コントローラーやスタイラスペンの試作も!導電性PLAフィラメント登場

続々と登場する機能性3Dプリントフィラメント

2014年は3Dプリンターの材料が続々と登場した年であった。特にFDM、熱溶解積層法の3Dプリント用材料である、フィラメント材料の種類は非常に広範にわたり展開されることとなった。低価格で利用できるFDM3Dプリンターの普及とフィラメントのバリエーション拡大は、製品開発というメーカーのみが行なえる行為に多くの人々を参入させる効果を生むことになる。中でも安価でさまざまな素材のプロトタイプが作れることの意味は大きい。

特に豊な資金を持たないベンチャー起業家や、デザイナー、個人のモノづくりを行なうメイカーズにとって大きな役割を担うだろう。基本的にFDMの材料であるフィラメントは、ABSPLAといった二つの種類のプラスチック材料を主流に、ポリカーボネートフィラメントナイロンフィラメントなどのエンジニアリングプラスチックも登場している。こうした樹脂素材にさまざまな機能や特性を持つ素材を加えることで、いろいろな試作品の製造を可能にすることができる。2014年に登場したフィラメント材料は、大きく2種類に分類することができる。

第一はプラスチックでありながら異なる質感を作り出すことができる素材。ColorFabbのブロンズや真鍮、木材を配合したフィラメントがこれにあたる。第二は、フィラメントに異なる素材を配合することで、機能性を付与させたフィラメントだ。この機能性フィラメントの多くが、導電性という電気を通すことができる性質のものが多かい。

例えばグラフェンという超伝導体を配合したフィラメントでは、グラフェンの持つ優れた導電性から、バッテリーを3Dプリントすることに成功している。また、磁石を配合したフィラメントではマグネットの試作品を3Dプリントすることが可能だ。そして、本日ご紹介するProtoPastaがリリースする新たなPLAフィラメントProtoPlantも、そうした機能性フィラメントの一つだ。

導電性のPLAフィラメントProtoPlant

ProtoPastaは、以前もご紹介した、ステンレスとマグネットのフィラメントを製造販売するフィラメントメーカーだ。この導電性PLAフィラメントProtoPlantは、PLA樹脂に分散剤及び導電性カーボンブラックを配合することで電気を通すという驚異的な性能を発揮することに成功している。

下記はProtoPlantの機能を表現した動画だが、この導電性材料を使用して作られたLEDライトのスイッチや、ゲームコントローラーが公開されている。なんといってもその最大の特長は樹脂という素材ながら、現在市場に流通している多くの導電性繊維の70万倍以上の導電性を持つという。正式なリリースは2015年にネバダ州で開催される家電国際見本市CESでお披露目される予定。現在はキックスターターで資金調達に乗り出している状況だ。

電気を通す導電性PLAフィラメント動画

この導電性PLAフィラメントProtoPlantは基本的な温度特性などは一般的なPLAフィラメントと同様である。温度も通常の230度程度でプリント可能で、一般的なPLAフィラメントよりも反り具合が低い。プラスチックは温度変化や収縮率が必ず起きるが、このProtoPlantは極力反りを抑えた性能を備えている。キックスターターキャンペーンではこのフィラメントと一緒にタッチパネルで使用することができる導電性スタイラスペンのプリントデータも入手できるとのことだ。

スタイラスペンの3Dプリント
コントローラーの3Dプリント
導電性PLAフィラメント ProtoPlant

導電性PLAフィラメントProtoPlantスペック

  • 強度:PLAフィラメントと同等、高い柔軟性を持つ
  • ワーピング:非常に低い反り
  • デュアルヘッドの互換性:デュアル材料の3DプリントでPLAとの互換性あり
  • 剛性:低、半可撓性
  • 耐熱性:PLAと同等、50℃未満に使用
  • 柔軟性:非常に柔軟
  • サイズ:1.75mm、2.85mm

PLAフィラメントについては「3DプリンターのPLA(ポリ乳酸)フィラメント完全ガイド」で特長やおススメのフィラメント材料などを詳しくご紹介していますので、そちらもご参照ください。

まとめ 拡大する試作の幅

低価格のFDM3Dプリンターの浸透は、製品開発に関わる多くの人に試作品の製造をもたらすことにつながる。例えば、これまでの一般的な製品開発ではプロダクトデザインを行なうデザイン事務所では、試作品を自ら作ることはあまり行われなかったが、3Dプリンターの低価格化によって、デザイナーが自らモックアップを作って確認することができる。こうした行為は起業家やメイカーズにとっても同様のことが言える。

しかし、本日ご紹介したような導電性などの機能性を持つフィラメントの登場により、この試作の幅が格段に拡大するだろう。通常のフィラメントであれば、形状確認だけだが、導電性のフィラメントでは、その機能も確認することができるかもしれない。もちろん、いくら導電性を持つとはいえ、一般的なプリント基板などに使用される金属の回路図に比べれば高機能を出すことはできない。しかし、簡単な機能確認や回路図が正確に機能するかどうかのレベルであれば十分役割を発揮するだろう。新たな材料の開発はものづくりの幅を遥かに拡大させる。

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