Form 4で寸法精度を出すための実践ガイド:配置・設定・洗浄のコツ

Form 4で寸法精度を出すための実践ガイド:配置・設定・洗浄のコツ
「設計データ通りの寸法で造形されない」
「組み立てようとしたら穴が小さくてピンが入らない」
Formlabs製品を導入いただいた現場から、このようなご相談をよくいただきます。寸法のズレ(寸法誤差)が生じた際、プリンターの故障を疑う前に確認すべきポイントがあります。実は、運用ルールの見直しだけで、精度の課題は9割近く解決可能です。
■ ここがポイント
精度を決める鍵は、SLA(光造形)方式の特性を理解した「配置」と、余分なレジンを一切残さない「洗浄」の徹底です。
本記事では、最新機種Form 4を使用し、弊社が日々実践している「寸法精度を出すための標準作業手順(SOP)」を公開します。
【準備編】精度が出ない原因を理解する
寸法精度は、単一の要因ではなく「設計・設定・環境」の複合的な要因で決まります。特にSLA方式では、レーザーやLEDが当たる位置精度だけでなく、その後の「収縮」や「未硬化レジンの残留」が精度を狂わせる主因となります。
Form 4は新技術「LFD(Low Force Display)」により光学系の精度が飛躍的に向上していますが、それを扱う「設定」と「後処理」が旧来のままだと、その真価を発揮できません。まずは以下の要素を理解しましょう。
| 要因 | 影響の内容 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| モデル設計 | 壁の厚み不足や、嵌合(かんごう)のクリアランス不足 | 公差設計(0.1〜0.2mm程度の逃げ)を行う |
| サポート配置 | サポート材が付いた面の荒れ、除去時の欠損 | 重要な面にサポートを立てない |
| 積層ピッチ | Z軸方向の階段状の段差(積層痕) | レイヤー厚を薄く設定する |
| 後処理(洗浄) | 未硬化レジンの残留による「太り」 | 洗浄液 3D Medsupo等での徹底洗浄 |
【実践編】プロが教えるステップ・バイ・ステップ
ここからは、弊社が現場で行っている、高精度造形のためのルーティンワークを解説します。お手元のPCでFormlabs専用ソフトウェア PreFormを開きながら進めてください。
Step 1: 「Formlabs専用ソフトウェア PreForm」での配置とサポート設定
寸法において最も重要なルールは、「重要な面(穴の内側や嵌合面)にサポート材を立てない」ことです。自動生成機能は便利ですが、精度を追求する場合は手動編集が必須です。
- PreForm上でモデルを選択し、左側のメニューから「サポート」をクリックします。
- 「編集…」ボタンをクリックし、手動編集モードに入ります。
- 穴の内側や、他の部品と接する面にサポートポイントがある場合は、クリックして削除します。
- モデルの向き(回転)を調整し、重要でない面が下(ビルドプラットフォーム側)に向くように変更します。
Step 2: 積層ピッチ(レイヤー厚)の最適化
精度を求めるなら、積層ピッチを薄く設定します。標準設定から変更するだけで、Z軸方向の誤差が減り、表面が滑らかになることでノギスでの測定値が安定します。
- PreFormの右側にある「プリント設定」をクリックします。
- 「レイヤー厚」のスライダーを確認します。
- 標準の0.1mm(100ミクロン)ではなく、0.05mm(50ミクロン)を選択します。
- ※造形時間は伸びますが、嵌合部品を作る際は必須の設定です。
Step 3: 造形前の光学面チェック(Form 4の場合)
光の通り道が汚れていると、光が散乱し、造形物が太ったり歪んだりします。特にForm 4では、以下の2点を造形前に必ず目視確認してください。
- Form 4 レジンタンクフィルム: 曇りや硬化したレジンの破片がないか確認します。
- リリーステクスチャ: レジンタンクの下にある、微細な加工が施された面です。ここに指紋やホコリがついていると精度に直結します。
Step 4: 「洗浄液 3D Medsupo」による徹底洗浄
ここが最大の盲点です。造形直後のパーツ表面には、未硬化のレジンが付着しています。これが残ったまま二次硬化(ポストキュア)を行うと、レジンが固まってパーツ全体が「太り」、穴が小さくなってしまいます。
弊社では、コストパフォーマンスと洗浄力に優れた洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)を標準採用しています。
- 洗浄容器に洗浄液 3D Medsupoを満たします。
- パーツをバスケットに入れ、液中でしっかりと揺すります(撹拌)。
- パーツの表面から「ぬめり」が完全になくなるまで洗います。
- ※超音波洗浄機を使用する場合も、液流が穴の中を通るように向きを調整してください。
【技術パート】失敗しないためのプロの「コツ」
ここでは、よくある失敗「穴が埋まってしまう現象」を防ぐための、具体的な運用のコツを紹介します。
1. 設計段階での「逃げ」確保
設計データの穴径とピンの径をピッタリ同じ(ゼロタッチ)にすると、光造形ではほぼ確実に入りません。設計段階で、穴径を0.1〜0.2mmほど大きく設計しておくのが定石です(公差設計)。
2. 洗浄時の「液流」活用
洗浄液 3D Medsupoは強力な洗浄力を持ちますが、静止したまま漬け置きするだけでは、微細な穴の中のレジンは抜けません。 必ず「液流」を当ててください。筆やシリンジ(注射器型の器具)を使って、穴の中に洗浄液を通す作業を追加すると、精度の歩留まりが劇的に向上します。
3. Form 4特有の取り外し方
Form 4は造形速度が非常に速いため、モデルの形状やレジンによっては、硬化直後は比較的柔らかい状態の場合があります。 ビルドプラットフォームから取り外す際、力を入れすぎてモデルを変形させないよう、スクレーパーは「優しく、鋭角に」差し込んでください。
【応用編】さらなる効率化へ
寸法精度を安定させつつ、量産レベルまで効率を高めるためのベストプラクティス構成をご紹介します。
推奨ワークフロー構成
「速さ」と「品質」を両立させる現在の正解は以下の組み合わせです。
- 造形: Form 4 (圧倒的な造形スピードで試行錯誤の回数を稼ぐ)
- 洗浄: 洗浄液 3D Medsupo (ランニングコストを抑えつつ、IPA同等以上の洗浄力で「太り」を防ぐ)
高精度用途の推奨レジン
もし「汎用レジン(グレーレジン V5など)」で寸法変化が気になる場合は、材料の変更を検討してください。
- Rigid 10K Resin: ガラス繊維配合で非常に硬く、経年や熱による変形が少ないため、最も寸法精度が出やすい材料です。
- Precision Model Resin: 歯科・高精度模型用に開発されており、細部の再現性と寸法安定性に優れています。
まとめ
本日の作業チェックリストです。次回の造形時から必ず実践してください。
■ 本日のまとめ
- 配置: 嵌合(かんごう)面や穴の内側には、極力サポート材を立てない向きに調整する。
- 点検: Form 4の光学面(レジンタンク・リリーステクスチャ)は、造形前に必ずクリアな状態にする。
- 洗浄: 洗浄液 3D Medsupo を活用し、未硬化レジンをミクロン単位で洗い流す(撹拌・液流が重要)。
技術相談・サンプルについて
「記事の手順通りにやったが、どうしてもこの公差に入らない」という図面があれば、ぜひ一度ご相談ください。弊社の検証機(Form 4)にて、最適な設定をご提案いたします。また、高精度レジンのサンプル造形も承っております。
出典:Dimensional inaccuracy (SLA)

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