純シリコーン「Silicone 40A Resin」解説。Elastic 50Aとの違いとFormlabs新素材のメリット
こんにちは。
今回は、Formlabsユーザーの皆様、そしてゴム製品の試作や小ロット生産に課題を抱えていたエンジニアの皆様にとって、まさに「待望」と言える新素材のニュースをお届けします。
これまで、光造形(SLA)方式の3Dプリンターにおける「柔軟素材」といえば、ゴムのような性質を持たせたアクリル系レジン(ゴムライクレジン)が主流でした。しかし、ついにFormlabsから、純度100%のシリコーンを造形できる画期的な新レジン、「Silicone 40A Resin」が発表されました。
「シリコーン『風』ではなく、本物のシリコーンが3Dプリンターで出せる」 このインパクトは非常に大きいです。
本記事では、この新素材がなぜ画期的なのか、既存のゴムライクレジンと何が違うのか、そして現場で運用する上での「プロの視点からの注意点」を詳しく解説します。金型コストの削減や、防水・防塵設計の試作スピードアップをお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
なぜ「Silicone 40A Resin」が重要なのか?
製造業の現場において、シリコーン部品(パッキン、ガスケット、シール材など)は至る所で使用されています。しかし、その試作や少量生産には長年の課題がありました。
- 金型(成形)の場合: たった数個の試作でも高額な金型費用と数週間のリードタイムがかかる。
- 従来の3Dプリンター素材の場合: 形状確認はできても、耐熱性や耐薬品性、経年劣化の面で「実使用」や「厳しい機能テスト」には耐えられないことが多い。
今回発表された「Silicone 40A Resin」は、Formlabsの特許出願中技術(Pure Silicone Technology™)により、このジレンマを解消しました。金型を起こすことなく、数時間で、しかも社内の3Dプリンターで、実製品と同等の化学的特性を持つシリコーンパーツを製造できるようになったのです。
これにより、コストが見合わず断念していた「1個〜数百個」単位のシリコーン部品製造が、現実的な選択肢となります。
徹底比較:既存の「Elastic 50A」と何が違うのか?
既存ユーザーの皆様から最も多くいただく質問が、「今までのElastic 50A(ゴムライクレジン)と何が違うの?」という点です。 結論から申し上げますと、「素材の根本」と「耐久性」が決定的に異なります。
以下の比較表をご覧ください。
| 比較項目 | Silicone 40A Resin | Elastic 50A Resin |
|---|---|---|
| 主成分 | 純シリコーン(100% Silicone) | アクリル系フォトポリマー(シリコーン配合) |
| ショア硬度 | 40A(少し硬めのグミやパッキン程度) | 50A(一般的な輪ゴムより少し硬い) |
| 破断伸び率 | 230% | 160% |
| 反発弾性 | 34%(ギュッと潰してもすぐに戻る) | 比較的ゆっくり戻る |
| 耐熱性 | -25℃ 〜 125℃ | 低め(高温環境には不向き) |
| 耐薬品性 | 極めて高い(油、酸、塩基に強い) | 一般的なレジンと同等 |
| 経年劣化 | UVや酸化に強く、長期間性能を維持 | 紫外線や経年で黄変・硬化が進みやすい |
| 最適な用途 | 最終製品用パッキン、高温部のシール、マスキング治具 | 外観確認用モデル、短期使用のショックアブソーバー |
1. 「へたり」に強い圧倒的な反発力
Elastic 50Aは長時間圧縮し続けると形状が戻らなくなる(へたる)ことがありましたが、Silicone 40Aは純粋なシリコーンゴムであるため、優れた「圧縮永久歪み」特性を持っています。これにより、長期間圧力がかかるパッキンやガスケットとしての使用が可能になりました。
2. 過酷な環境に耐える「耐性」
自動車のエンジンルーム周辺のような高温環境や、薬品がかかる製造ラインの治具としても使用可能です。これはアクリルベースのレジンでは到達できなかった領域です。
活用事例:世界の現場はどう使っているか
