光造形の洗浄とは?仕組みと役割
光造形で欠かせない洗浄工程とは?
光造形3Dプリンターでは、他の造形方式、FDMやレーザー焼結方式とは異なり、3Dプリントが終了した後に、洗浄という工程が欠かせません。
この洗浄とは、造形モデルにこびりついた未硬化のレジンを洗い流す作業のことです。
光造形は、UVレジンといわれる液体のレジンに紫外線を照射して1層ずつ硬化して形にする造形技術ですが、造形モデルが完成した後、そのまわりは固まっていないレジンで覆われています。
この洗浄工程は、造形モデルの品質に影響を与えたり、また使用する洗浄液や周囲の環境などたくさんの注意点があります。
今回はこの洗浄の仕組みと役割についてご紹介しましょう。
洗浄の役割
洗浄の役割は、造形モデルのレジンを洗い流すことで、その後の造形モデルの品質をより高くするための工程です。例えば、洗浄が不十分だったり、洗浄後の乾燥が不十分のまま、追加の二次硬化などを行うと、本来の形状や強度が再現できない場合があります。
そのため、洗浄工程では、定期的に洗浄液を入れ替えて交換したり、十分な洗浄と乾燥が必要になります。
洗浄の仕組みとプロセス
冒頭でもご紹介した通り、洗浄とは造形モデルにこびりついた余分なレジンを洗い落とすことが目的です。一般的にレジンは水では洗い落とすことができません。(※水で洗える水洗いレジンは除く)
一般的にはIPAなどのアルコール系の溶剤に一定時間を漬けておくことでレジンが溶けて造形モデルの周囲のレジンが溶けます。
洗浄のプロセス
洗浄のプロセスは簡単です。洗浄液が入った容器に、約10分から20分程度、プリントが完了した造形モデルを入れておくだけです。
洗浄する時間は使用するレジンや、洗浄液の濃度(使用頻度が影響する)、洗浄機などによって異なりますが、だいたい10分から20分程度になります。
注意点
洗浄のプロセスでの注意点は、洗浄時間を超えて造形モデルをつけすぎないことです。一定時間以上つけておくと、洗浄液はレジンを溶かすだけではなく造形モデル自体も溶かしてしまうからです。
水で洗えるのか?
洗浄にはアルコール類、メディカルクリーンや、エタコールやIPAといった溶剤で落とすのが中心です。水では一般的なレジンは落とすことができません。一部には水洗いレジンが登場していますが、基本的に溶剤を使用しなければ落とせません。また液体のレジンは水で流してもそのまま廃棄することができないため、毒性の低い高い溶剤を使用することを推奨します。
洗浄で用意するもの
洗浄では、洗浄液や造形モデルを置く台、また、洗浄に使用する容器や洗浄機、ペーパータオルなど、さまざまなツールの用意が必要です。
容器・洗浄機
洗浄液を入れて造形物を一定時間つけてレジンを溶かす容器が必要です。3Dプリンターによって容器が付属している場合もあります。また専用の自動洗浄機なども販売されています。
台
造形物を取り出して置く台が必要です。洗浄液から取り出した造形モデルは一定時間乾燥させる必要があります。
ペーパータオル
洗い切れていないレジンをぬぐうのに使用します。基本的には自然乾燥がお勧めです。洗浄液から引き揚げた造形モデルは柔らかくなっていることがあるため、自然乾燥後、一部洗い切れていない部分を丁寧にぬぐいます。
洗浄液
洗浄液が必要です。I-MAKERでは毒性が低く、廃棄の手間が無いメディカルクリーンを推奨しています。そのほかエタコール、IPA等の洗浄液が必要です。
洗浄のポイントと注意点
光造形の洗浄を行う際には、ポイントや注意点があります。ここでは要点を絞ってご紹介しましょう。
洗浄液の選定 より使いやすいものを
光造形の洗浄液にはさまざまな種類があります。一般的にはIPA(イソプロピルアルコール)が推奨されていますが、IPAは毒性が高く、有規則(有機溶剤中毒予防規則)に該当するため、管理などの手間が大変です。
そのため、IPAと洗浄力が同等である溶剤、メディカルクリーンやエタコールなどがおすすめです。
洗浄環境に配慮する
洗浄に使用する溶剤は臭気や有毒性がある場合があります。そのため、使用する溶剤などによっては十分な換気やマスク、手袋など作業環境に配慮する必要があります。
定期的な交換
洗浄液は使用していると、レジンが溶けだしてきて洗浄力が落ちてしまいます。そのため、洗浄液は定期的な頻度で交換することが必要です。交換の目安ですが、レジンの粘り気が落ちにくくなってきたり、べたつきが取れなくなってきたら交換が必要です。
洗浄液の廃棄
洗浄液は、そのまま水道や下水に流すことはできません。レジンが溶けだししまったものは産業廃棄物扱いになります。産業廃棄物は産業廃棄物処理業者に連絡して廃棄が必要になります。引き取りには費用がかかり、概算で1回で45,000円~70,000円程度かかります。 弊社では産業廃棄物処理の手間をなくした3Dメディカルクリーンを推奨しています。回収専用の箱もセットになっており、引き取り手続きも簡単、引き取りの費用も掛かりません。
光造形3Dプリンターは、3Dプリント後に余分なレジンを洗い流す洗浄工程が必要です。洗浄は造形モデルの品質を高める役割を果たし、不十分な洗浄は形状や強度に影響を及ぼす恐れがあります。使用する洗浄液の選定や交換、そして廃棄に関する注意点もあります。
光造形3Dプリンターは、UVレジンを硬化させる技術を使用し、プリント後に未硬化のレジンを洗い流す洗浄工程が不可欠です。この洗浄は造形モデルの品質向上のために行われ、適切な洗浄が行われないと、モデルの形や強度に問題が生じることがある。洗浄にはIPAやメディカルクリーンなどの溶剤を使用し、水だけではレジンは取り除けません。洗浄液の選定時には、有毒性や換気などの作業環境を考慮する必要があります。また、洗浄液は一定期間ごとに交換することが推奨され、使用済みの洗浄液の廃棄には注意が必要です。特定の洗浄液は産業廃棄物としての取り扱いが求められ、費用や手間がかかる場合もあります。
環境にやさしい洗浄液とお手軽洗浄サービス(オプション)
樹脂製品の洗浄に使用される洗浄液は、環境に配慮されたものや効率的な洗浄が行えるものが用意されています。また、お手軽な洗浄サービスも利用可能です。