がん治療のための放射線治療マスクに3Dプリント製造の利用が開始

進む医療用での3Dプリント使用

3Dプリント技術の導入が最も進んでいる分野の一つが医療分野だ。

医療分野に導入されている最大の理由は3Dプリント技術が個別のカスタマイズに最も適しているからだ。

特に歯科治療や股関節等のインプラント製造に使用されるのが代表的であったが、最近では様々な利用がされ始めている。

以前もご紹介したがイギリスでは足の不自由な方や足の治療用に靴用インソールの製造にも3Dプリント技術が使用されている。

また補聴器の製造も一人ひとりの耳の穴の形が違うため、3Dプリントは最適なツールとして使用が可能だ。そんな拡大する医療分野での使用だが、本日はがん治療のための放射線治療マスクの製造に使用された例をご紹介。

放射線治療マスクの3Dプリント

今回放射線治療マスクを3Dプリント製造する取組は、カナダのブリティッシュコロンビア美術館だ。

がん治療機関の黒色腫の患者さんを治療する医療物理学者からの要請で放射線治療マスクの3Dプリントを行った。

ちなみに使用された3Dプリンターは3DsystemsのCube X Duo 3D Printerだ。

そもそも、放射線治療マスクとはどのような目的で使用される医療器具なのであろうか。

放射線治療マスクとは患者さんの顔の位置を固定することで、ピンポイントにガン患部に放射線を照射して治療するために使用されるもの。

放射線を照射している最中に顔を動かしてしまうと、放射線がずれる可能性もあり、そうした事態を防ぐことを目的としている。そのため放射線治療マスクをつけることで、わざわざ照射位置にマジックなどで体に印をつける必要もないし、また頭部の目や神経部分といった大切な箇所に放射線があたることを防いでくれる役割がある。

この放射線治療マスクの作り方は、従来の製造方法は石膏で患者さんの顔の型を取る手法であったが、最近ではプラスチックの網状のものを温めて顔にかぶせ、固定し冷却することで作る手法が導入されている。

石膏で作る場合も、網状プラスチックをかぶせる場合もどちらも患者さんの顔に圧迫と息苦しさを与えるもので極めて不快なものであるとも言われている。

だが放射線治療マスクは患者さんの顔の形と完全に一致する必要があり、少しもずれることなく使用されなければならないため、顔で直接型を取る方法が必要であった。

しかし3Dプリント技術を使用すれば患者さんの顔の形を3Dスキャニングすることでデータから3Dプリンターを通じ製造することが可能になる。

プラスチック網の放射線治療マスク

3DsystemsがCESで発表した3Dスキャン

まとめ

放射線治療マスクの3Dプリント製造は患者さんが不快感を得ることなく製造することができるだけではなく、顔のデータから正確なマスクを製造することを可能にしている。

もしかしたら将来的に医療の現場では、患者さんの全ての身体がデータ化され保存されるような時代がくるかもしれない。

顔だけではなく骨の形状や臓器など、様々な部位が3Dデータ化され、治療や代替パーツの製造に利用される可能性がある。

最近では日本の佐賀大学とバイオベンチャー企業が3Dプリンターで血管を製造する研究を行っている事例まである。

こうした医療分野におけるデジタル技術の進歩と導入は治療を容易にし、人間の寿命をどんどん伸ばすだろう。

すべての部分がデータで管理され、パソコンの文章や画像などのように、データがあれば復元できるようなことが医療分野でも起こり始めているのかもしれない。

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