シート積層法3Dプリンターの原理と仕組み

シート積層法3Dプリンターとは

3Dプリンターには様々な原理や仕組み、種類が存在するが、その共通するポイントは“積層する”という点にある。プラスチックも金属も、ほぼすべての3Dプリント製法が、何らかのプロセスによって材料を積層し、一つの物体にしていく。こうした積層造形の最も典型的な製法の一つが、シート積層法といわれる3Dプリント技術だ。

3Dプリントというと一般的には熱溶解積層法であるFDM®が代表的だが、“積層”という印象からは、シート積層法の方が典型的といえるだろう。シート積層法は大きく分類すると2つの製法が存在するが、代表的なものがLaminated Object Manufacturingといい、シート状の素材をラミネート(積層)していく。

ちなみに“laminate”という言葉自体には、薄板をかぶせるとか、積層物といった意味があり、紙の加工方法としては、”ラミネート加工“という名前で有名である。

ラミネート加工は、異なるシート状の素材を貼り合わせる印刷物の加工技術として知られるが、三次元のオブジェクトを製造する技術では全く別の加工方法になり“シート積層法”という表現の方がわかりやすい。

シート積層法3Dプリンターの原理と仕組み

このシート積層法は、大きく分類すると二つの種類に分けることができる。冒頭でご紹介した、Laminated Object Manufacturing法、通称LOM 3Dプリントと、超音波を使ってシート素材を結合するUltrasonic Consolidation法、通称UC 3Dプリントだ。

基本的にラミネート製造法(LOM)3Dプリントでは、ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)の薄いシートが用いられる。また、超音波結合法(UC)3Dプリントでは、薄い金属箔が用いられる。それぞれ、シートを重ね合わせ、レーザーカッティングするプロセスは同じだが、シートとシートを接合する技術が異なる。

ラミネート製造法(LOM)3Dプリントでは、シートとシートの間に特殊な接着剤を塗布することで接着し積層されていく。一方、超音波結合(UC)3Dプリントでは、超音波によって金属を接合することができる。

それぞれ手法は異なるが、積層の解像度は平均的に薄紙1枚程度、0.2mm程度であり、比較的滑らかな表現が可能となる。基本的な用途としてプロトタイプの作成として使用されるが、シート積層法の最大の特長は比較的大きな造形物を作ることができる。

また、超音波結合による3Dプリント技術では、複雑な金属部品などが製造可能で、航空宇宙産業などでも使用が期待されている。

シート積層法3Dプリンターの特長 長所と短所

シート積層法の特長は、シート状の材料を積層し、カットするという製法から、造形後の後加工が容易ということがあげられる。また、そのほかの3Dプリント製法に比べて、化学反応を起こす必要がないため、比較的大きな造形物を作ることも可能だ。

例えば3Dプリントの代表ともいえる熱溶解積層法(FDM)や、光造形法(SLA、DLP)は、樹脂素材に熱を加えて固めたり溶かしたりするという化学反応が伴うが、シート積層法の場合は、シートを積み重ねるというシンプルな方法であるため、造形の幅が制約されることが少ない。

またもう一つの特長として、シート状であれば幅広い材料に対応しているということもあげられる。PVC(塩ビ、ポリ塩化ビニル)を中心としたプラスチックシートや、接着剤でコーティングされた紙、更には薄い金属ラミネートなどが対応している。

しかし、化学反応を起こさないという点や、材料がシート状という点から、光造形法やレーザー焼結法などそのほかの3Dプリント技術と比べて寸法精度がわずかに低い。また、そのほかの3Dプリント技術と比べ、中空の複雑な形状など成型できる形に制限がある。

シート積層法3Dプリンターの長所

  • 材料の幅が広い。プラスチック(PVC・ポリ塩化ビニル)、紙、金属など
  • 化学反応の必要がないため、比較的大きな造形が可能
  • シート積層後、穴あけなどの機械加工が可能

シート積層法3Dプリンターの短所

  • シートを積層するという製法から寸法精度がわずかに低い
  • そのほかの3Dプリントと比べ成型できる形に制限がある

シート積層法3Dプリンターの材料 PVC(ポリ塩化ビニル)

シート積層法の3Dプリンターで扱われる主な材料は、大きく分類して3種類に分けることができる。第一がプラスチック、第二が紙、第三が金属である。ここではシート積層法のうち、ラミネート製造法(LOM)の代表的な材料であるプラスチックについてご紹介しよう(金属材料については、のちの超音波結合法(UC)の項目で後述する)。

ラミネート製造法(LOM)で扱われるプラスチック材料は、PVC、ポリ塩化ビニルである。通称塩ビともいわれるこの素材は、高い強度と耐久性を持ち、なおかつ安価ということから、さまざまな製品に使用されている。

