CESで3Dプリンターに新たな分野が登場
世界最大の家電見本市インターナショナルCESでは、新たな新製品や新技術を使った製品が登場する。そんな家電見本市の中でも、とりわけ新技術として注目されるのが3Dプリンターの分野だ。既に各メーカーやソフトウェアの企業が多くの新製品のリリースを行っている。毎年新たな機能やこれまでになかった性能を持つ新機種が登場することから一躍注目を集める分野だが、本日ご紹介するVoxel8もそんな新たな時代の電子機器といっていい。
特許切れによって一気に普及したFDM熱溶解積層法の3Dプリンターだが、Voxel8はただのFDM3Dプリンターではない。それはまさに新時代の製造技術の始まりを感じさせてくれるものだ。本日はプラスチックの物体に電子回路を内蔵したものを作れるマルチプリント対応の3DプリンターVoxel8をご紹介。

導電性インクで電子回路をPLA樹脂に内蔵できる3Dプリンター
この電子回路を内蔵した物体を作れる3DプリンターVoxel8は、一言でいうとエレクトロニクス製品をそのままプリントしてカタチにする機械といってもいい。例えば通常電子機器は性能や機能を発揮させる基板部分と、外側を覆う筐体の部分で分れている。製造現場やそこに求められる技術も全く異なる技術で、別々のラインで製造されアッセンブルされるというのが今のエレクトロニクスの製造現場だ。
しかし、このVoxel8は、1台の機械で筐体であるプラスチックの物体も作れば、同時にその筐体内に電子回路を組み込むことができる。その仕組みは4種類のPLAフィラメントと10個の導電性インクカートリッジを組み合わせるというもの。PLAフィラメントで物体を作りその内部に高い導電性インクで電子回路図を組み込むという方法だ。
通常の物体はFDM方式でPLA樹脂が積層され、電子回路を内蔵する際にはもう一つのノズルから導電性インクがプリントされ、電子回路図が描かれる仕組み。ちなみに使用される導電性インクは現在一般的に使用されている導電性フィラメントの5000倍電気を通す機能があり、エレクトロニクス、電子機器の心臓部ともいえる導電性はしっかりと担保できるとのことだ。



Voxel8スペック
- サイズ:10cm×15cm×10cm
- 印刷技術:FFF
- レイヤー解像度:200ミクロン
- フィラメント互換性:1.75mm
- 導電性トレース幅:250ミクロン
- サポートされているファイル:OFF、 AMF、STL、PLY、OBJ
- 抵抗率:5.00×10-7Ω-M
- シルバーインク硬化時間:5分
- 対応樹脂:PLA樹脂×4
- 導電性インクカートリッジ:10個
- 接続:USB、WiFi対応
- 価格:8999ドル
オートデスクの電子デバイスを3Dプリントするための専用ソフトウェア
このVoxel8の対応ソフトウェアは、オートデスクのプロジェクトワイヤーと呼ばれる新たなソフトウェアを使用する。このプロジェクトワイヤーは3Dプリンターでつくることができる電子デバイス専門のデザインソフトで、いわば物体の内部に電子回路を組み込むためのソフトだ。このオートデスクのプロジェクトワイヤーはCADモデルの内部に、配線や部品などの配置自由に簡単に書き込むことができる残心なソフトウェアで、この3DプリンターVoxel8とオートデスクのプロジェクトワイヤーを使えば、電子デバイスの試作品が簡単に作ることが可能だ。

まとめ エレクトロニクスの試作開発が飛躍的に拡大
この新たな3DプリンターVoxel8の登場とオートデスクの新たなソフトウェアプロジェクトワイヤーの登場は、今後の製品開発にとってどのような影響を与えるのだろうか。3Dプリンターは物体をデータからダイレクトに生成する技術だが、それに電子回路を組み込むことができれば電子機器やエレクトロニクス製品の試作品が作れるようになる。
もちろん、現代に使用されている多くの電子機器はその高機能性から回路設計も複雑化しており、実際に生産する際には、高度な接合技術とナノレベルでの精度が求められる。しかし、新製品開発という分野に電子デバイスが加わることは、今後の起業家やメイカーズたちを世に送り出すには格好の機械なのではないだろうか。
回路図を描くのも驚くほど簡易化され、そしてそれが試作品として筐体と同時に作り出すことができればエレクトロニクスの試作開発のスピードは飛躍的に向上することになる。少なくとも未来の製造を感じさせてくれる機械だと言えよう。