Form3のレジンタンク完全ガイド

Form3のレジンタンクについて

Form3レジンタンクは、Form3の造形品質を担う重要な役割を持っています。Form3はレジンタンクにレジンをためて、ビルド・プラットフォームがタンク内のレジンにつかり、下のレーザーユニットからレーザービームが当たり1層ずつ硬化していきます。

Form3のレジンタンクはレジンをためておくだけではなく造形を高品質に保つためのさまざまな機能をもち、レジンタンクを正しい状態に保ち、ケアを行うことで、常に安定して高品質な造形を行うことができます。

レジンタンクの役割

タンク内にためられたレジンを造形に最適な状態に保つとともに、ビルド・プラットフォームから引きはがす際に剥離を抑える役割を担っています。

レジンの状態を最適に保つ

レジンタンクの役割の第一が、レジンを造形に最適な状態に保つ機能です。UV硬化レジンは、液体状から紫外線があたることで固体に化学変化を起こす特性を持っています。

正しい硬化のためには造形に最適な温度、粘度が必要です。レジンタンクはタンク内のレジンを過熱すると同時に、ミキサーで攪拌し温度と粘度を一定に保ってくれます。

ビルド・プラットフォームからの剥離をスムーズにする

Form3のレジンタンクはタンクの底がフィルム状になっており、柔らかい素材でできています。これは造形中のビルド・プラットフォームからの剥離をスムーズにし、縦方向の形状変化を防ぐ効果があります。

Form3のような反転方式の光造形3Dプリンターは、液面にプラットフォームがつかり、1層ずつ硬化します。その際、プラットフォームが上げ下げして積層しますが、液面からそのままプラットフォームを引き上げると力がかかり物体が引き延ばされます。

Form3のレジンタンクはフィルムがプラットフォームに張り付いて引きはがすことで剥離をスムーズにし引き延ばされるのを防ぎます。

Form3のレジンタンクのバージョン

Form3レジンタンクはV1とV2の2種類のバージョンがあります。レジンタンクのバージョンはForm3本体のタッチスクリーンかレジンタンクの表面で確認することができます。

※レジンタンクは2020年3月以降、V2(バージョン2)に切り替わります。

レジンタンクV1はエラスティックレジン、リジッドレジン、グレイプロレジンの3種類のレジンに対応していません。

レジンタンクV2を使用するためには、Form3のファームウェアバージョン 1.4.5(以降)が必要です。

Form3のレジンタンクの使用方法

Form3のレジンタンクは、レジン1種類につき1個必要です。Form3にレジンタンクをセットすると、未使用品はForm3のタッチスクリーンに「Unused(未使用)」と表示されますが、一度プリントを行うと、プリントしたレジンのバージョンが表示され、次回以降、使用したレジン専用になります。

レジンを別のレジンに交換する際には、レジンタンクごと差し替えて使用します。

ミキサーを正しい向きにつける

一つのレジンタンクには1個のミキサーが付属しています。ミキサーはレジンタンク内のレジンを攪拌し温度と粘度を一定にしてくれる役割があります。

ミキサーには正しい向きがあり、マグネットが下にくるようにしてタンクの向かって左側の奥に押し込みます。正しくはまるとマグネットで固定されます。

Form3のレジンタンクの保管

Form3のレジンを保管する際には、付属の保管ケースにそのまま保管してください。紫外線遮蔽カバーがついているため、必ずカバーでふたをして保管してください。紫外線遮蔽カバーをしないと埃がはいったり、蛍光灯などの環境光で硬化してしまう可能性があります。

Form3のレジンタンクの寿命と交換時期

Form3のレジンタンクは消耗品です。レーザービームが何度も繰り返しあたることでコーティングが摩耗し、造形精度に影響を与えます。

またレーザーがあたるだけではなく、レジンに触れているだけで劣化します。

レジンタンクの寿命に影響を与える要素

  • プリントしたレイヤー数
  • プリントしたレジンの量
  • レジンに触れている期間
  • モデルの形状
  • 温度

上記のさまざまな要素によってレジンタンクは摩耗します。摩耗すると造形がきれいにできなかったりぼやけたり影響を及ぼします。また限界が超えるとレジンタンクに穴が開いたり破れたりします。

