はんだ付け。ものづくりのレベルを上げる基礎知識とコツ

はんだ付けとは クオリティの高いものづくりの基本

はんだ付けとは、現代のエレクトロニクスのものづくりに欠かすことができない技術だといえる。私たちの身の回りには電気がなければ動かすことができないモノばかりだが、こうした電子機器、電化製品の全てにはんだ付けが行われている。電車、自動車、パソコン、スマートフォン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、LED照明など、日常生活のすべてのプロダクトにはんだ付けは使用されている。

本稿では、エレクトロニクスのものづくりに不可欠なはんだ付けの基本とその仕組み、さらには実際にはんだ付けを行う際のコツや注意点など、単なる知識としてではなく、実践的に使用することができるはんだ付けの技術をご紹介する。

エレクトロニクスのものづくりに関わる人にとっては必須の技術であるはんだ付け新たな製品開発を行う起業家や、電子工作などを通して電気の仕組みを知りたい人にとっても必須の技術である。また、はんだとはんだ付けというと、電子機器や電化製品の表には出てこない部分ではあるが、実はその製品の性能そのものを決定づけるほど重要な技術だと言っても過言ではない。

現代のエレクトロニクスは複雑化し無数の電子部品によって構成されるが、無数の接合箇所のうち、たった1箇所でもはんだ付けに不備があれば、その製品は不良品となってしまうことになる。またたった1箇所の不良がその製品を壊すだけではなく、以外な大惨事などを引き起こしてしまうこともある。

いわばはんだ付けは、現代のエレクトロニクスの品質だけではなく、我々の生活の安全までも担っている技術と言っても過言ではない。そのため、エレクトロニクス製品のものづくりに関わる全ての人にとって、最低限の仕組みと役割、その重要性と影響力は理解しておかなければならないものだ。

いいプロダクトもそれを形作る接合部分、すなわちはんだ付けが正しくなされていなければ、ゴミと変わらなくなってしまう。表にはわかりにくく意識されにくいが、ものづくりで最も大切な部分なのだ。

はんだ付けの役割

それでははんだ付けの役割についてご説明しよう。はんだ付けとははんだを使って電子部品と電子回路を接合する技術のことを指す。電子機器や電化製品などすべてのエレクトロニクス製品を動かすためには電子回路図が描かれた基板が必要だが、この基板に描かれた電子回路は電子部品を接着しなければ機能しない。

電子部品に関する細かい説明はここでは割愛させていただくが、電子部品には電気をコントロールするさまざまな種類があり、現代の複雑化するハードウェアの製品は電子回路も複雑になり、その製品の機能を発揮させるためにも無数の電子部品が必要になる。

はんだ付けとは、この電子回路に電子部品を接着し尚且つ電気を通さなければならない。当たり前の話だが、接着剤では部品と回路を接着できたとしても電気を通すことができないし、溶接ではくっつけることができても電子部品や基板そのものの組織を破壊してしまい、正しく機能させることができない。

そのため電子部品と電子回路をしっかりと接着し、同時に電気を正しく通すことができるはんだ付けのみがエレクトロニクス製造に必要な接合方法になるわけだ。それでははんだ付けの仕組みに入る前に、はんだ付けに使用する素材、はんだについてご説明しよう。

はんだとは 製法によって異なる種類

はんだ付けに使用するはんだとは、どのようなものなのだろうか。はんだに関する詳しい説明は「はんだ|ミクロレベルでものづくりを高品質にする必須の素材」をご参照いただければと思うが、本稿ではポイントだけ絞ってご説明しよう。はんだ付けに使用する素材はんだだが、金属と溶液から構成されている。

金属では錫、銅、銀、溶液はフラックスと呼ばれる松脂から抽出され生成される液体だ。以前までは鉛も使用していたが、環境問題などによって鉛を使わない、鉛フリーはんだが主流となっている。形状は糸状で真ん中にフラックスが入っているヤニ入りはんだと、ペースト状のソルダーペースト、棒はんだの3種類が存在する。

