強化PLAフィラメントは耐熱性と粘りを50%向上し収縮性を50%減少

PLA樹脂のフィラメントを改良する動き

PLA樹脂は3Dプリンターの材料として最も利用されている素材の一つだ。デンプンから作られる乳酸で生成されており、非常に強固な表面仕上げが可能だ。もともとはABS樹脂の変わりになるプラスチック素材として開発されたが、しかし3Dプリンターの材料として使用する場合は、耐熱性が低く、耐衝撃性に弱いという弱点が残っている。

一般的なプラスチック成形方法である射出成形でPLA樹脂を使用する場合は、金型内の温度をコントロールすることによって、PLA樹脂を結晶化させ、ABS樹脂に等しい耐久性、耐衝撃性を備えることが可能だが3Dプリンターではこの方法を採用することは不可能だ。

FDM(熱溶解積層法)の3Dプリンターでフィラメント状の樹脂を使用する場合、糸上の樹脂を溶かして積層していくという製法から、高温の結晶化は不可能になる。そのため3DプリンターとPLAフィラメントで、ABSフィラメント並みの高い耐久性を持つ物体を作るためには、PLA樹脂の素材自体を向上させるしか方法がない。

本日はそんなPLAフィラメントの弱点を克服し、ABS樹脂並みの耐久性、耐衝撃性を備えた新たなPLA樹脂フィラメントをご紹介。

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ISOに準拠した物性試験で大幅に物性が向上

PLA樹脂の特長の一つは、その他の物質と合成することで、全く独自の性質を持たせることができるという点だ。既にPLA樹脂にさまざまな素材を混合させることで、独自の質感を表現できるフィラメントが開発されている。

本日ご紹介する強化PLAフィラメントPLA HS(High Strength高強度)を開発したのは、フィラメントメーカー「Design for Craft」が開発したもの。

PLA樹脂にミネラルパウダーを混合することで、従来のPLA樹脂をはるかに超える、柔軟性と耐衝撃性、耐熱性を備えることに成功している。下記はPLA HSの向上性を表した数値だが、プラスチックの引張実験の試験規格ISO527や、プラスチックの耐熱試験規格ISO75、密度の試験規格ISO1183などに則ったテストをクリアしている。

PLA HSの向上した性能と試験結果

  • 耐熱性:50%向上
  • 曲げ強さ:50%向上
  • 収縮性:50%減少
  • 吸水性:50%減少
  • (標準のPLAフィラメント比較)
  • 破断点引張強度:MPa; 60 (ISO 527)
  • 破断伸び:2%(ISO 527)
  • 耐熱性:92℃(ISO75 )
  • 比重:1,37 g / cm3(ISO 1183)
  • 溶融温度:200℃-230℃

物性が大幅に向上

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PLA樹脂フィラメントの弱点を全て克服 

試験結果を見てみると、従来PLA樹脂のフィラメントには足らなかった曲げ性などの柔軟性や、強度、耐熱性が大幅に向上していることがわかる。上記の数値は通常のPLA樹脂フィラメントと比較した場合の物性だが、50%も性能が向上している。

また、収縮性を従来のPLA樹脂の半分に抑えることに成功しているため、熱収縮からくるプラスチックの形状変化もより少なくて済む。とりわけデスクトップモデルの3DプリンターでPLA樹脂を使用すると、造形する目的物によっては、樹脂の収縮性からくる「反り」がひどい場合が多い。

しかし、このPLA HSを使用すれば、よりデスクトップモデルで作れるデザインが増えるというわけだ。また、耐熱性の部分に関して言うと、通常のPLA樹脂は高温に非常に弱く、真夏の車の中などで変形する場合がある。

一方で改良されたPLA HSでは90℃近くまで、耐熱性があるためめったなことでは変形しない。「Design for Craft」では、実際にPLA HSで作られたナイフと、通常のPLAフィラメントで作られたナイフ両方を食器洗い洗浄機にかけてみたが、PLA HSで作られたナイフは全く形状に変化は見られなかった。

ちなみに一般的な食器洗浄機のすすぎ温度は80℃から90℃に達する。この強化PLA樹脂のフィラメントPLA HSのカラーはホワイトのみ、価格はちょっと高めで64.9ユーロ(約8700円)。「Design for Craft」が提供するフィラメントは他社とは形状が異なりスティックタイプになっている。

すすぎ温度が90℃に達する食器洗浄機に入れてもPLA HSは形状が変わらない

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デスクトップ3Dプリンターで形状変化しない精巧な試作が作れる

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PLAフィラメントについては「3DプリンターのPLA(ポリ乳酸)フィラメント完全ガイド」で詳しく特長やおススメフィラメントをご紹介していますので其方もご参照ください。

まとめ

PLA樹脂は比較的新しいプラスチック素材で、まだまだ完成された素材ではない。むしろこれから改良が進み多くの性能が向上した素材が登場するだろう。今回ご紹介したPLA HSフィラメントも、これまでのPLAフィラメントとは全く異なる優れた物性を誇っている。

例えば熱収縮性が半分になり、耐熱性が向上することで、試作やモックアップの精度が向上し、より多くのモノをPLA樹脂で作ることが可能になる。とりわけ低価格なFDM 3Dプリンターは性能が安定せず、作る物のデザインによっては、形状が固まらず崩れたり、「反り」が頻繁に起こる。

こうした不具合や不良は、3Dプリンターは金型と異なり温度コントロールが自由にできないため、プリンター自体の性能を向上させるか、もしくは使用する材料の物性自体を変えるかしか改善する方法がない。言い換えれば3Dプリンターと素材の物性は非常に密接な関係にあると言える。

そのため3Dプリンターの使用範囲の拡大や普及は、プリンター自体の性能向上と素材の物性向上、この二つに負っている部分が大きいと言える。そういう視点で見ると、PLA HSフィラメントの登場はとても画期的だ。

PLA樹脂についてはこちらの記事もどうぞ

2014.10.11 投稿者:i-maker

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