レジンのレジンタンクV2への影響

レジンタンクV2の登場によって、Form3でエラスティック、リジッド、グレイプロの3種が使用することができます。この3種のレジンとそれ以外のレジンではレジンタンクへ与える消耗の影響がことなります。

エラスティック、グレイプロ、リジッドの3種の影響

レジンに10週間触れている、または3リットルのレジンを使用してプリント、いずれか早い方

その他のレジンの影響

レジンに35週間触れている、または5リットルのレジンを使用してプリント、いずれか早い方

レジンタンクの寿命の確認方法

Form3ではレジンタンクV2になってからはファームウェアバージョン 1.4.5(以降)以降、Form3のタッチパネルから寿命を確認することができます。

  • Form3のタッチスクリーンのプリンタアイコンをタップします。現在のプリンタのステータスが表示されます。
  • Form3 Resin Tank V2が挿入されている場合は、タッチスクリーンの Form3 Resin Tank V2というラベルのセクションをタップして、 タンク詳細画面に移動します。
  • タンク詳細画面に、Tank V2の残りの寿命が表示されます。

グリーンの場合

レジンタンクの残り寿命25%―100% 警告なし

イエローの場合

レジンタンクの残り寿命25%。プリントを開始すると、以下の警告が表示されます。

Tank is nearing the end of its recommended lifetime and could begin leaking in the next few prints (タンクは推奨使用期限に近づいており、次の数回のプリントで漏れ始める可能性があります。

レッドの場合

レジンタンクの残り寿命0%。プリントを開始すると、以下の警告が表示されます。

Tank has reached the end of its recommended lifetime and is likely to begin leaking, which will damage your printer. We recommend that you discard this tank immediately.(タンクは推奨使用期限に達しており、漏れ始める可能性が高く、お使いのプリンタが損傷するおそれがあります。 このタンクは直ちに廃棄されることをお勧めします。

レジンタンクのクリーニング

レジンタンクはレジンがこぼれたり、造形が失敗してしまったり、誤って底面を触ってしまった場合などにはクリーニングする必要があります。

ICチップ部分のクリーニング

レジンタンクはICチップが取り付けられており、ICチップでForm3がレジンの種類を読み取っています。このチップ部分が万が一汚れてしまったりレジンが硬化してついてしまった場合にはクリーニングが必要です。

1.綿棒の先に純度の高いIPAを少量垂らします。

2.IDチップ上の銀色のパッドまたはスプリングフィンガーとその周りをその綿棒の先で擦ります。硬化したレジンやその他の汚れが完全に溶けて無くなるまでふきとってください。

3.また、IPAでIDチップ上の汚れがすべて取り除いた後も、IPAが完全が乾くまで、プリントを再開しないでください。

レジンタンクの外側のクリーニング

保護フィルムの下側のクリーニングを行うには:

  • レジンタンクに入っている液体レジンを別の容器に移し替えてタンクを空にします
  • 空にしたレジンタンクを逆さ向きにして、清潔な平たい台の上に置きます。この際、少しでもレジンがタンク内に残っていると零れ落ちてしまうため可能な限り空にしてください。
  • PEC*PADに純度の高いIPAを少量垂らし、裏面のフィルム表面に付いているレジンやその他の汚れを拭き取ってください。
  • IPAが十分乾いてから再装着してください。

プリントが失敗した際のレジンタンクの取り扱い

プリントは場合によっては失敗する可能性もあります。タコ足などの使用により電圧が十分に得られず、硬化ができない場合、もしくはサポート材が不十分で造形モデルが支えきれず、落下してしまったり途中で硬化が終了してしまった場合などがあります。