この形状はおもに、製造方法によって異なる。糸状のヤニ入りはんだは、はんだごてを使ったはんだ付けに使用するはんだで、糸の真ん中にフラックスが入っていることから、ヤニ入りはんだと呼ばれる。次にペースト状のはんだ、ソルダーペーストはプリント基板に印刷するためのはんだだ。

現代のエレクトロニクス製品の基板には、ミクロレベルの無数の電子部品が必要であり、こうした無数の電子部品を一気にはんだ付けするためには、ペースト状のはんだを塗り、電子部品を一括で装着、加熱してはんだ付けするという手法が必要になる。またこの基板専用には棒状の棒はんだも使用する。大きく二分すると、はんだごてを使ったはんだ付けのはんだと、リフロー炉やフロー用の基板実装のはんだとに分類されるといってもいいだろう。

はんだの原料は錫、銅、銀といった鉱石から採取される

はんだ付けの種類 ヤニ入りはんだとはんだごて

上記で製法によってはんだの種類が異なるということをご説明したが、ここではその製法すなわちはんだ付けの種類をご説明しよう。はんだ付けは大きく分類して二つの方法に別れることになる。第一がはんだごてを用いて、1箇所1箇所電子部品と電子回路を接合する手はんだ付けだ。

手はんだ付けに使用するはんだは、上記で述べたとおり糸状の糸はんだを使用するこの糸はんだは、ワイヤー状になっているはんだの真ん中にフラックスが挿入されてあり、別名ヤニ入りはんだとも言う。このヤニとは松ヤニのことを指し、フラックスが松脂から抽出される溶液によって作られるからである。

以下ではんだ付けの仕組みについて説明を行うが、糸はんだではんだ付けを行う場合、この真ん中に注入されてあるフラックスが溶け出ることで、電子部品と基板を接合することが可能となる。ヤニ入りはんだのはんだ付けでははんだごてを用いてはんだ付けを行うが、プリント基板のランドの形状や電子部品の種類によってこのはんだごての形状を使い分けることが求められる。

本来あるべき形ではんだ付けを行うためには、はんだ付けする際の温度や基板の形状、電子部品の種類によって最適な熱の伝達ができるはんだごてを選ぶ必要がある。

一般的なヤニ入りはんだ。ワイヤーの内部にヤニ、すなわちフラックスが入っている

はんだ付けの種類 ソルダーペーストとリフロー

もう一つ、大きく分類した場合のはんだ付けは、ソルダーペーストとリフロー炉によるはんだ付けがある。こちらはプリント基板に一度に複数の電子部品を装着するために行うはんだ付けの方法だ。ご存知のとおり現代の電子機器は極小化、複雑化しており、1枚のプリント基板に装着される電子部品の数は無数といってもいい。

抵抗やコンデンサ、トランジスタ、ダイオードなど一種類でも何十通り、何百とおりと種類があり、複雑化が進んでいる。最近では電子部品自体の大きさも針の穴ほどの大きさの極小化が進んでおり、こうした細かい部品を一つ一つはんだ付けすることは不可能に近い。

また、こうした電子部品の接合は極力正確に行わなければならず、はんだごてによる手はんだ付けは適さない。このプリント基板のはんだ付けに必要となるのがソルダーペーストとリフロー炉である。ちなみにここでいうソルダーとは、Solder、はんだを英訳した言葉だ。

ソルダーペーストとは、はんだの粉末、すなわち錫、銀、銅の粉末パウダーに、フラックスを加えて粘り気のあるペースト状にしたもの。リフロー方式とはプリント基板の上にこのソルダーペーストを印刷し、その上に細かい電子部品を装着、リフロー炉で加熱してソルダーペーストをはんだ付けするという方式だ。

この方式は年々電子部品が小型化し、電子回路が複雑化する現代においては主流のはんだ付けとなっている。このリフロー方式を取ればプリント基板に一変に部品を実装することが可能で、尚且つすべての箇所に均一に熱が加えられるため接合精度も全て同じクオリティで装着することができる。

