レーザー焼結(SLS)の特許切れで低価格3Dプリンターが続々と登場

特許が切れたレーザー焼結(SLS製法)の低価格版とは

今年2014年2月に特許が切れたレーザー焼結法。一般的にSLS方式(Selective Laser Sintering)というこの技術は、粉末をレーザーで焼き固め物体を作る技術だ。チタンや銅などの金属や、ナイロンなどの樹脂素材に対応し、樹脂を積層するFDM方式に比べて仕上がりが綺麗。

多くの工業用用途として使用が開始されており、代表的な例でいえばGEがジェットエンジンの燃料ノズルや支柱をこの3Dプリンターで製造することを開始している。

この多くの産業から利用を期待されるレーザー焼結法だが、2月の特許切れを受け、低価格版の開発が既に開始されている状況だ。

かつてストラタシスが保有していたFDM方式の特許が2009年に切れて以来、たった5年で低価格版のFDMタイプの3Dプリンターが爆発的に普及している状況を見れば、同じレーザー焼結法の3Dプリンターでも同じことが想定される。

まだ最終製品としての販売は開始されていないが、8月から既に3社もリリースを開始している。ちなみにそのうちの1社は商品概要は公開されていないため、そのうちの2社をご紹介する。

驚くべき点は、特許切れによって価格が既存のレーザー焼結法の3Dプリンターの10分の1以下まで下がっているが、1社は何と50万円ほどと、信じられないほどの価格帯での販売を計画している。

複雑で高精度な造形が可能なレーザー焼結(SLS)製法

高性能で価格を10分の1に低下させたCE1とIce9

一番早くリリースを行った企業はイギリスのスタートアップ企業Norge社。8月中旬に2機種のレーザー焼結法による3Dプリンターをリリースした。現在クラウドファンディングキックスターターで資金調達の最中だ。

その価格帯は、既存のレーザー焼結3Dプリンターの10分の1以下だ。とはいえ大きさや形状、価格帯から見るにFDMの低価格タイプとはちょっと異なる種類。

ちなみにNorge社がリリースしたSLS3Dプリンターは1台340万円、もう1機種は1台130万円。中小企業やデザイン事務所を対象にこれまで高くて利用できなかった高性能なレーザー焼結法を提供する。下記はNorge社がリリースしたCE1とIce9 3Dプリンターで作られた造形物だ。

ナイロンパウダーやPA2200パウダーに対応

Norge社動画

Ice9スペック

  • プリンターサイズ:1500mm×1025mm×410mm
  • 造形サイズ:300mm×300mm×450mm
  • 層の厚さ:0.1mm〜0.15mm
  • 造形スピード:10mm〜30mm/時間
  • 粉末供給モード:双方向粉末供給システム
  • レーザーの種類:CO2、40ワット
  • 走査システム:シータレンズを中心に、高精度の磁気エンコーダ
  • スキャン速度:最大4m/秒
  • レーザパワー制御システム:PWMデジタル信号
  • 電源:230VAC、50 / 60Hz、5KVA
  • 価格:34,000USD

Ice9

ICE1

  • プリンターサイズ:900mm×300mm×350mm
  • 造形サイズ:200mm×200mm×250mm
  • 層の厚さ:0.1mm〜0.15mm
  • 造形スピード:8mm〜25mm/時間
  • 粉末供給モード:双方向粉末供給システム
  • レーザーの種類:ソリッドステート赤外線レーザー5W
  • 走査システム:シータレンズを中心に、高精度の磁気エンコーダ
  • スキャン速度:最大3m/秒
  • レーザパワー制御システム:PWMデジタル信号
  • 電源:230VAC、50 / 60Hz、5KVA
  • 価格:13,000USD

ICE1

50万円のデスクトップレーザー焼結3DプリンターSintratec

上記でご紹介した2機種は、通常のレーザー焼結3Dプリンターの10分の1以下の価格帯だが、さらに安い機種が登場した。それはスイスのスタートアップ企業Sintratecが開発する機種。性能もよく最もレーザー焼結法の低価格3Dプリンターとして可能性を秘めているとみられる。価格は1台3990ユーロ、約50数万円を想定しているとのことだ。SintratecはクラウドファンディングのIndiegogoで資金調達の準備を行っている。その完成度や動画を公開しているのでご紹介しよう。

1台50万円の低価格レーザー焼結3Dプリンター Sintratec動画

40ミクロンの高解像度

黒いナイロンパウダーで作られたサンプル

造形サイズは130mm×130mm×130mmで、40ミクロンの薄さ。最高速度は秒速70mmで造形可能だ。最高速度の場合の解像度は150ミクロン。サンプルで公開されているのは黒いナイロンパウダーだが、1台3990ユーロ(約50数万円)は従来のレーザー焼結法の機種では信じられない価格帯。FDMタイプの低価格3Dプリンターに比べれば高いが、それでもFDMで代表ともいえるMakerbotが1台約30数万円ということを考えると驚くべき価格帯。

まとめ

3Dプリンターの低価格化は急速に進むだろう。わずか1年で、新規参入する機種の価格競争は激化の一途をたどっている。

例えばFDMに比べクオリティの高い光造形タイプの3Dプリンターですら、オープンソースで組み立て式という方法をとれば1台あたり5万円から入手可能だ。

ここにきて、新たにレーザー焼結法の3Dプリンターが参入してくるということは更なる競争の激化を引き起こすだろう。FDMや光造形よりも精度に優れ、プラスチックだけではなく金属素材も使用できるSLSの低価格モデルの登場は更なる3Dプリンターの普及促進をもたらす。

1台50万円から300万円の価格帯は個人が持つには高すぎるこが起業家やデザイナー、中小企業にとっては最適だ。まさに特許切れによる価格破壊が起こっている状況にある。この低価格化は今後も止まることなく進んでいくに違いない。

ただ、通常の数千万単位のレーザー焼結法の3Dプリンターと比べ、性能がどの程度なのかはスタートアップ企業なので不明なところ。

FDMタイプでは低価格の3Dプリンターはミスプリントや、性能が今一つという側面もある。今後の細かい製品導入の事例や発表情報などが気になるところだ。

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