ワークラボ八ヶ岳がオープン。スワニーの新製品を生み出すエコシステム

価値創造経済を生み出すワークラボ八ヶ岳

人口減少が経済成長に与えるインパクトはさまざまだ。GDPの減少はいう間でもなく、経済のカタチも違ったものが求められる。

特に人が少なくモノが余った現代では、大量生産大量消費を想定したビジネスではなく、小規模でも新たな価値を生みだし、人々の生活を豊かにするモノやサービスが求められている。言うなればイノベーション主導の価値創造経済といってもいいだろう。

そんな価値創造経済の育成には、アイデアを形にし、イノベーションを起こす“場”が必要だ。

また、スタートアップやベンチャー企業を支援し育てるエコシステムが求められる。今回は、そんな新たな成長を生み出す核となるワークラボ八ヶ岳で、有限会社スワニーが仕掛ける新たなモノづくりの動きをご紹介しよう。

イノベーションが生まれるエコシステム

ワークラボ八ヶ岳は、長野県茅野市がJR茅野駅前ビル・ベルビア2階に3月30日にオープンしたコワーキングスペースだ。

茅野市の駅から直結のコワーキングスペース。新たな産業が生まれる拠点として始まった。

コワーキングスペースとは、オフィスや会議室、打ち合わせスペースなどを共有する新たなスペースのこと。ワークラボ八ヶ岳では、ミーティングルーム4室に無料で利用できるフリーラウンジ、デスクスペースなどをそろえ、キッチンまで完備している。

オフィスから自由な打ち合わせスペース、会議室などが利用できる。

また、オフィスブースとワークブースは既に全16区間が完売している状況だ。このワークラボ八ヶ岳では、地元企業や都心の企業のサテライトオフィスとして機能するだけではなく、地元の大学や中高生、更には市民や別荘利用者など、さまざまな立場の人々にオープンに開放され、誰でも利用することができるのが特長だ。

企業のオフィスは満室で、さまざまな利用が期待できる。

特にさまざまな分野のアイデアが集まることで、新たなビジネスが生まれる環境が整いつつある。既にこうした特性を活かして、企業や学生たちによってアイデアソンなどが開催されてきている。

製品開発から試作、小ロット量産まで。スワニーのラボが登場

そして、今回このワークラボ八ヶ岳で注目なのが、有限会社スワニー(以下スワニー)の茅野オフィスである。

スワニーは、製品設計や3Dモデリング事業を中心に、製品開発と小ロット生産など幅広いサービスを提供する企業だ。特に同社が手掛ける3Dプリント樹脂型のデジタルモールド®は、ものづくりを変える革新的なソリューションとしてたびたびご紹介してきた。

スワニーのものづくりラボが登場

今回八ヶ岳ワークラボにオープンしたスワニーのラボでは、3Dプリンターを中心に、さまざまな製品開発サポートが受けられる設備がそろっている。八ヶ岳ワークラボを利用する人は、このスワニーのラボでの3Dプリントによる試作開発、小ロット生産など手頃な価格で利用することが可能となる。

手頃な値段で3Dプリントが利用可能

ストラタシスもスタートアップを支援

ここでは、さまざまな方式による3Dプリンター7台に、切削加工機2台、小型射出成型機1台、更には電子回路のプリント基板システムまでそろっている。

電子回路のプリントも可能

特に、このスワニーのものづくりラボでは、スタートアップの支援に賛同するストラタシスから、3Dプリンターをはじめとしたさまざまなツール類が提供されている。

例えば、3Dプリンターでは、手軽なFDMタイプのデスクトップ3Dプリンターが3台に、産業向けのハイエンド3Dプリンターが2台と、ことなるニーズに対応する異なる方式のシステムがそろう。

ストラタシスもスタートアップ支援に乗り出している。デスクトップ3DプリンターのMakerBotが3台配備

中でも注目なのが、PolyJet方式の3DプリンターObjet260 Connex3だ。Objet 260 Connex3は、カラー、マルチマテリアルの造形が可能なハイエンド3Dプリンターで、硬質材料から、ゴムライク、ポリプロピレンライク、高耐熱、生体適合樹脂まで幅広い材料を使えるのが特長の一つ。

ストラタシスのハイエンド3DプリンターConnex 3。マルチカラーマルチマテリアルが利用できる

特にABS樹脂の特性を再現したデジタルABSでは、3Dプリント樹脂型であるデジタルモールドを作ることができる。

このストラタシスの3Dプリンターによって、スワニーのものづくりラボでは高品質な造形モデルや機能性プロトタイプ、更にはデジタルモールドを作り、射出成形機で小ロット量産まで一貫して行うことができる。