ソルダーペースト

はんだ付けの基礎

これまではんだ付けの役割、種類、そして現状についてご説明してきたが、ここからは具体的なはんだ付けの方法についてご紹介していこう。ちなみに本稿では、ソルダーペーストとリフロー方式によるはんだ付けではなく、ヤニ入りはんだとはんだごてによるはんだ付けを中心にご説明していく。

またはんだ付けの基本的な方法に入る前に、部材の名称、はんだごての選び方と使い方、はんだ付けと温度の関係性、フラックスの役割、について詳細に順を追って説明を行う。部材の名称は基本中の基本であり、プリント基板の部品を装着する部分(ランドという)の形状などによって、はんだごての選び方を変更する必要が出てくるからだ。

またフラックスは一般的には聞きなれない素材だが、はんだ付けにとっては必須の素材となっており、とりわけその特性を知っているのと知っていないとでは、はんだ付けのコツの理解もまったく異なってくる。

はんだ付けを始める前に 安全と衛生管理

はんだ付けを行う前に、当たり前のことながら用意するものがある。また、工具や材料といった道具を用意するだけではなく、はんだ付け時における注意点についてもこちらで説明する。はんだごてや、ヤニ入りはんだなど、少なからず熱や薬品に関する部分なため、最大限の安全管理と衛生管理に気をつける必要があるだろう。

はんだ付けを行う際、ヤニ入りはんだから出る煙などを防ぐために、換気を十分に行い、手袋やマスクの着用作業後は十分手洗いを行うこと。また、直接電子部品やプリント基板、はんだ付け部などを手で触り、誤って口に触れると、残留していた薬品が付着し口に入る危険性があるため、最大限注意することが必要になる。

はんだ付けを始める前に 道具と材料の準備

はんだ付けを始める前に用意する道具であるがヤニ入りはんだ、はんだごて、スポンジ、基板、電子部品、コテ先温度計、 工具類(ニッパー・ペンチ・ピンセット・ストリッパー等)、手袋、マスクなどが必要だ。以下それぞれの使い方と準備の仕方について概要を説明しよう。

はんだごての用意

はんだごてに関しての種類や選び方については後述するが、コードレスの電池式のものよりは、温度調節機能があるAC電源式のはんだごてを使用するのがベストだ。はんだ付けは基板のランドの形状や、電子部品の種類によって熱の伝わり方、はんだ付けの仕方が変わるため、温度調節機能がついてあるものが汎用性が高くてよい。

はんだごては作業終了後には、スポンジでコテ先を拭い、フラックスの焦げ付きがないように十分確認した上で、ヤニ入りはんだをコテ先に少しつけた状態で電源を切るのが正しい使い方だ。これは、コテ先に酸化物(すなわち汚れ)が付着するのを防ぐことにも役立ち、電源をいれてコテ先が加熱された際に、はんだが溶けて煙がでることから加熱したことがすぐにわかるためである。そのためはんだごてを用意し、電源を入れた際には、コテ先に供給されたはんだが溶け出す状態から始まる。

はんだごて

スポンジの用意

余計な汚れを除去し、はんだ付けを綺麗に正しく行うためにはスポンジの用意は必須だといえる。スポンジは、はんだ付けの最中にはんだごてのコテ先についたカスやフラックスの汚れを除去するために使用する。使用後は十分に汚れを除去し、石鹸で綺麗にする。はんだ付け作業を行う前には適度に水を含ませ、軽く握るようにして少し水が滴り落ちる程度がベスト。水が多すぎてしまうと、コテ先を拭った時に飛散してしまうからだ。

電子部品と基板の取り扱い 絶対に素手で触れてはならない

はんだ付けを開始する前に、電子部品と基板の取り扱いについても注意が必要だ。ここで注意しなければならないのが、電子部品と基板は絶対に素手で触ってはいけないということだ。これは素手で触れることにより、人間の指先についた微細な塩分が添着し、電子部品と基板の両方を汚染し、結果として腐食に繋がるということになる。特に夏場でのはんだ付け作業には注意しなければならないが、塩素による腐食は不良にも繋がりかねない重要な部分だ。