その場合にはレジンタンク内に硬化したレジンが浮いている状態になり、次回のプリントまでにきれいにする必要があります。ここでは、プリントが失敗した際のレジンタンクの取り扱いについてご紹介します。

警告:

レジンが直接肌に触れると、皮膚炎またはアレルギー性皮膚反応の原因になる恐れがあります。液体レジンまたはレジンで覆われた表面を触る際には、必ず手袋を着用してください。レジンが皮膚に付着したら、石鹸と水で念入りに洗い流してください。皮膚の洗浄に、手の除菌用ローションなど、アルコール成分が入っている溶剤は使用しないでください。

硬化したレジンを取り除く

まずプリントが失敗してしまった際には、硬化したレジンを取り除く必要があります。硬化したレジンを取り除くには付属品であるカスタムタンクツールとピンセットを使用します。

1.取り外し

まず初めに、レジンタンクを取り外す前に、ビルド・プラットフォームとレジンカートリッジを取り外してください。先にこの二つを取り外さないと、プリンタ内部にレジンが落ちて汚れる可能性があります。

2.レジンタンクを置く

レジンタンクを取り外したら、ケースに入れてください。作業はケースの中で行います。またケースの内部が汚れていないか確認してください。

3.タンクツールの上下を分ける

次にタンクツールの上部と下部を二つに分けてください。

4.タンクツールの下半分を使う

タンクツールの下半分をスクレーパーとして利用します。フィルムの上に残っている硬化したレジンを取り除いてください。

ツールの長めの方の先を、硬化したレジンの下に滑り込ませ、横方向に擦ってください。もしくはツールをひねりフィルムからレジンをうかせてください。

5.タンクツールをピンセットとして使う

半分のタンクツールだけで硬化したレジンを取り除くのが難しい場合には、タンクツールを1つに戻して、ピンセットとして利用してください。浮いている硬化したレジンをつまみ取り外してください。

注意:

Form3のレジンタンクの点検や、硬化したレジンの除去には、必ずタンクツールを使用してください。スクレーパーやフラッシュカッターなど、その他の金属系のツールを使用しないでください。そうしたツールを使用すると、タンクのフィルムを傷をつけ、プリントの失敗や最悪の場合にはレジンタンクが破れて、こぼれる原因に繋がります。

タンクツールの掃除

使用したタンクツールは必ず掃除してください。タンクツールにレジンがこびりついているため、濃度95%以上のIPA(イソプロピルアルコール)もしくはエタノールを清潔なペーパータオルに浸して、レジンがなくなるまできれいに拭ってください。

もしくはForm Wash(自動洗浄機)を使用し、5分間洗浄して、十分に乾燥してください。

レジンをろ過する

レジンタンクから硬化したレジンを取り除いた後は、再度プリントする前にレジンをろ過してください。

レジンタンク内に小さなレジンの残骸が残っている可能性もあり、最高品質のプリントを確実に得られためには、余分な残骸を取り除き、レジンの純度と光路となるタンク表面の透明度を可能な限り高い水準で維持することが不可欠です。レジンのろ過には、市販のろ過用フィルターやPポットなどを使用して行います。

レジンタンクの廃棄

レジンタンクを廃棄する場合には、余分なレジンが残っている場合には、レジンカートリッジとは別の容器を用意して、保管してください。古いタンクにまだレジンが残っている場合には、ペーパータオルを使ってすべて拭き取ってください。

さらに残ったレジンを硬化させるには、レジンタンクを日光に当てる(窓際に置くだけで結構です)か、UV光に照射することで硬化できます。

レジンが硬化した後はプラスチックごみとして廃棄が可能です。

注意:

古いタンクに入っていたレジンは、元のカートリッジに戻さないでください。場合によっては、硬化したレジンの破片やその他の残留物が入っている可能性があり、カートリッジ内のレジンの純度を低下させ、ミスプリントの原因になる可能性があります。