電子回路の試作ができるプリンターVoltera V-One

電子回路のオンデマンド製造とその影響力

3Dプリンターと同様、今注目を集めている技術が電子回路の試作用プリンターの開発だ。電子回路も物体と同様、1個単位で作ることはできない。電子回路を作る場合にはプリント基板と言われる回路図がプリントされたボードに、無数の細かい電子部品を配置し、リフロー炉と言われる大型の機械で接着する。この工程は、一定数量が無ければコスト的にも行うことができない。もし試作用の回路基板を外注するとすれば最低でも一週間以上はかかる。また自分で作ることもできるが、その場合は、非常に手間がかかるだろう。

回路図が複雑になればなるほど、試作品の製造は非常に困難な作業になるためだ。例えば、プリント基板と言うと緑色のボード状のものを想像されると思うが、実はあのボードは何層にもなっており、複雑な回路図が多層化されたものになる。現代のエレクトロニクス製品の多くは、スイッチを入れれば明かりがつくといったシンプルな機能ではなく、多種多様な機能が備えられているため、その機能を再現するために当然電子回路も複雑な構造になっている。

このように、電子回路の試作品を作るという行為は極めて大変な作業だが、もし1個単位でつくることができれば、エレクトロニクスの製品開発のスピードは大幅に向上することになる。それこそ3Dプリンターの革命と同じレベルのインパクトがあるだろう。だが、この電子回路の試作用プリンターの開発は、徐々に現実のものになりつつある。

回路図のプリントから実装まで自動化する機能

今回新たに、この画期的な技術をリリースしたのはカナダのVOLTERAという企業だ。VOLTERAが開発した電子回路の試作プリンターは、物にもよるがわずか15分程度で電子回路の試作を可能にする。その機能は単一のボードではなく二層のプリント基板の試作製造が可能だ。

動画等は公開されていないが試作を行うためにはいくつかのステップが必要になるという。第一は専用のVOLTERA専用ソフトウェアで回路図を作り、ボードに導電性の銀ナノインクでプリントする。その後、回路図がプリントされた基板に、ユーザーはペースト状の「はんだ」と、電子部品を配置、その後プリンターに搭載されているリフロー炉機能で熱してくっつけるという仕組みだ。公開されている説明や画像ではプリンターの度の部分がリフロー炉になるのか不明だが、一つ一つ「はんだ」づけすることなく、プリント基板にパーツ類を接着することができる。

現在このVOLTERAは資金調達の準備段階であるが、1プリンターの値段は1499ドルという驚異的な安さだ。販売はアメリカを対象にしている。もし、回路図のプリントだけではなく、電子部品の配置と「はんだ」づけが自動化されれば、ハードウェアの設計を加速化する非常に画期的なデバイスになるだろう。

試作で作られたLEDライト
導電性の銀ナノインクで回路をプリント

まとめ 気になるのは接合レベル

現在このVOLTERAは、資金調達の準備段階に入っている。もし、1個単位から電子回路の試作品をつくることができれば、エレクトロニクス製品の製品開発のスピードは大幅に向上することになる。最も気になる点は、ソルダーペーストと電子部品を接着する実装の部分である。エレクトロニクス製品の不良や性能は、ほぼ全てがこの部品の実装の部分。無数にある電子部品のうち、一つでも正しく接合できていなければその製品は機能しなくなる。そうした面からも「はんだ」の接合レベルがどの程度正確に行われるのかは非常に興味深い。いずれにせよ、その後の公開情報が気になるところだ。

電子機器のクオリティを左右する、はんだの重要性についてはこちらをどうぞ

i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。