後にはんだ付けと不良についても後述するが、人間の目ではみることができない塩素などが、はんだ付け部分を腐食し、たった1箇所の接合部分の不良が、その製品の価値をゼロにしてしまうことになる。電子工作など、遊びではんだ付けを楽しむならば別段問題はないが、実際にハードウェアを扱う際には、基板と電子部品、はんだ付け部を素手で触ってはいけないということはしっかりと記憶しておこう。

工具類の取り扱い

細かい電子部品を基板にはんだ付けする際には、ピンセットやペンチといった工具を使用することになる。手袋をはめるとはいえ、小さい部品を基板にセットし、はんだごてではんだ付けする際には正しく電子部品を装着することが望ましい。ただしその際、電子部品を掴んだり、固定したりする工具類も取り扱いに注意する必要がある。

前述の電子部品と基板の取り扱いの部分でも述べたが、例えば電子部品を掴むピンセットなどの先もイソプロピルアルコールなどで消毒する必要がある。ピンセットの先に目に見えない酸化物やゴミ、チリなどがついているのを除去することが目的だ。また、電子部品を切断するニッパーなども切れ味がいいものを使用する必要がある。

リード線を切断する際、切れ味が悪いとうまく切れず、はんだ付け部分に割れが生じる可能性が高い。こうした工具の取り扱いは全て、はんだ付けによる不良を防ぐためのものである。

このように、はんだ付けを行う前に、衛生面や管理面からの注意を徹底させることが必要だ。冒頭から繰り返し何度も述べているが、目に見えない酸化物や塩素がゴミとなり腐食を引き起こし、ひいてはたった1箇所の接合箇所の不良から製品そのもの不良につながってしまう。これがエレクトロニクスのものづくりにとって実は最も重要な部分であり、注意しなければならない部分なのだ。

仮にその製品がいかに性能がよく、これまでにない斬新な機能を持っていたとしても、たった一箇所の不良が、その製品の価値をゼロにしてしまうこともあるのだ。そのためはんだ付けを開始する前から、こうした注意する意識を持っておくことが大切になる。

はんだ付けのコツ

2章のはんだ付けの基礎では、はんだ付けを開始する前の注意点と、準備するもの、道具の取り扱いなどについてご説明したが、はんだ付けを開始する前に知っておくと飛躍的にはんだ付けが上達し、コツをつかめる知識がある。それがはんだ付けとフラックスの関係性だ。

フラックスについては、「フラックス。はんだとエレクトロニクスの性能を決める隠れた素材」でご説明したが、改めてヤニ入りはんだの仕組みとともにその基本的な性能をご紹介しよう。このフラックスの働きとヤニ入りはんだの仕組みを知っておくことで、はんだ付けの根本的な原理がわかり、後のはんだ付けのコツがとてもつかみやすくなる。

松脂からとれるフラックス

ヤニ入りはんだの仕組みとフラックス

まずはじめにヤニ入りはんだを用いたはんだ付けの目的は、はんだごてを用いてはんだを溶融し、電子部品と基板をしっかりと接合、電気がスムーズに流れるようにすることである。

冒頭でも僅かに述べたが、このはんだ付けに使用するヤニ入りはんだとは、はんだの真ん中にフラックスが入っている。フラックスとは、松脂から抽出した溶液を生成して作るもので、松脂のヤニが入っていることからヤニ入りはんだと呼ばれる。下記の図はヤニ入りはんだの概念図だが、中央の黄色い部分がフラックスであり、周囲を覆っている部分、金属部分が錫(Sn)銀(Ag)銅(Cu)で構成される。

