低価格3Dプリンターは材料で使用範囲が拡大
今さまざまな低価格3Dプリンターが登場しているが、もっとも普及しているタイプは何といっても樹脂を溶かして押し出すタイプのFDMタイプだろう。
FDMタイプといえばMakerbotのレプリケーターや、オープンソースタイプのLepLap、Ultimakerなど、線状のフィラメントといわれる樹脂材料を使って積層する3Dプリンターだ。 こうしたFDMタイプの3Dプリンターは、エポキシ樹脂を硬化させる光造形タイプと比べると、積層が粗く、ミスプリントなども多いが、実は材料の使い方によって、さまざまなモノが作れるという面白味がある。
特に最近ではブロンズ状の樹脂材料や、ゴム状のものなど、さまざまな材料が登場している。そんな中、Makerbotのレプリケーターを使って、折り曲げできるプリント基板を作る取組が公開された。
Makerbotのレプリケーターでプリント基板を製造
最近は導電性インクなどを使ってプリント基板を作ってしまう基板専用の3Dプリンターが登場しているが、本日ご紹介するのは一般的なMakerbotのレプリケーターでプリント基板を作ってしまうというものだ。
しかも、なんと銅による本格的なプリント基板が作れるという。一般的に電子機器に用いられるプリント基板には銅が用いられる。これは銅は金や銀に比べて材料費がはるかに安く、同時に優れた導電性を持っているためだ。
最近登場している導電性インクはコストは銅よりももっと安く、紙などにもプリントできるが、金属以外の物質が混ぜられているため導電性はよくない。 場合によっては導電性インクでは電気がきちんと伝わらず機能しないケースもある。そのためしっかりと機能する電子機器を作りたいのであれば、銅によるプリント基板が必須だ。
それではレプリケーターでどのようにプリント基板を作るのだろうか。
Makerbotのレプリケーターで作られた銅のプリント基板

高い粘着性と弾力性を持つフィラメントを使用
このプリント基板を作るために必要な材料は、NinjaFlexの3Dフィラメントが必要だ。通常のABSやPLA、ナイロン系のフィラメントを使用しては作ることは難しい。
なぜならば銅板に対して直接フィラメントをプリントする必要があるため、銅板に粘着しなければならない。そのため優れた粘着性と弾力性を持っているNinjaFlexが最適とうわけだ。 ちなみにプリント基板の回路図は、Autodeskがリリースしている無料の3Dデザインソフト123デザインで作ったものを使用する。
注意点は、プリントされる対象となる薄い銅板をレプリケーターの台座にしっかりと接着し、押し出し口が当たる部分まで高さを調整すること。銅板は大変薄いため、正確な位置まで高さを調整することが最も重要になる。
プリント後は銅板をはがし、室温で約40分ほど塩化第二鉄エッチング液で腐食しないように表面加工を施して完成だ。
薄い銅板とスプレー接着剤、粘着性の高いNinjaFlexを用意

回路図はAutodeskのフリーソフト123デザインで設計

台座に銅板を固定

NinjaFlexで回路図をプリント

塩化第二鉄エッチング液で表面加工し腐食を防ぐ

銅板以外のエッチングされた導電性布を使用しても作れる

まとめ
今回ご紹介した方法はモノづくりのコミュニティinstructables.comのmikey77さんが公開している。簡易的な基板であれば一般的な低価格モデルの3Dプリンターでも基板を作ることができそうだ。しかし、より複雑な動きや機能が求められ最終品のプリント基板の3Dプリントはかなり先になるだろう。
というのも複雑な動きを機能として持たせるためには、より微細な電子回路が必要になり、正確に電気を伝達する仕組みが必要になるからだ。
そのため、回路図をプリントできるレベルもより細かいレベルまで必要だし、使用する材料も、銅ではなく、より電気を通しやすい高純度の金などが必要だ。もちろん試作品を作り、単純な動作確認をするだけならば今のもので十分だが、最終品には故障がない、正確な品質が求められる。
ましてや導電性インクでは正確な電気の伝達は限界があるだろう。 しかし一方で技術の進歩は飛躍的なものがあり、極小レベルの電子回路のプリントも必ず可能になるに違いない。今後の研究開発が楽しみだ。
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