空間に椅子を自由自在に作れる巨大3Dプリンター「MX3Dプリンター」

巨大パーツを製造する3Dプリンターの登場

今年に入り、最終品の製造に3Dプリンターが使われるようになり始めているが、その多くは、パーツ類や、身の回りで使える小物、おもちゃなど、手に取って扱えるレベルの大きさだ。

しかし、徐々に大きいモノを3Dプリンターで作ろうという動きが登場しつつある。

以前にもご紹介させていただいたが、中国は巨大な自動車フレームを3Dプリンターで作る研究を行っていたり、組み立て式のRepRapの巨大版の3Dプリンターなども登場している。

そんな中、本格的に家具を3Dプリンターで製造する取組が行われた。作られたのは椅子で、しかもこの椅子のデザインを手がけたのは国際的に有名なオランダ人デザイナーJoris Laarman氏だ。

Joris Laarman氏は1979年生まれの34歳で、世界的に有名なデザイナー。

優れたプロダクトデザインに送られるレッドドットデザインアワードや、数々の国際的デザインアワードを受賞しており、その作品はMOMAや、ヴィクトリア&アルバート美術館などに出展されているほど。

今回Joris Laarman氏が手掛けた椅子はニューヨークの展示会フリードマン・ベンダ・ギャラリーで展示されている。

使用された3Dプリンターは、もはや3Dプリンターという言葉が適切かどうかわからないほど巨大なノズルだ。

今回作られた椅子やベンチなどはこの巨大なロボットアームのような3Dプリンター、MX3Dプリンター（MX3D-メタル）で作られている。

この巨大な3Dプリンター、MX3Dプリンターは通常の3Dプリンターとは異なり、空間に直接出力することが可能で、複雑で精巧なモデルを作ることができる。

ちなみにこのMX3Dプリンターで今回作られたベンチのサイズは12×8フィート、約3.65メートル×2.43メートルという巨大なもの。

MX3Dプリンターは現在特許出願中とのことで、多くの建設会社や造船所などからも注目を集めているという。

Joris Laarman氏が3Dプリンターを自分の作品に使用し始めたのは2006年以降で、金属に依存しない椅子の設計と製造を可能にするために研究を始めたのがきっかけ。

今回フリードマン・ベンダ・ギャラリーで展示されている作品のほとんどはこのMX3Dプリンターで作られたものだ。動画を見ていただくとわかると思うが、空間に自由自在に物体が生成されている。まるで巨大な3Dプリントペンのようだ。

MX3Dプリンター動画

まるでロボットアームのような巨大3Dプリンター、MX3Dプリンター

フリードマン・ベンダ・ギャラリーで展示されている作品

Joris Laarman氏は、自らがデザインする椅子を消費者向けの低価格3Dプリンターでも作れるようにしている。

Joris氏が手掛けるデザインとアートを研究する職人とデザイナーのためのラボMakerchairで、そこでは、3Dプリント可能な椅子のデータが公開され、現在流通してるほとんどの3Dプリンターで使用することが可能だ。

低価格3DプリンターのMakerbotやReprapといった現在最も多く使用されている機種でもプリントできる。

しかし、ここでの椅子は、現在の3Dプリンターで作ることができるようにジグソーパズルのように組み立てて作る方法がとられている。当初は202個のパーツから構成されていたが、現在は77個のパーツで作られるようになっている。

3Dプリンターで77個のパーツをプリントし、そのあとに組み立てるという方法だ。ちなみに製造期間は約10日で、消費する材料コスト早く30ドルだという。

消費者向けの椅子の3Dプリント製造

パーツの製造動画

MX3Dプリンターは家具の製造以外にも多くの分野での使用が期待されている。既に数多くの建設会社や造船業などからも問合せがあり、その実用化が検討されているようだ。

今多くの国や企業が3Dプリンターの研究開発を行っているが、数多くの種類やさまざまな機能を持った機種が登場してくるだろう。 3Dプリンターというと、従来からの箱型のものをイメージしてしまうが、データから直接物体を生成するのであれば、どのような形状であろうとも3Dプリンターだ。

今回のMX3Dプリンターに見られるように、巨大なパーツを製造可能にするものや、一度に複数個の物体を生成できるもの、あるいは特定のパーツ製造に特化したものなど、3Dプリンターのバリエーションが増えてくることだろう。

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