以前までは鉛も使用されてきたが、環境問題の観点から最近では鉛を含まない、はんだ、鉛フリーはんだが主力である。またヤニ入りはんだの直径はさまざまな種類があり1.6mm、1.2mm、1㎜、0.8mm、0.6mm、0.5mm、0.3mmが販売されている。このサイズ違いは、接合する部品や基板のサイズによって使い分ける必要がある。この輪切りにした場合にみることができる中央のフラックスだが、なぜ含まれているかというと、このはんだごてで加熱し、このフラックスが溶け出すことで、電子部品と基板を接合することが可能になるのだ。

このフラックスが溶け出すとくっつくという単純な原理を知っておくだけでも、はんだ付けを行う際のコツが飲み込める。後にご説明するが、はんだごての当て方や上げ方など、はんだ付けのコツに直接関わってくる部分は、すべてヤニ入りはんだのフラックスの機能に関係しているのだ。ここではフラックスの役割を学び、正しいはんだ付けのコツを体得しよう。

一般的なヤニ入りはんだ。ワイヤーの内部にヤニ、すなわちフラックスが入っている
内部にフラックスが入っている

はんだに必須の素材。フラックスの役割とは

はんだ付けにおいて、最も重要な役割を果たしているのがフラックスだ。フラックスははんだ付けのメカニズムそのものといっても過言ではない。まずはじめに大前提として、フラックスがもしはんだに含まれていない場合には、電子部品と基板はくっつけることができない。

金属の表面には目では見ることができない微細な酸化物が付着しており、この酸化物が邪魔をして、くっつかせることができないのだ。ヤニ入りはんだがはんだごてで加熱されると、まずはじめにフラックスが溶け出し、基板と電子部品の表面に付着している酸化物を除去してくれる。そして次に、フラックスがはんだ付け部に広がることで、コテの熱を伝達してくれてはんだが溶融して溶け出すという仕組みになる。

このフラックスの役割は、ヤニ入りはんだを用いたはんだごてでのはんだ付け以外に、ソルダーペーストとリフロー炉によるはんだ付けでも同じである。ソルダーペーストは、錫(Sn)銀(Ag)銅(Cu)をパウダー状にしたはんだ粉末と、フラックスを混ぜ合わせることでペースト状にしたものだが、多数の電子部品を一度に接合する実装でもフラックスの働きは同様である。

フラックスが溶け出し、酸化物(汚れ)を除去。熱効率を高める

はんだ付けに必須の「切れ性」を発揮するフラックス

ちなみに、フラックスの役割はもう一つあり、正確に電子部品と基板をくっつけるだけではなく、正確にはんだを切り離すという役割もある。これは業界用語で「切れ性」というが、極小化し複雑化している電子回路図ではこの「切れ性」が非常に重要になる。

例えば、はんだ付けする箇所のすぐとなりに別のはんだ付けを行う箇所が存在する。この二つのはんだ付け箇所がもし、はんだが上手く切れず、つながってしまったら、その製品は機能しなくなってしまう。そのため、絶対にとなるの接合箇所にはんだがかからない「切れ」も必要に成るわけだ。

フラックスはこの「切れ性」というはんだそのものの性能を決める重要な役割を担っている。この「切れ性」により同じはんだ付け装置でも「切れ性」の高いはんだのほうが、素早くはんだ付けを行うことができ、生産効率の向上にもつなげられるのだ。

液体にし他の溶剤と混ぜ合わせて切れ性を高める

このようにフラックスははんだそのものの性能といっても過言ではない。フラックスで基板の表面や電子部品の装着部の酸化物を取り除き、その後溶けたはんだ付けで固める。こうしたヤニ入りはんだの仕組みを知っておくと、必然的にはんだを挿入する時の角度やはんだごての向きなども決まってくることになる。

はんだごての使い方については以下で説明を起こっていくが、はんだ付けのメカニズムと、そこにおけるフラックスの果たす役割を知っておくだけで、必然的に正しいはんだ付けの仕方やはんだ付けのコツ、はんだごての扱い方が理解できるようになるわけだ。