元記事で紹介されている、先行して導入した海外企業の事例を見てみましょう。
- FINIS社(水泳用ゴーグルメーカー)
課題: 防水ガスケットの試作において、シリコーン鋳造(金型)の外注に「3週間・1,000ドル以上」かかっていた。
解決: Silicone 40A Resinを導入し、わずか8時間で試作品を造形。コストも大幅に削減。実際にプールの水圧環境でテスト可能な品質を実現しました。 - Dorman Products社(自動車部品メーカー)
課題: 部品の圧力テストを行う際、相手材の形状に合わせたカスタムシール(密閉材)が必要だった。
解決: オイルや冷却水、高温にさらされる環境でも使用可能なSilicone 40Aでシールを内製化。金属金型でシートを切断していた従来工程と比較し、リードタイムとコストを劇的に圧縮しました。
このように、「形状を見るだけの試作」から「機能評価・小ロット量産」へと、3Dプリンターの役割を一段階引き上げる素材であることが分かります。
【技術ノート】販売店技術担当が教える「現場運用のコツ」
ここからは、カタログスペックには載っていない、実際に運用する私たちが感じた「リアルな注意点」と「使いこなしのポイント」をお伝えします。導入前にぜひ知っておいていただきたい内容です。
1. 「二次硬化」にはひと手間必要です
Silicone 40A Resinは、酸素に触れていると表面が硬化しにくい(硬化阻害)という特性があります。そのため、完全にサラサラの状態に仕上げるには、以下の工夫が必要です。
- 水没キュア: 二次硬化を行う際、ガラス容器などに水を張り、パーツを沈めた状態で光を当てると、酸素が遮断され表面まで綺麗に硬化します。
※Form Cure等の専用機を使用する場合も、この工程を挟むことで仕上がりが格段に良くなります。
2. 粘度が非常に高い点に注意
このレジンは、Formlabsのラインナップの中でもトップクラスに「ドロっ」としています。
- 充填時間: カートリッジからレジンタンク(レジンを入れるトレイ)に注がれるまで時間がかかります。造形前の準備は余裕を持って行ってください。
- 気泡対策: ボトルを激しく振ると気泡が抜けにくいため、優しく撹拌するか、充填後に少し時間を置いて気泡を浮かせてから造形を開始するのがコツです。
3. 他の素材とは「くっつきません」
純シリコーンであるため、一般的なアクリル系レジンとは化学的に接着しません。 これはデメリットのように聞こえますが、「型(モールド)」として使う場合には最強のメリットになります。 例えば、Silicone 40Aで作った型に別のレジンや材料を流し込んでも、離型剤なしでツルッと剥がすことができます。この特性を活かして、特殊な成形型として利用するユーザー様も増えています。

まとめ
今回のFormlabsの新素材「Silicone 40A Resin」について、要点を3つにまとめます。
- ついに登場した「純シリコーン」: 従来のゴムライクレジンとは一線を画す耐久性、耐熱性、耐薬品性を持ち、実製品用途にも耐えうる素材です。
- 金型レスでパッキン製造: 数週間かかっていたシリコーン部品の調達を「数時間」に短縮し、開発スピードを劇的に向上させます。
- 運用にはコツが必要: 高粘度ゆえの扱いにくさはありますが、適切な洗浄や二次硬化のフローを組むことで解決可能です。
Formlabsは、ハードウェア(Form 4)の進化だけでなく、こうした「材料革命」によって、3Dプリンターでできることの限界を押し広げ続けています。
「自社の製品でこのシリコーンが使えるか試したい」 「Formlabs専用ソフトウェア PreFormでのサポート材設定はどうすればいい?」 「サンプルパーツを触って、硬さや弾力を確認したい」
そのような疑問をお持ちの方は、ぜひ私たち販売店にご相談ください。実機を持つプロフェッショナルとして、皆様の課題解決をサポートいたします。
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出典:100% Silicone 3D Printing Made Accessible: Introducing Silicone 40A Resin
