ブロー成形の簡易金型を3Dプリンターで作りコストとリードタイムを90%削減

3Dプリンターで作れるモノ作れないモノ

3Dプリンターが革新的だと言われている理由の一つに、これまでの製造方法を大きく変えてしまうということがあるだろう。例えば、よく頻繁に取り上げられるのが金型との対比だ。

データから直接物体を成形することができれば、金型を作る必要はないという意見である。

確かに製造する数量によっては、金型を作って量産するよりも3Dプリンターで作った方がはるかにコストも安く、製造時間も短くて済む。 しかし、だからと言ってすべての物が3Dプリンターで作ることに適しているわけではない。

その代表的な例として挙げられるのが私たちの身の回りで日常的に使われているペットボトルだ。

シンプルな形状に高度な機能性を要求されるペットボトルのカタチ

そもそもペットボトルはその生産量が膨大なため、今の3Dプリンターで作る必要性は何もないが、仮に1個単位で作ろうとしても3Dプリンターで作ることは難しいだろう。

というのも、ペットボトルには、内容物の種類によってその形状を微妙に変化させなければならないという特性があるからだ。

機能が伴わないカタチだけを作るのであれば可能だが、ペットボトルの機能を再現するのは伝統的な金型による製法しかできない。

基本的にペットボトルは4種類から成り立っており、内容物に応じた機能性をそのシンプルな形状に具現化しなければならない。 例えば、果汁などが含まれない炭酸飲料と、ファンタのような果汁を含む炭酸飲料でもその形状は異なる。

果汁を含まない場合の炭酸飲料では、耐圧ボトルというペットボトルが使用されるが、炭酸ガスを含ませるため、ペットボトル内の圧力が高くなる。

この圧力に耐えうるだけの壁面の厚さを保たなければならない。

また、果汁を含む炭酸飲料は、殺菌処理を施す必要があるため耐熱圧ボトルを使用する。 こうした内容物に応じた設計が要求されるペットボトルでは、ペットボトルの形状を微細に表現でき、なおかつ量産性が高い金型が最適になる。

内容物によって形状が異なるペットボトル

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身の回りのさまざまなモノに使用されているブロー成形とは

上記で長々とペットボトルについて語ったのは、3Dプリンターで作ることができないということを言いたかったのではない。

ペットボトルを作るための製法であるブロー成形と3Dプリント技術を組み合わせることで、従来の伝統的な製造がはるかにパワーアップするということを述べたかったためだ。

ペットボトルを作る製法は一般的に、ブロー成形と言われる方法をとる。簡単に言うと、吹きガラスの容量と変わらないが、主に中が空洞のプラスチックボトルなどを作るために用いられる製法だ。

ペットボトル以外に化粧品や洗剤、灯油用の容器、パイプ、ダクト、サスペンションカバー、水泳用のコースロープ、タンク容器、などなど、我々の身の回りに存在するありとあらゆるモノに使われているものだ。

今、このブロー成形に3Dプリント技術が融合する斬新な取り組みが行われている。

試作用金型を3Dプリンターで作ることでコスト効率を大幅に向上

上記でのべたように、ブロー成形は金型と金型の間にプラスチックを入れふくらますことで容器を作る製法だ。

当然のことながら、新しい形状のプラスチック容器を作りたい場合には、一から金型を作る必要が出てくる。

特に、上記で述べたように、高度な機能性を要求されるペットボトルを作る場合には、最終品により近いモノを試作する必要がある。 このような場合の試作はどのように行うのであろうか。

一般的には、試作品を作るための簡易金型を作り、試作品を製造、修正がある場合は、簡易金型自体を作り直し、再度試作品を出してみる、といった作業になる。

基本的にはこの作業の繰り返しになるため、製品によっては、試作品の数だけ簡易金型が必要になるということだ。 ちなみに簡易金型を作るためには、金型屋さんに依頼しなければならず、そこにかかるコストと時間は膨大なものだ。

そこで新たに注目を集めているのが、この簡易金型自体を3Dプリンターで作るという取り組みだ。

この取組を発表しているのは世界的な3Dプリンターメーカーストラタシス。ストラタシスは、自社の3Dプリンターで金型を製造した場合と、従来の製造方法を使って簡易金型を製造した場合のコストと生産時間を比較している。

それによれば、従来よりも生産時間と製造コストを90%も削減することが可能になったとしている。

この簡易金型は試作品を100個製造するために作られたもので、従来のCNC機械加工によるものやアルミ金型によるものに比べ、3Dプリンターで製造するメリットが示された。

ブロー成形用の簡易金型を利用した動画

ブロー成型用の簡易金型

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試作品製造のための短期間の使用であれば簡易金型が最適

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従来の製法との比較 コストと時間が大幅に削減されている

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※100個製造の場合 画像出所:ストラタシス

まとめ -デジタル化を知ることは時代と適合すること-

唐突だが、かつてはタイで金型のことをなんと言っていたかご存じだろうか。タイでは金型のことを「オータ」とよんでいたという。日本の東京都「大田区」を指す言葉だ。

これは大田区の金型工場が世界的に有名で会ったということを示すエピソードの一だが、かつて大田区には300以上もの金型工場があり、まさに日本の、世界のモノづくりの中心であったと言えよう。 また、大田区の町工場はかつて20年前には8,000社存在していたが、今では4000社まで減少しているという。

少子高齢化や生産年齢人口の減少という大きな流れも存在するだろうが、そこには多くの企業が浸透するデジタル化の波に対応できなかったのかもしれない。

デジタル化による効率化に対抗するために、多品種少量生産、機械を超える職人レベルの加工という方法で、競争力を高めてきた企業は生き残ることができたが、そうした方向性を見いだせなかった企業は多くがデジタルの波にのまれてしまったのだろう。

しかし今では、かつてのデジタルの中心であった、CADデータから作り出すCNC機械加工すらも越えようとしている。

一つの技術革新は多くの人々に、多くのメリットをもたらすことになるが、それと同時に、従来の技術に立脚していた企業は、自らの事業の喪失につながることに他ならない。

このように事業という観点から見てみると、3Dプリント技術に象徴されるデジタル技術は、単なる技術ではなく、もはや絶対に無視することができない「時代の流れ」である。

事業経営の根本には社会のために役に立つという基本理念が必要だが、理念の次に大切な必須条件は「時代との適合性」だ。

そうした面から言うと今後多くの業界に影響を与える3Dプリント技術は、注目してしかるべき分野に違いない。 金型と3Dプリント技術の記事はこちらもどうぞ

2014.7.4 投稿者:i-maker

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