鋳造用砂型の3Dプリントでは最も古い会社Voxeljet
ユーロモールドで各社が続々と新型3Dプリンターをお披露目している。ドイツの有名な3DプリンターメーカーVoxeljetも、新型の3Dプリンターをユーロモールドでリリースしている。Voxeljetは、ミュンヘン工科大学発の創業から15年近い3Dプリンターメーカーだ。3Dプリンターメーカーは各社特長があるが、このVoxeljetの最大の特長は、創業当時の1999年以降、鋳造に必要な砂型を3Dプリンターで作るという点に強みを置いている。
いわば、鋳造用砂型の3Dプリントでは最も老舗ともいえるだろう。そんなVoxeljetが、今回のユーロモールドで鋳造用砂型の製造をより強化する新型3Dプリンターとその製法を公開した。鋳造は世界で最も古く、なおかつ現代の工業生産には欠かすことができない製法だ。その砂型をより高精細で、効率よく製造できる新たな製法をご紹介。
鋳造用砂型と3Dプリント
そもそも鋳造とはどのような製法なのだろうか。鋳造は簡単に説明すると砂で固めた型に溶かした金属を流し込み、冷やして固めて金属のパーツを作る製法だ。古代では大仏などの製造に用いられているが、現代でも多くの工業用製品の生産に使用されている。アルミニウム合金やマグネシウム合金といった金属部品の製造に多用されその特長から多品種少量生産に最適な製法だ。
鋳造で用いられる型は砂で作られるのがほとんどである。砂を用いるメリットとして、成形が容易であることや、金属のガスを排出しないこと、一般的な金属の金型に比べコスト効率がいいことなどがあげられる。また、砂型は金属部品を成形後、砂を再利用できる点も特長だ。
この砂型だが、通常砂型を作る場合には、木型で鋳造したい形状の模型を作り、この木型を砂で覆うことで砂型を作る。その場合の工程は三次元のCADデータからマシニングなどの切削マシーンによって木型を削り出し人の手によるさまざまな微調整を行なうのが一般的だ。
3Dプリンターで砂型を作る場合の最大の違いは、ダイレクトに砂型を作るため、元の木型を作る必要がないということがあげられるだろう。この3Dプリンターで砂型を作ることの最大のメリットは、何と言ってもコストとリードタイムの削減で、修正などもデータから行うため、わざわざ木型を作り直す必要もないことがあげられる。また、作る製品の設計や構造によっても異なるが、3Dプリンターを使うことで複雑な構造を作ることが可能だ。
例えば、中が空洞のパーツを従来の製法でつくろとすると、中後を作り、砂型の中に入れるという作業が必要になる。しかし、3Dプリンターであれば、ダイレクトに砂型を作れるためそうした手間が無い。
Voxeljetの新たな製法 フェノール樹脂の結合は高強度・高精細
今回Voxeljetがリリースした砂型用の3Dプリンターは従来のものとどのように異なるのだろうか。今回リリースされた3Dプリンターは、フェノール樹脂結合剤を使用したバインダー方式のもので、従来の砂型用3Dプリンターに比べ、精度、強度、材料コストすべての面ではるかに上回ることができるという。
砂型を作るための従来の3Dプリンターはケイ砂という砂を粘着剤で接着して積み上げる方式だが、このフェノール樹脂結合による製法では、従来の材料であるケイ砂は必要としない。変わりに異なるPH値とセラミック素材からなるシリカ砂を使用する。この使用方法は、従来からの鋳造に極めて近いと言えるだろう。
というのも従来の木型を使用した鋳造方法では、砂を崩れにくくするためにフェノール樹脂などによって結合し、強化するのが一般的だからだ。ちなみにフェノール樹脂とは、熱硬化性樹脂の一つで、それそのもので使用されることはほとんどなく、接着剤や結合剤として使用される。
このフェノール樹脂結合剤と、セラミックベースのシリカ砂によって、従来の3Dプリンターで作る砂型よりもはるかに強固で、なおかつ精密な造形が可能になるとしている。また従来の3Dプリント製法とは違い、プリント中に使用されなかった材料をリサイクルすることが可能だ。
まとめ
今回の発表はユーロモールドで一足早くVoxeljetが行ったものだ。現在この新しい技術は開発調整中とのことで、正式に発表されるのが、2015年以降だという。とりわけ従来の砂型の3Dプリンターは材料費も高く、精度も粗いのが現状だ。この技術によって高精細、高強度、材料費を抑えた砂型のオンデマンド生産が可能になれば、また一つ製造業の新たな発展につながる。
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