PVC(ポリ塩化ビニル、通称塩ビ)の用途は非常に幅広く、バッグなどのコーティング剤から、シート状での建築素材などあらゆる分野に及ぶ。シート積層法であるラミネート製造法(LOM)は、おもにプロトタイプの作製を目的として、PVC(ポリ塩化ビニル、通称塩ビ)のシートが主力材料となっている。

ラミネート製造法(LOM)を開発したHelisys社の3Dプリンター、Solido SD300 Proでは琥珀透明、赤、青、黒、クリーム色のPVC(ポリ塩化ビニル、通称塩ビ)シートを0.168mmの厚さで積層し、高精度なプロトタイプを作ることが可能だ。

solido sd300

シート積層法3Dプリンターの歴史

シート積層法であるラミネート製造法(LOM)は、Helisys社によって開発された。正確な開発年月日はわからないが、この技術は各国で利用されており、イスラエルのソリッド社(旧Solidimension)や、フランスのStratoconception社などで利用されている。

ちなみに、Helisys社でのラミネート製造法(LOM)3Dプリンターの稼働は、2000年に中止されているが、後継機関であるCubic Technologies社によって、SD300 Printerとして販売、サービス提供されている。

solido sd300 pro

シート積層法3Dプリンターの用途

シート積層法であるラミネート製造法(LOM)の用途は、プロトタイプの作製が中心である。材料となる素材が PVC(ポリ塩化ビニル)であることや、シートを積み上げてレーザーカッティングする加工方法から比較的高精度のプロトタイプを作ることができる。

また、シートを積層する際には、接着剤によって固めるため、素材そのものの化学反応の必要がなく、大きいプロトタイプもスムーズに作ることが可能だ。寸法精度は、PVC(ポリ塩化ビニル)シートの厚さがわずか0.165mm(Z軸)ほどであり、光造形法(SLA、DLP)レーザー焼結法(SLS)よりは若干低くなる。

また造形材料は、PVC(ポリ塩化ビニル)や紙などのシートを利用するため、比較的低コストであり、精巧なプロトタイプ作成に特化した3Dプリンターと言えるだろう。

シート積層法3Dプリンターの種類と代表的な機種

シート積層法3Dプリンターの代表的な機種は、前述のとおり、ラミネート製造法(LOM)を開発した、Helisys社の3Dプリンター、Solido SD300 Proがあげられる。

Solido SD300 Pro 3Dプリンターは、現在Cubic Technologies社が販売を行っており、PVC(ポリ塩化ビニル)シートを使い高精彩なコンセプトモデルやプロトタイプを作ることができる。

Solido SD300 Pro 3Dプリンターの仕様

  • 材料:専用PVC(ポリ塩化ビニル)シート
  • 素材色:黄色の透明
  • 最大モデルサイズ:170 mm×220mm×145mm (XYZ)
  • 精度:0.2mm(x軸、y軸)、0.3mm(z軸)
  • 層の厚さ:0.165mm(Z軸)
  • 入力ファイル形式:STL
  • 最小肉厚:1 mm
  • プリンタサイズ:W450mm×D725mm×H415mm
  • 重量:40kg(9kg)
  • 消費電力:300VAC、47/63Hz 、100-120/200-240VAC
  • 価格:14995USD

金属のシート積層法3Dプリント。超音波凝固とは

シート積層法の一種類として開発された3Dプリント技術が、超音波凝固、Ultrasonic Additive Manufacturing(UAM)といわれるテクノロジーだ。この超音波凝固(UAM)は、金属のシートを積層して物体にしていく技術である。

一般的に、金属の3Dプリント技術は、レーザーなどによってパウダー状の金属材料を焼き固めるか溶かして固める手法が中心であったが、この超音波凝固(UAM)による金属材料の3Dプリントは、これまでとは全く異なるアプローチである。

超音波凝固(UAM)3Dプリントの原理と仕組み

超音波凝固(UAM)3Dプリントは、これまでご紹介してきたラミネート積層法(LOM)のように、薄いシート状の金属箔を積み重ねて物体にし、その後CNCミリングなどによって削り取る手法である。この手法の画期的な点は、超音波によって金属箔同士を接合している点にある。

通常、金属を接合する場合は、溶接のように加熱して金属の表面を溶かして融合させる方法しかない。あるいははんだ付けによって、接合するという手法である。しかし、この超音波凝固(UAM)3Dプリントでは、超音波によって金属箔の表面の酸化物を除去することで接合することに成功している。

金属は、その表面に目に見えない酸化物が付着しており、この酸化物があると金属同士は接着することが出来ない。例えば、はんだ付けなどでは、はんだの内部に含有されているフラックスによって、基板や電子部品の金属部分の酸化物が除去されて、接合することができるが、この超音波凝固(UAM)3Dプリントの手法は、この原理を用いたものである。