射出成型機も配備し、デジタルモールドが利用できる。

こうした豊富なツールがオープンに利用できる施設としては他にはない特長である。

進化するデジタルモールド。表面仕上も向上

デジタルモールドも、ここではさまざまなタイプのデジタルモールドを利用することができる。ちなみにデジタルモールドは、ストラタシスのPolyJet 方式の3DプリンターConnexシリーズや、Stratasys J750を使い、デジタルABSという材料で作ることが出来る樹脂型のこと。

デジタルモールドで小ロット量産にも対応

100個や数百個程度の小ロット量産を行うことができ、金型よりもはるかに低コストで、型を作ることができる。

最近では、このデジタルモールドがさまざまな形で進化を遂げており、アルミ型との組み合わせでロット数を増やしたり、カスタマイズ量産を実現するハイブリッドモールドとしての使い方や、プレス成形に対応したデジタルモールド・プレスという手法も登場している。

切削加工機も導入され、アルミ型、デジタルモールドの品質UPも実現

更に、ここでは、切削加工機を使うことで、デジタルモールドの表面を研磨し、アルミ型レベルの表面仕上げや精度を実現している。これによって作り出された成形物は、まるでブラストをかけたようなマットな美しい仕上がりになる。

デジタルモールドで作られたサンプル展示

スワニーのスタートアップを生み出すものづくりプログラム

スワニーは、この八ヶ岳ワークラボの施設を使い、更に画期的な取組に乗り出そうとしている。それがスタートアップを生み出すものづくりプログラムの開催だ。このプログラムは大きく分けて二つに分けることができる。

第一が、3Dプリンターなどの最新のデジタルツールを使ったモデリングや設計方法、試作などのものづくりセミナーだ。

そして第二が、この八ヶ岳ワークラボのコミュニティ機能を活かした、スタートアッププログラムである。

ものづくりセミナーで、デジタルツールを実践的に学ぶ

第一のワークラボ八ヶ岳ものづくりセミナーとは、スワニーのラボに配備されてある設備を使って、デジタルものづくりの実践的な手法を学ぶことができる。

3Dプリンターは手軽なデスクトップタイプからデジタルモールドまで作れるハイエンドモデルまでそろっているが、ここでは3Dモデリングの習得から、3Dプリンターの知識、更には試作の必要性まで、最新のデジタルツールを実際に使いこなすことで、デジタルものづくりの実践と基本を習得するという内容だ。

3Dモデリングでは、Fusion360を使い、コマや、ハンドスピナー、リンク・カム機構といった設計を行い、製品設計の手法を学んでいく。

また、既に作りたい製品があるユーザーも利用することが可能で、その場で3Dモデリングを行い、試作から小ロット量産まで行うことが可能だ。

スタートアップイベントで商品化、新たな産業創出を目指す

更に、スワニーではこの八ヶ岳ワークラボの施設を使い、新たな新商品を生み出すスタートアップイベントの開催を計画している。

このイベントでは、八ヶ岳ワークラボの特性を活かして、ここに集まる企業や大学、研究機関、学生たちとアイデアソンを開催し、新たな製品開発を行うというものだ。

このスワニーのラボでは、既にご紹介したように、製品開発から試作、小ロット量産まで実現できるシステムが整っており、更に、長野県にあるさまざまな企業とのネットワークも持っている。

このスタートアップイベントの面白い点は、単純にアイデアだけを出すだけではなく、設計、試作、量産まで行い、更には自分たちで価格を決め、市場調査を行い、販売まで行うという点にある。

まとめ 新製品を生み出すエコシステム

八ヶ岳ワークラボにおけるスワニーのラボは、新たなものづくりを生み出す本格的な場所になりつつある。

従来、3Dプリンターなどを配備するだけで、ご自由に使ってくださいという場所は存在したが、このワークラボのように、デジタルものづくりの基本から実践まで習得できて、更には豊富なネットワークにより新製品開発のプログラムまで参加できる場所は存在しなかった。

特に、この施設の中でもデジタルモールドは、低コストで手軽に小ロット量産が可能なことから、新製品開発の際のテストマーケティングなどにも最適である。

また企画から開発、試作、量産、販売までをプログラムを通して行うことから、より新製品の精度を上げ、第二第三の製品化に結び付けていくことも可能だ。新製品を生み出す本格的なエコシステムとして真価を発揮しそうだ。

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