電子機器廃棄物の拡大と有効利用
電子機器の廃棄物が全世界でどれぐらいの量を輩出しているかご存じだろうか。
その数は年間5000万トンにも上り、世界の人口に当てはめてみると一人当たり約7kgにも上る。この電子機器廃棄物、通称E-Wasteは電子機器の普及とともに拡大をつづけ、2017年には6540万トンに達すると言われている。テレビや冷蔵庫、洗濯機、パソコンやスマートフォンなど、電化製品は発展途上国などをはじめ今後も世界中に普及を続けていく。
人々の生活が便利になるに越したことはないが、電子機器の廃棄物には、鉛やカドミウムなど有害物質も多く含まれており、環境問題として取り上げられている。
しかし現在、電子機器廃棄物のうち再利用に回されている部分はわずか12.5%に過ぎない。希少資源である金・銀・レアメタルの回収や、一部の電子部品が行われている程度だ。
こうした急増するE-Wasteの課題はこれからの課題であるが、廃棄される電子部品を使って画期的な取り組みが行われている。それは電子廃棄物からパーツを取り出し、わずか60ドル(約7000円)の費用で、3Dプリンターを作ろうという動きだ。
ディアゴスティーニから組み立て式の3Dプリンターが登場するなど、3Dプリンターはますます低価格化が進み身近な存在になりつつある。
本日は電子部品のリサイクルで3Dプリンターを作るE-Waste 3Dプリンターをご紹介。
E-Waste 3Dプリンター動画
パーツの80%をリサイクル部品でトータルコストは約60ドル
このE-Waste 3Dプリンターを考えたのは、世界中からDIYのアイデアが集まるコミュニティサイトInstructables.comに投稿されたもの。
Instructables.comは2005年から開始されたMITメディアラボ初の巨大コミュニティサイトで、さまざまなアイデア製品や3Dプリンターを使った電子工作など、数百万点にも昇るDIYキットが公開されている。
このE-Waste 3DプリンターもこのInstructables.comに投稿されたものだ。英文だが、必要な部品と詳細な組み立て方が掲載されている。そこには10段階のステップに分かれており、ほとんどのパーツ類を既存の電子部品から取ることができる。
必要なパーツ類は、ほぼ80%はリサイクル品から調達することが可能で、CD、DVD、フロッピードライバーから、モーターを3個抽出、パソコンの電源ケーブル、メスコネクタ、熱収縮チューブ、いくつかのCNCエレクトロニクスを用意すれば事足りる。新たに購入しなければならないのはNEMA 17ステッピングモータやArduino、押出機の部品、ボディを構成するアクリルパネルなどでその価格はおよそ60ドル(約7000円)程度とのこと。
主な手順は、1)基本的にはパーツを集め、2)Aeduinoを使ってファームウェアを構築、3)プリンター制御ソフトウェアを構築、4)電流強度調整、5)レーザーカッターでアクリル板をカット、ボディを構築、6)X軸、Y軸、Z軸の校正、7)押出機の取り付け、という流れだ。
まとめ Arduinoと3Dプリンターを知るには最適な電子工作DIY
このE-Waste 3Dプリンターを作るためには、はんだづけや、Arduinoのプリンター制御ソフトウェアのインストール、レーザーカッターの使用などが必要だ。通常の一般的な電子工作よりもはるかに複雑で手の込んだ作業が必要になるが、本格的にArduinoによるモノづくりを学ぶ初心者には最適な取り組みなのではないだろうか。
Arduinoや電子工作によるDIYはまさにこれからのモノづくりに大きな影響を与え始めている。プログラミングや3Dプリントなどのテクノロジーは、これまでの超専門的な技術から、徐々により多くの人々が使いやすい、簡単なものになりつつある。
こうしたテクノロジーの民主化は、より多くの人々にクリエイティブなものに挑戦する機会を与えるだろう。こうした点から見てみると、このE-Wasteによる3Dプリンターは入門として最適な電子工作DIYだ。
3Dプリンターはもっと高性能なものが登場してきていることから、性能は期待できないとはいえ、組み立てて使用することで、新たな製品開発の試作につなげることができる。
電子機器の性能を左右する、はんだの重要性についてはこちらをどうぞ
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