超音波によって酸化物が除去され、同時に薄い金属膜が凝固し固形になることから、この名前が付けられていると考えられる。

シート積層法超音波

超音波凝固(UAM)3Dプリントのプロセスは、一般的な3Dプリンターと同じようにCADモデルからSTLファイルに変換し、造形することができる。

セットした金属箔を超音波振動によって圧力を加え接着し、この繰り返しによって造形していく。その後CNC加工機によって余分な部分を取り除き、最終的な形状に加工していく。最終的には表面仕上も自動で可能で、完成品として高精度のパーツを作成することが可能だ。

超音波凝固(UAM)3Dプリントの動画

超音波凝固(UAM)3Dプリンターの特長 長所と短所

超音波凝固(UAM)3Dプリンターの最大の特長は、異なる複数の金属同士を一つの物体に組み合わせることが可能な点である。上記で、金属同士の接合は、通常溶接などの手法が用いられると述べたが、一般的に金属は異なる種類同士は溶融しても接合することはできない。

またろう付けという接合方法も用いられるが、銀ろうといわれる比較的高価な材料が用いられる。しかし、超音波凝固(UAM)法では、比較的低い融点の温度を持つ金属、銅や黄銅、アルミニウムといった金属であれば接合することができる。

また、この手法では、センサなどのエレクトロニクス部品の埋め込みも可能で、更にはセラミックスや、ホウ素、炭化ケイ素繊維、ステンレスメッシュなどの補強材も混合可能で、高強度の構造パーツや、軽量と剛性を併せ持つ高性能複合パーツの製造ができる。

シート積層法超音波

超音波凝固(UAM)3Dプリントの歴史

超音波凝固(UAM)3Dプリントは、もともとフォードのエンジニアであったDawn White博士によって発明された。超音波での接合技術は、1960年代から存在していたが、連続して薄い膜をプリントする技術としては、White博士が開発を行い、1999年に特許が取得された。

その後、White博士は、このプロセスを商品化するために2002年にアメリカミシガン州にSolidica社という会社を設立。初の超音波凝固(UAM)の3Dプリンターの商品化に成功している。その後このSolidica社は、更に超音波の出力レベルを高めるために、オハイオ州の非営利の溶接研究機関EWIと提携、これにより高出力の超音波接合システムの化初に成功し、アルミニウムやステンレス鋼といった高強度の金属合金の接合を可能にする研究開発に乗り出すこととなった。そして、両者は更に商業化を進めるためジョイントベンチャーを設立し、それが現在のFabrisonic社である。

シート積層法超音波

超音波凝固(UAM)3Dプリントの種類と代表的な機種

超音波凝固(UAM)3Dプリンターは、上記でも述べた通り、現在Fabrisonic社のみが開発、提供を行っている。同社の3Dプリンターは超音波接合とCNC加工が一体となった機種であり、SonicLayerというラインナップを持っている。

基本的には、SonicLayer R200、SonicLayer4000、SonicLayer7200といったモデルで、巨大な製造設備に近い。例えば下記の写真のようなSonicLayer7200は、720×720×360のビルドエンベロープを備えており大きな複合金属パーツも生成することができる。また、3Dプリンターそのものは顧客の要望に応じてカスタマイズして提供されており、決まった機種だけではない。

また、材料となる金属素材の独自開発も行っており、こちらも顧客と協力して、強度や弾性、熱膨張などあらゆる特性をカスタマイズした材料の開発を行っている。

シート積層法超音波

まとめ

プラスチック材料の3Dプリント技術は、熱溶解積層法(FDM)や、光造形法(SLA,DLP)、もしくはインクジェット法が中心となりつつある。その多くが、いまだプロトタイプの作製が中心だが、性能の向上や材料の発展によって、最終品の製造に利用が開始され始めている。

そのような中において、シート積層法の中心であるラミネート製造法(LOM)は、材料がPVC(ポリ塩化ビニル)や紙などであることから、その用途は限定的なものとなる。その一方で、シート積層法は、超音波結合などによる金属材料への発展を遂げている。

後半でご紹介した超音波凝固(UAM)3Dプリンターは、独自の手法により、異なる金属素材や、セラミックスや炭化ケイ素繊維、更にはセンサー部品などの組み込みもできるほどにまで進化を遂げている。

とりわけ金属3Dプリントの開発は、さまざまな製法が登場しているが、このシート積層法の進化版である超音波凝固(UAM)3Dプリントは、強化パーツやIOTなどへの利用も期待できるかもしれない。

2018.2.22 投稿者:i-maker

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