はんだごての使い方

はんだ付けに必要な道具と、ヤニ入りはんだの仕組み、フラックスの役割がわかった時点で、はんだごての基本的な仕組みと使い方についてご説明しよう。はんだごてを使う前に思い出していただきたいのが、フラックスの役割についてだ。前章「3-2. はんだに必須の素材。

フラックスの役割とは」でも詳しく述べたが、基板のはんだ付け部(ランドという)と、電子部品の接合部分は、フラックスがないとくっつけることができない。目に見えない表面の酸化物を除去し、はんだが溶け出す温度まで金属の表面を高めるためにはフラックスをはんだ付け部に流すことが必要になる。そのためはんだごての使い方も、ヤニ入りはんだからフラックスが溶けやすい角度で挿入する必要がある。

また、もう一点注意しなければならない点が熱の伝わり方である。はんだ付け部の状態によって熱の伝わり方が異なり、同時にはんだごての種類によっても熱の伝わり方が異なるためだ。ここではまずはじめに、はんだごての種類から順を追って付け方までご説明しよう。

ただし角度ではんだごてを使う
部材の正しい知識が必要

はんだごての種類と選び方

はんだごてにはさまざまなタイプの物があるが、ここではコテ先の種類についてご説明したいと思う。一般的にコンセントで接続し、温度調節できる電気ごては、コテ先を付け替えられるようになっている。例えば、コテ先は細いタイプのものと、太いタイプのものなど、大きさが異なるが、どのように使い分けるのであろうか。それははんだ付け部の大きさや部品のサイズなどによって異なることになる。

例えば、はんだ付けする部分が、スイッチなどのデリケートな部品であれば、ランド部分も小さく、コテ先が細いタイプのものを使用するのがベストだ。その一方で太いタイプのコテ先は、細いタイプのものと同じ温度、ワット数でより熱を伝えられることが可能で、はんだ付けが容易になる。

ちなみに、一般的な現代の電子機器に使用されている極小のプリント基板では、はんだごてを使ったはんだ付けは行われない。既に述べたとおり、リフロー炉などでペースト状のはんだを塗り、その後電子部品を装着して加熱するのが一般的だ。はんだごてを使ってでも可能だが、以下に述べる問題などで、極小のプリント基板では使用しないほうが望ましい。


はんだごて。温度調節機能がついているものがベスト

はんだごてのサイズと温度の関係

例えば、下記の図のように2種類のコテ先がある場合、同じ温度・ワット数であればどちらのコテのほうが効率よくはんだ付けをすることが可能だろうか。答えは太いコテのほうが、面積も大きく熱伝導率が高いため、細いコテ先を使うよりもはんだがつけやすい。

例えば細いコテを使い350℃の温度ではんだ付けを行おうとしたが、はんだが溶けにくかったとする。その場合、選択肢として二つ。温度を380℃まであげるか、温度を上げずにコテ先を太いものに変えるかという選択肢が登場する。この場合は、温度を上げずにコテ先を太いものに変えたほうがはんだ付けを行い易くなる。

仮に細いコテのままで、温度を380℃まで上げるとすると、加熱によってフラックスが焦げ、はんだごての先に焦げ付きができてしまい、尚更熱伝導が悪くなり、はんだがくっつきにくくなってしまうことになる。また、電子部品にとっても過度な加熱は悪影響をもたらしかねないため、太いコテ先に変更することがベストとなる。こうした温度とコテ先のサイズの関係からも、近年の複雑化するプリント基板のはんだ付けには、はんだごてが適さないことがお分かりだろう。

部品も小さく、はんだ付け部も小さい場合、効率よく熱を伝えようと思えば太いコテ先を使うほうが望ましい。しかし、極小なはんだ付け部には太いコテは適さない。こうしたことからあまりに極小なプリント基板のはんだ付けでははんだごてよりもリフロー炉を使用したほうがいい。

