光造形3Dプリンターならではの失敗
光造形3Dプリンターでは造形を成功させるためにはさまざまな条件があります。具体的には、造形物の形状、プリント方向、サポート材の設定、露光時間などといった要素ですが、この条件がうまくいかない場合、プリントが失敗、もしくは思った通りの形状に仕上がらない場合があります。
3Dプリンターは基本的に、科学変化を起こしながら形にしていく造形技術で、この条件を適切なものにしないと失敗は起きやすくなります。これからご紹介する光造形3Dプリンターの失敗例は、だいたい低価格の機種も50万円から100万円クラスの業務用で使用される機種でも共通して起きる現象です。ぜひその傾向と対策がご参考になれば幸いです。
プラットフォームに何もついていない
光造形3Dプリンターの失敗例で最も代表的なものが、造形は終了したにも関わらず、プラットフォームに何もできてないという現象です。造形物を作るラフトすらできていない場合があります。
プラットフォームにつかない原因
プラットフォームに何も積層されていないときの原因ですが、主な原因は何らかの理由でレーザー光がきちんと当たっていないことが理由です。レーザーが当たらない理由はさまざまで、以下のような原因が考えられます。
①レーザー部分の故障
②レーザー部分の光学窓が汚れている
③レーザーを通すレジンタンクに汚れ、余分な残留物などの張り付きがある
④露光時間が不十分(調整できる機種)
⑤プラットフォームの位置が正しい位置ではない(調整ができる機種)
対策
①レーザー部分の故障の場合
最もリカバリが難しく、3Dプリンターを修理するか交換する必要があります。
②レーザーの光学窓の汚れ
この場合にはレーザーが通る光学窓がまず汚れていないか確認を行います。もし汚れていた場合には、光学窓のクリーニングを行います。クリーニングにはIPAなどアルコール類と傷がつかない布で綺麗に拭ってください。
③レジンタンク(トレイ)の汚 れの場合
レジンタンクやトレイに汚れや残留物がないかどうか確認し、残留物を取り除きます。またタンク内のレジンを一度ペーパーフィルターなどでろ過し、汚れを取りのぞきタンクを内を確認します。タンクそのものがレーザーで摩耗している場合にはタンク交換が必要です。
④露光時間が不十分の場合
露光時間が調整できるタイプの光造形3Dプリンターでは、露光時間を長めにしてラフトにくっつくかどうか確認してください。
⑤プラットフォームの位置が正しくない場合
プラットフォームがレジンと水平に正しい位置になっているかどうかを確認し、調整できる機種の場合、調整して水平にしてください。
ラフト(土台)のみで造形物が積層されない
光造形3Dプリンターの失敗例で、もう一つ症例として多いのがラフト(土台)はプラットフォームに作られているが、その先の造形物そのものが積層されていないというケースです。
ラフト(土台)のみしか造形できない原因
フト(土台)のみしかプラットフォームに積層されていない理由は基本的に一つです。ラフトとサポート材が積層できているということはレーザーの問題ではなく造形物を支えるためのサポート材が不足している、もしくはプリント方向が積層しにくいプリント方向という点が原因です。
①サポート材が不足している
②プリント方向が積層しにくい
対策
①サポート材の追加
最初に、ラフトができているということはレーザーは問題ありません。サポート材が足りないため、造形物がうまく積層されず、レジントレイのそこに積層されてしまっている現象です。そのためサポート材の本数を増やすかもしくは太さを太くすることをおすすめします。
②プリント方向の改善
第二にプリント方向を見直したほうがよいかもしれません。光造形3Dプリンターは造形物の設置面積が大きいとサポート材の量がより必要になり、さらにラフトに正しく積層されにくい可能性があります。これはプラットフォームが造形の過程で上下動を繰り返す際、剥離力が働くためです。そのため、なるべく小さいところから、末広がりに積層できると成功しやすくなります。
③レジンタンク(トレイ)の底を掃除する
ラフト(土台)のみが積層された場合、本来積層されるはずだった造形物はレジンタンクのそこに張り付いて積層がされています。そのため、造形後にはレジンタンクの底を確認し、張り付きや残留物を取り除く必要があります。
造形物の反り
光造形3Dプリンターでは造形の失敗ではありませんが、造形物が反ってしまうことがあります。光造形もFDMと同様に薄い0.1mmや0.05mmの層を積層しながら形にしていくため、造形物の形状や大きさによっては、層ごとが硬化して引っ張られ反ってしまう現象があります。
造形物が反ってしまう原因
造形物が反ってしまう原因はプラットフォームと造形物の接地面が大きいという点が最大の理由です。光造形はUVレジンに紫外線をあてて硬化させますが、硬化の際に設置面積が大きければ大きいほど収縮が大きくなります。この収縮が何層にもわたって積み重なると反りが発生するという現象です。
