Formlabsのホワイトレジンのカスタム手術モデルで手術時間を88%削減

3Dプリンターの手術ガイドへの利用

3Dデータと3Dプリンターが進化することによって手術前のガイドモデルでの利用が拡大している。リアルな3Dプリントモデルによって、患者ごとの細かい症状の把握や外科医が手術前に理解を深めることができる。

これにより高度な手術計画を立てられ、さらには患者やその家族への理解も深めることができる。

今回ご紹介するのは3D解剖モデルを提供するAxial3DとFormlabsのヘルスケア部門のディレクターであるGaurav Manchanda氏によるForm 2とホワイトレジンを使用した脊椎手術用の造形モデルの事例をご紹介しよう。

CTスキャンデータから3Dモデルを作る

Axial3Dの目指すものは、3Dプリントされた医療モデルを、より多くの医療従事者が利用できるようにすることだ。

同社の強みは、最先端のソフトウェア技術を利用し、2D DICOM画像から3Dプリント可能なファイルを書き出す技術である。2D DICOMとは、CTやMRIなどによって撮影された画像データのこと。

3Dプリントするためには3次元にしなければならない。Axial3Dはこの独自ソフトにより3Dデータ化することで、より忠実でリアルな造形モデルを3Dプリントしている。

6台のForm 2とホワイトレジンを使用し、1分の1スケールの造形モデルを効率よく3Dプリントしている。これによりAxial3Dは、アイルランドとイギリス両国の医療機関が手術前計画モデルの唯一のベンダーとして承認されている。

https://youtu.be/_4JIm2flLkg

3Dプリントガイドモデルで骨の治療を88%短縮

この造形モデルの手術ガイドが大きな効果を発揮している一例がある。北アイルランドのMusgrave Park Hospitalでは、整形外科の分野で、少年の腕の複雑骨折の治療に3Dプリントされたモデルが利用され、治療の時間を88%短縮することに成功している。

この取り組みを行ったのが整形外科医Michael Eames医師で、Axial3Dによって提供されたデータをもとに、Form 2とホワイトレジンでリファレンスモデルを3Dプリント。

これにより、従来のCTスキャンによる2次元モデルでは可視化が不可能であった、骨の異常を発見することができ、標準的な治療よりも88%時間を短縮し、同時に少年の腕の可動域が90%になり傷跡や回復時間も短縮することに成功している。

ホワイトレジンで作られた骨のモデル(画像引用:Formlabs)

CTでは特定できない原因を3Dモデルで発見

また、数年前に前腕の骨を2本骨折していた少年の事例では、骨の異常の原因を特定するためにForm 2とホワイトレジンのモデルが使用されている。

その少年は骨が異常な状態で治癒していたため、腕の回転が50%しか回転できず、新たな痛みが生じていた。レントゲンとCTスキャンの結果からは、橈骨と尺骨に複雑な変形があることが見て取れた。

一般的にこの種の変形に対する標準的な治療方法は、前腕の骨を再構築して回転を回復させることだとされてきたが、実際にスキャンデータから3Dモデルを生成し3Dプリントしたところ、回転を妨げている原因は骨の形状ではなく、傷がついた骨と骨との間に生まれた強固な構造によることが判明している。

これによりCTスキャンから判断された「4時間の複雑な骨を削る手術」ではなく。「よりシンプルで低侵襲な30分の軟部組織の処置」へと切り替えられた。

Michael Eames医師は、正しい手術方法がわかるだけではなく少年の両親に対して3Dプリントされた骨の造形モデルを使って理解を得ることに役立ったと述べている。

「患者とその家族は、3Dプリントモデルによって私たちが話していたことを理解することができました」

手術を3時間短縮。5500ドルのコスト削減

実際にこの手術は30分以内に完了し、当初予定していた手術よりも3時間以上時間が短縮され、同時に病院は推定5,500ドルの節約にもつながったとしている。

なおかつ患者は術後のケアに費やす時間も減らすことができ、回復も早く手術から4週間後には、少年の腕の可動域は90%に達している。

イームズ博士は、3Dプリントされたモデルが、手術を計画する上で非常に重要であると考えている。「解剖学のリアルな造形モデルを持つことで、従来のCTやMRIでは不可能であった病理学への大きな洞察を得ることができます」。

まとめ:3Dプリントモデルが問題の可視化をより深く、手術時間短縮を可能に

Axial3Dは、DICOMセグメンテーションと3Dプリントサービスの両方のプランを提供している。

3Dプリントモデルを使用する外科医は、手術時間の短縮が最大のメリットであり、2D画像から3Dモデルで可視化することにより、これまであいまいであった部分がより深く理解することができるとしている。

また、Axial3Dによると術前計画に3Dプリントモデルを使用している外科医は、複雑な手術の場合、平均して30分から1時間の手術時間の短縮に成功しているとしている。 

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