コテ先のサイズと熱伝導に注意

はんだごての当て方とヤニ入りはんだの入れ方

それではここからはんだごての当て方についてご説明しよう。冒頭でも述べたとおり、はんだごてを当てる当て方にも、脂入りはんだとフラックスの性質が関係してくる。繰り返しになるがフラックスは金属表面の酸化物を除去し、熱効率を高めはんだ付けを可能にするための機能がある。

そのためヤニ入りはんだの当て方だが、電子部品のリード部分と基板部分にある穴にフラックスが入るように当てなければならない。下記の図ははんだ付けの際のはんだごての角度と、ヤニ入りはんだの入れる角度だが、はんだごてに対して垂直にヤニ入りはんだを入れる必要がある。

斜めからヤニ入りはんだを当てたり、挿入角度が悪いと穴にフラックスが入らず、結果としてはんだ付けがスムーズに行かなくなってしまうのだ。また、はんだごての当てる部分だが、電子部品のリード部分と、プリント基板のランド部分といった二つの金属の部分を十分な温度まで熱する必要があるため、はんだが溶融する温度以上になるまで十分加熱しなければならないのだ。

こうして十分接合箇所の金属を熱して温度を高め、同時にフラックスを接合部分に流すことで、熱の伝達部を広げ、はんだ付けを可能にしてくれるわけだ。

正しいはんだごての当て方

はんだ付けの後の注意点 正しいはんだごての上げ方

上記の手順にのっとって正しい角度ではんだ付けを行ったあとは、はんだが固まるまで絶対にはんだ付け部を動かしてはならない。いかなる金属も溶けている間は強度は無いためだ。また固まりかけの場合にもはんだ付け部の強度は無いに等しい。正しくはんだ付けができたとしても固まらないうちにはんだ付け部を動かしてしまうとかたちが崩れ、不良の原因ともなりかねないからだ。

ちなみにはんだ付けをした部分はよく見てみるとはんだが固まってメタリックになるのがわかる。また、はんだ付けを行ったあとのはんだごての上げ方も注意が必要になる。例えば、はんだごての上げる高さが高かったりすると、溶けたはんだが飛び散ってボールという現象ができてしまう可能性もある。

ボールとは、飛んだはんだがはんだ付け部と離れた場所で丸くボール状に固まる現象で、電気を正しく通すというはんだの機能からは余計だ。そのためはんだ付け後のはんだごての上げ方は5センチから10センチほどの高さに垂直に上げるのが望ましいだろう。

コテの上げる高さに注意

はんだ付け後のはんだごての処理

はんだ付けが終わった後、道具を片付ける際に注意しなければならないのがはんだごての処理だ。はんだ付けをしたことが無い人にとっては、以外に思うかもしれないが、はんだ付けが終わった後、はんだごての電源を切る前に、ヤニ入りはんだをはんだごてのコテ先に溶かして塗る必要がある。

これはコテ先に酸化物が付着するのを防ぐためである。決してコテ先を拭き取った綺麗な状態で電源を切らないことである。フラックスの章でも述べたとおり、はんだ付けにとって目に見えない酸化物はゴミや汚れというに等しい。言うなればコテ先にはんだをつけている状態こそが酸化物を防ぎ綺麗な状態で保つための必要な処理なのだ。

使い終わった後は、コテの周りをはんだでおおう

はんだ付けと不良

これまではんだ付けに関しての基本的な知識、知っておかなければならないこと、さらにははんだごての選び方と使い方について詳しくご紹介してきたが、こうした正しい知識を習得することの目的はひとえにはんだ付けによる不良を無くすことにほかならない。例えば、はんだ付けの1箇所でも正しく付いていない場合、その1箇所からショートし機械が故障する可能性がある。最悪の場合、たった1箇所のはんだ付け部の不良によって火事などの大惨事なども引き起こされかねない恐れがある。

仮に大惨事にならなかったとしても、故障し機能しない機械は不良品としての烙印を押され、ユーザーからの信用を一気に失ってしまうだろう。そうしたことからもはんだ付けの不良は絶対にあってはならないし、現代のエレクトロニクスの製造が、リフロー炉などの量産であったとしても、はんだごてによるはんだ付けを通して、接合の大切さを学ばなければならない。

