Form3で機能性のある造形を3Dプリントするとどのような仕上がりになるのか?
造形の機能性はどこまで表現されるのか?
今回の機能編は、「クランプ」です。
クランプは材料を作業台に固定する時に使用する工具です。締め具とも呼ばれています。接着剤が乾燥するまで一時的に材料を押えておく為に使用されることもあります。ネジを締めて固定する構造になっています。
用途によって、様々な形状やタイプがあります。今回はクランプの中でもC型クランプと呼ばれる形状に注目して3Dプリントしていきます。
表面の仕上がりのディティール以外にもクランプの機能性についても見ていきたいと思います。
プリントする形状とサイズ
3Dプリントするクランプの3Dデータです。
3Dデータは、Blenderという3Dソフトを使用して作製しています。
今回3Dプリントするクランプは、全部で3つのパーツでできています。プリント後に組み立てて使用します。
1.クランプフレーム
クランプのフレームです。ボルトを通す穴が開いています。
サイズ : 71mm(縦)×35mm(横)×20mm(高さ)
2.ボルトノブ
フレームの穴に通して材料を固定するボルトです。ボルトを回す時の持ち手の役割であるノブの機能もついています。
サイズ : 19.8mm(縦)×19.8mm(横)×81.3mm(高さ)
3.プロテクター
フレームとボルトを材料に固定する時に材料の支えとなる部品です。
サイズ : 20mm(縦)×20mm(横)×8mm(高さ)
使用する光造形3Dプリンターと材料
今回使用する光造形3Dプリンターは、Form3です。
Form3は、高精細、滑らかな仕上がりが特徴の反転方式の光造形3Dプリンターです。
ソフトは、Form3の専用ソフトウェア PreFormを使用します。
PreFormでは、プリントするデータ、プリント方向、サポートの付け方を設定することができます。
光造形3Dプリンター用の材料は、Form3専用スタンダードレジンのグレイレジンを使用します。
3Dプリンター用 硬質スタンダードレジン
硬質スタンダードレジンは、光造形3Dプリンターにおいて最も一般的に使用されるレジンです。多様な用途に対応できる汎用性が高く、プロトタイピングから模型、フィギュアまで幅広い分野で活用されています。このタイプのレジンは、適度な強度と耐久性を持っており、扱いやすさとコスト面でも手頃な価格であるため、初心者から熟練者まで幅広く利用されています。
3Dプリントで検証したい内容
検証したい内容は、機能性のある造形を3Dプリントした場合の表面ディティールと機能性です。
3Dデータで作成した造形を3Dプリントした後に、実際にどのくらいの機能を表現できているのかも見ていきましょう。
PreFormでのプリント設定
サポート設定は、直付プリント(サポート設定なし)
積層ピッチは、50ミクロン
でプリントしていきます。
こちらがPreFormでのプリント画面になります。
この内容で3Dプリントをしていきます。
プリント時間 | レイヤー数 | ボリューム | Total材料コスト | 1個あたりのl材料コスト |
7h35m | 1623層 | 35.12ml | 3個=660円 | 1個=220円 |
クランプのPreForm画面
プリント結果
1.クランプフレーム
●3Dデータ通りに滑らかにプリントできている。
●全体的に表面がとても滑らかな仕上がり。直付表面部分も滑らか。
●内側と外側の角の精度も良くできている。
●厚みのある造形でしたが、カーブ部分も滑らかに造形できた。
●フレームの内側部分の一部に段差ができてしまった。
●ボルトを通す穴部分が高精細な仕上がり。
[寸法結果]
サイズ : 71mm(縦)×35mm(横)×20mm(高さ)
3Dプリント後のサイズ
縦 : +0.5mm
横 : 寸法通り
高さ : 寸法通り
縦にほんの少し歪みましたが、寸法通りにプリントできました。
2.ボルトノブ
●3Dデータ通りに滑らかにプリントできている。
●全体的に表面がとても滑らかな仕上がり。直付表面部分も滑らか。
●高さがあり細い形状でしたが、きれいに積層できた。
●ボルト部分の凹凸が高精細で滑らかにできている。
●ボルト上部の球体部分も滑らかに造形できている。
●ノブ部分のテクスチャの凹凸の精度も良くできている。
[寸法結果]
サイズ : 19.8mm(縦)×19.8mm(横)×81.3mm(高さ)
3Dプリント後のサイズ
縦 : +0.2mm
横 : +0.2mm
高さ : +0.1mm
全体的にほんの少し歪みましたが、寸法通りにプリントできました。
3.クランププロテクター
●3Dデータ通りに滑らかにプリントできている。
●全体的に表面がとても滑らかな仕上がり。裏面の直付表面部分も滑らか。
●表面の凹凸が高精細に造形できている。
●サイズが小さく薄い造形でしたが、問題無くプリントできた。
[寸法結果]
サイズ : 20mm(縦)×20mm(横)×8mm(高さ)
3Dプリント後のサイズ
縦 : 寸法通り
横 : 寸法通り
高さ : 寸法通り
寸法通りにプリントできました。
機能性の結果
部品としての機能としてパーツ同士がぴったり組み立てられるのかどうかと、クランプとしての挟む機能を実際に試してみました。
それぞれのパーツを問題無く組み立てられました。
ボルトもスムーズに回すことができます。
クランプとしての機能はどうかを検証してみました。
結果は、問題無く挟めることができました。しっかり固定もできています。
機能としても問題ありません。
※今回使用したグレイレジンは、プロトタイプ用としての使用に向いている材料になります。繰り返し使用していると欠けたり折れる可能性があります。
機能編クランプ 3Dプリントまとめ
●機能性に関して
今回3Dプリントしたクランプは、3つのパーツを別々に3Dプリントして最後に組み立てる造形でした。
各パーツの精度は問題無く、パーツの組み立てもスムーズにできました。
クランプとしての機能は、物をしっかりと挟み固定することができました。機能としても問題無く3Dプリントできました。
●表面のディティールの仕上がり
3つのパーツ全て、3Dデータ通りにとても高精細で滑らかな造形に仕上がりました。
造形の凹凸やテクスチャもきれいに3Dプリントができていました。
寸法精度もほとんど3Dデータ通りに3Dプリントできています。
今回の3Dプリントの結果は、グレイレジンの持つ滑らかで美しい表面と、高精細なディティール表現が良く出ている結果になりました。厚みや高さのある様々な形状のパーツを3Dプリント後に組み立てるということもForm3では可能だということも検証することができました。プロトタイプ用としての材料としてスタンダードレジンは最適です。
またForm3は、スタンダード樹脂以外にABSの強度を再現したTough 2000 Resinやポリプロピレンの靭性を再現したTough 1500、その中間で適度な曲げ強度があるデュラブルなど、曲がりにくく硬くて頑丈な部品の3Dプリントに最適な材料もあります。スタンダード樹脂との機能性や強度の比較検証もしていけたらと思います。
i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1、Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。