反りの対策
①プリント方向の調整
プラットフォームと造形物との設置面を小さくすることで反りを軽減することができます。また積層を小から大に積層していくことで反りを抑えられます。
②造形物の分割
プリント方向を変えられない場合などは造形物を分割してプリントするという対策があります。分割することで設置面が小さくなり、反りを軽減します。
カップ形状の積層の粗さと穴
光造形3Dプリンターならではの症状としてカップ形状のものをプリントした時に積層が粗くなったり、穴が開いたりする現象が発生します。これは他の造形方式では見られない失敗例でこちらも対策をほどこすことで防ぐことができます。
カップ形状の粗さと穴の原因
光造形3Dプリンターは、トレイにたまっているUVレジンにプラットフォームがつかり、上下動を繰り返しながら積層を行います。コップやお椀のようなカップ形状のものを口がつかるような形でプリントすると、カップの内部に空気が入り込んでしまい、空気圧によって造形物がゆがんだり、積層が粗くなったり、造形物が薄肉の場合には穴が開いたりします。
対策
①空気穴をあける
カップ形状の粗さや穴を解消する対策として空気穴をあけるという方法があります。カップ形状の底などに、空気が抜ける穴をあけるとレジンにつかったときの空気圧が解消され、粗さや穴が開くのを防ぐことができます。
②プリント方向を変える
対策の二つ目がプリント方向を変える方法です。カップ形状が解消される方向、斜めなどに配置して造形します。ただし、この場合、カップ内部にサポート材がついてしまうため、後処理に手間がかかります。
③造形物を分割する
最後に造形物を分割するという方法です。カップ形状を2パーツなどに分割することで空気圧が発生するのを防ぎ、カップを解消します。
造形物の表面がボロボロに剥がれる現象
光造形の失敗例として、造形物の表面がボロボロ剥がれてしまう現象があります。このボロボロの状態とは、造形物から薄い構造物が水平方向などにはみでてついている現象で、構造物は「フラップ」ともいわれています。
造形物のボロボロの現象の原因
造形物がボロボロに表面に剥がれてついてしまう原因は以下の要因か、各要因が組み合わさっている可能性があります。
①レジンタンク(トレイ)の残留物や使用期限切れ、損傷など
一番多い原因の一つが、レジンタンクやトレイに残留物が残ってしまっていたり、度重なる使用でトレイのコーティングが剥げてしまっている場合、もしくはタンクが損傷などしているケースです。
②レーザーの光学窓の汚れ
レーザーが適切に当たらずこの症状が出ている可能性もあります。光学窓の汚れなどによって起きている可能性もあります。
③レジン材料の有効期限切れ
光造形3Dプリンターのレジンは基本的に長期間使用ができますが(2年近く)あまりにも期間がたっている有効期限切れのレジンの場合にはこの症状が起きる場合があります。
対策
基本的な対策として、上記の①~③の原因も考え、3Dプリンター自体を清掃し、新しいレジンタンクと新しい材料で、同様の症状が起きるか確認を行います。
部分的なレジンの未硬化
光造形3Dプリンターでは、造形が完了した後に部分的なレジンの未硬化、部分的な欠落、もしくはレジンがたまっている症状があります。穴が開いていたり、正しく積層されなかったりするケースです。
部分的なレジンの未硬化の原因
部分的なレジンの未硬化の原因にはいくつかの理由があります。
①造形物が細かすぎる場合
光造形3Dプリンターは、各機械ごとに異なっていますが、造形できる最小サイズが決まっています。この最小サイズより小さい部分、細かい箇所が造形物の一部にある場合には、うまく造形できずに積層されない場合があります。
②サポート材が足りない
オーバーハングやブリッジなどサポートが足りない箇所にサポート材を足します。
③プリント方向を変更する
レジンが抜けやすい方向やブリッジやオーバーハングが発生しにくいプリント方向に再度調整します。
④造形物を分割する
造形物を分割することで、レジンが抜ける構造やサポート不足になるプリント方向を解消します。
造形3Dプリンターの失敗を防ぐ基本的な対策のまとめ
光造形3Dプリンターの造形中に起きる失敗の代表的な事例をご紹介してきましたが、基本的にどの失敗例も対策は共通しています。大まかにまとめると
1,プリント方向を変更する
2,造形物を分割する
3,サポート材の設定を見直す
4,レジンタンク、レジン材料、レーザー光の周りをメンテナンスする
といった対策です。ほとんどの失敗事例が、上記のような運用面で解消することができます。
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