こうしたことから、「2-2-3. 電子部品と基板の取り扱い 絶対に素手で触れてはならない」でも述べたとおり、はんだ付けを行う際には、常に基板や部品の扱いに気を配り、正しい方法によるはんだ付けを心がけることが必要となる。ここでははんだ付けの不良に関する代表的な不良をいくつかご紹介しよう。

正しいはんだ付けは綺麗な山形になる
はんだ付けが正しく行われないと不良が起きる
製品の品質に直結する部分

いもはんだ

はんだ付けで頻繁に起こる不良の代表的なものとして、いもはんだが挙げられる。通常正しくはんだ付けできた状態は下記の写真にあるとおりはんだ付け部が綺麗な山形になる。しかし、いもはんだは見ていただくとわかるとおり、はんだが丸い塊になり芋のように見えることからいもはんだと呼ばれる。

このいもはんだは、一見するとはんだがついているように見えるが、はんだと、電子部品のリードやランド部分といった母材が十分に接着されておらず、衝撃や引っ張りなどの現象によって接合部分が外れやすいという可能性がある。接合が外れてしまえば、その部分は電気が正しく通らないことから、その機械は全く機能しなくなってしまう。

このいもはんだという現象は、ランド部分を十分温めないうちにはんだを供給し、尚且つランドが濡れ広がらない前にはんだごてを外した場合によく起きる。また、はんだ付けが長くなりすぎフラックスが蒸発してしまった場合に起きることが多い。

これは「4.3 はんだごての当て方とヤニ入りはんだの入れ方」でもご説明したが、正しく母材に熱を伝えフラックスを供給されないと起きる現象である。いもはんだを防ぐ対策としては、十分にコテ先を母材(リード部分とランド部分)に接着させ加熱し、ランドに十分にはんだが広がるまではんだごてを離さなければ防ぐことができる。

はんだブリッジ

はんだブリッジとは、隣同士の電子部品と電子部品や電子回路がつながっていないのにも関わらず、はんだ付けによって電気的につながってしまう現象の事をいう。これは主に電子回路や電子部品が極小で、回路と回路、部品と部品の感覚が非常に狭い多層プリント基板の表面実装で起きることが多い不良だが、はんだごてを使ったはんだ付けでも起きる可能性がある。

多くの原因が供給するはんだが多いことが原因となる。このブリッジの対策としては一度くっついてしまった箇所を再度はんだごてで加熱し、はんだ吸い取り線などによって余分なはんだを吸い取ることがベストとなる。

隣にかかるブリッジ

はんだ付け時に起きる不良は他にもはんだの量が少ない場合や、はんだごての部分でご紹介したボールなど、さまざまな不良が存在するが、正しいはんだごての使いかたと、はんだ付けの仕方を習得することで極力減少させることができる。

まとめ 品質管理に通じる技術

これまではんだ付けの基礎からはんだごての扱い方に至るまで、基本的に留意しなければならない点をご紹介してきたが、こうした基本的な知識を踏まえれば、大まかなはんだ付けのコツは習得することができると思う。またはんだ付けの本質は、基本的には「モノとモノとを本来あるべきカタチで接合する」といった点に凝縮され、すべてのものづくりに通用する原理を身に付けることができる。

例えば微細なごみや目に見えないごみにも気を使うという価値観が、クオリティの高いものづくりを可能にし、品質を一定に保つことに通じるわけだ。こうした点から見ると、はんだ付けは単なる接合技術ではなく、高度な品質管理にまで及ぶものづくりの技術であると言えるだろう。

いくらアイデアや技術が優れていようともそれを機能させる品質が一定に保たれていなければいい製品とは言うことはできない。そのためはんだ付けを単なる作業としてではなく、部品やモノの取り扱い方まで含めた製造技術と位置づけ、身につけてもらいたい物である。

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