コストをまとめると、本体価格のみの575,000円(税抜き)からフルセットで1,162,400円(税抜き)までの間で導入が可能です。御用途に応じて、必要な材料が異なりますので、詳細はお問合せください。
Form3のランニングコスト
ここからは導入後のForm3のランニングコストについてご紹介します。Form3では日々3Dプリントを行っていく関係で、以下のものが消耗品として想定されます。
- レジン
- IPA(イソプロピルアルコール)
- レジンタンク
- ビルド・プラットフォーム
上記の消耗品の中で最も消費するのが当然のことながらレジンです。次に洗浄に使用するIPAです。またレジンタンクやビルド・プラットフォームも頻繁に交換はしませんが消耗品になります。
Form3のレジンのランニングコスト
Form3では全14種類のレジンを使うことができます。レジンはどれも1本あたり1リットルの量があり、価格はスタンダードレジンが18,800円、エンジニアリングレジンが21,800円と24,800円、キャスタブルワックスが37,800円となっています。
それぞれ用途が異なりますが、ランニングコストは作る造形物のサイズによって異なります。
ここでは、各レジンのチャンピオンサンプルをもとに、どれだけ材料を消費して、1本あたり何個の造形物をつくることが出来るのかをご紹介します。

スタンダードレジンのランニングコスト
スタンダードレジンはグレイ、ホワイト、ブラック、クリア、ドラフトの5種類があります。1本あたり1リットルで、どのレジンも価格は18,800円です。
例えば、下記はスタンダードレジンのサンプルで配布しているルークのモデルですが、Form3では、9個のルークをプリントするのに100.40mlの容量を使用します。
これはルーク1個当たりに換算すると11.15mlの材料費です。レジンカートリッジ1本では1リットルの容量が入っているため、約89個作ることができます。1個あたりのランニングコストは約211円です。

タフレジンのランニングコスト
タフレジンはABS樹脂のように強度にすぐれる材料です。一般的なプロトタイプからワーキングモデルなどにも使用が可能です。こうした物性から組み合わせて使用する筐体のプロトタイプなどにも最適な性能を発揮します。
例えば、下記は筐体のモデルのサンプルですが、2個で17.11mlの容量を消費します。
タフレジンは1リットル1本あたり21,800円の価格なので、1セット当たりのランニングコストは約375円です。またカートリッジ1本につき約58個作ることができます。

デュラブルレジンのランニングコスト
デュラブルレジンはポリプロピレンライクの耐衝撃性にすぐれる材料です。こちらも冶具や工具、スナップフィットなどの繰り返し使用する高強度モデルの造形に最適です。
例えば、下記は二つのパーツをはめ込んだワーキングモデルですが、15.97mlの材料を消費します。
デュラブルレジンも1リットル1本あたり21,800円の価格なので、1セットあたりのランニングコストは約351円です。またカートリッジ1本につき約62個作ることができます。

グレイプロレジンのランニングコスト
グレイプロレジンは、最も高精細に出て同時に強度を持つレジンです。こちらは見た目と一定の強度が求められるモデルに最適な材料で、機能性プロトタイプから冶具まで幅広く使用されます。
例えば、下記の強度が求められるパーツでは、16個で497.11mlの材料費を消費します。
グレイプロレジンは1リットル1本あたり21,800円なため、1個当たり約681円のランニングコストがかかります。またカートリッジ1本につき約32個作ることができます。

ハイテンプレジンのランニングコスト
ハイテンプレジンは、二次硬化で約100℃、更にアニール処理で239℃の高耐熱を誇るレジンです。主に高温の流体試験などに使用されたり、金型のプロトタイプで使用されるUV硬化レジンです。
例えば、下記はハイテンプレジンで作るバーナーのプロトタイプですが、1個当たり9.84mlの材料を消費します。
ハイテンプレジンは1リットル1本あたり24,800円の価格なため、1個当たり約246円のランニングコストがかかります。またカートリッジ1本につき約101個作ることができます。

フレキシブルレジンのランニングコスト
フレキシブルレジンはタイヤのトレッドのような柔らかさを持つゴムライクのレジンです。こちらはゴムのような柔軟性が求められるパーツやプロトタイプに最適なレジンです。
例えば、下記のようなタイヤのプロトタイプを作る場合、1個当たりの容量は112.66mlの材料を消費します。
フレキシブルレジンは1リットル1本24,800円の価格で、1個当たりのコストに換算すると約2818円のランニングコストがかかります。またカートリッジ1本につき約8個作ることができます。

リジッドレジンのランニングコスト
リジッドレジンはガラス繊維が配合されている硬度の高いUV硬化レジンで、美しいホワイトの見た目と高い寸法精度を誇ります。こちらはプロトタイプからコンセプトモデルなどの用途に最適な材料です。
下記はリジッドレジンの造形サンプルですが、8個で166.19mlの容量を消費します。
リジッドレジンは1リットル1本24,800円の価格で、1個当たりのコストに換算すると516円のランニングコストがかかります。またカートリッジ1本につき約48個作ることができます。

キャスタブルワックスのランニングコスト
キャスタブルワックスはジュエリーや時計など、ロストワックス鋳造で用いられるワックスモデルを作ることができます。本物の蝋が20%配合されており優れた焼失性能を発揮します。
下記はキャスタブルワックスで作るジュエリー用のワックスモデルですが、1度の造形で35個作ることができます。
こちらは35個で47.64mlの材料消費量です。キャスタブルワックスレジンは1リットル1本あたり37,800円の価格で、1個当たりのコストに換算すると51.4円のランニングコストがかかります。またカートリッジ1本につき約735個作ることができます。

フレキシブルレジンタンクのランニングコスト
フレキシブルレジンタンクは材料1種類につき1個必要(価格は19000円税別)になります。このフレキシブルレジンタンクも消耗品になりますが、何度も頻繁に買い替えるものでは無く、レーザーで摩耗して濁ってきたら交換します。
基本的にはレジンカートリッジ10本(10リットル分)で交換が目安とされています。
これはスタンダードレジンのルークでは、約890個分、キャスタブルワックスの指輪では、約7350個分に相当します。
1個19,000円(税別) 頻度:レジン10本につき1回交換

ビルド・プラットフォームのランニングコスト
ビルド・プラットフォームも消耗品になります。ビルド・プラットフォームは基本的に1個で全てのレジンに対応しているため、本体に付属している1個で複数のレジンを使用できます。
ただ、ビルド・プラットフォームも造形後にスクレイパーやヘラで造形物を剥がす過程でキズがつき摩耗します。ビルド・プラットフォームが摩耗すると場所によって造形精度にムラができ、キズにレジンが入り込み硬化すると造形モデルが取れなくなる可能性があります。
ビルド・プラットフォームの交換頻度は使用頻度によって異なりますが、基本的に1年に1度、また造形が失敗したり、造形モデルが取れなくなって来たら交換をおススメします。
1個12,000円(税別) 頻度:摩耗具合によって異なる。1年に1回程度の頻度

まとめ
Form3の価格とランニングコストは、用途や使用頻度によって大きくことなりますが、導入コストで575,000円(税別)から開始でき、全てのレジンや付属品をそろえても120万円(税別)以内で導入が可能です。
また、ランニングコストもレジンタンクは材料ごとに購入する必要がありますが、基本的にはレジンが中心になります。造形するサイズや頻度などによって異なりますが、運用の参考になれば幸いです。