3Dプリントやフライス加工など8種の機械加工ができる巨大ロボットVDK6000

労働力人口の減少と代替労働力の確保

日本は世界一の少子高齢化の国だ。一人の女性が子供を産む数を計算した合計特殊出生率の世界ランキングでは179位1.4人とダントツに少なく、高齢化はどんどん進んでいる。こうした状況は、とりわけ働く世代、生産年齢人口の減少を意味し、純粋に国の経済力を担う労働力が減少することになる。

労働人口の減少は必然的に経済力の低下を意味し、今後の数十年で労働力の代替確保が課題となる。こうした問題から、外国人労働者を受け入れる体制を整えたり、出産した女性の社会復帰を促進するといった政策は最重要課題だ。こうした政策と共に、今新たに注目されているのが製造現場におけるロボットの導入だ。

例えば、食品メーカーやレストランといった食品の製造現場においてはロボットの開発と導入がかなり進んでいる。こうした動きは食品以外の分野でも我が国においてはどんどん加速していくだろう。

下記は厚生労働省が発表している労働力人口の推移だが、2030年には15歳から65歳以上の労働人口は25年前の1990年よりもさらに低くなる。また、年代別で見てみると最も働き盛りの30歳から59歳の人口が最も低く現在から約340万人近くも減少することになる。

こうした状況から、各産業における代替労働力の確保が急務で、ロボット開発も進むことが伺える。そんな中、3Dプリンターや3Dスキャン、フライス加工といった、製造現場で多用される8種類の加工方法を搭載した巨大ロボットが登場している。

厚生労働省の労働力人口の推移

8種類のデジタル・機械加工を搭載した巨大ロボット

今回発表された8種類のデジタル・機械加工等を搭載した巨大ロボットはこれ1台でほぼ全ての製造を行うことが出来る驚きの機能を搭載している。開発したのはアメリカのロボットメーカーFRE社。

搭載されている機能だが、レーザー溶接による金属粉末の3Dプリント、3Dスキャン、フライス加工、プラズマ溶接、超音波検査ツール、研磨・切削加工、導電性回路プリント、コールドスプレー技術の8つだ。

よく1台の機械にこれだけの異なる機能を搭載したかと思うが、どのように管理するのだろうか。実は、これらの異なる機能だが、全て3 次元 CAD 設計ソフトの SolidWorksをベースに管理されることになる。また、ユーザーによって必要な機能をカスタマイズして提供するとのことだ。

その場合もSolidWorksのすべてのツールに対応しているため、カスタマイズが容易だとしている。下記はこの巨大ロボットVDK6000の動画だ。

巨大ロボットVDK6000の動画

巨大な空間でさまざまな機能に切り替えができる

基板のパターン製造も可能

3 次元 CAD 設計ソフトの SolidWorksで管理

面白いのはコールドスプレー技術も搭載している点だ。コールドスプレーは以前にもご紹介させていただいたが、GEなどの一部の最先端製造技術を搭載している企業でしか使用されていない技術。超音速ガスジェットスプレーで、極めて微細な金属粉末を物体に吹き付けて金属パーツの形状をカスタマイズするものだ。このVDK6000はこのコールドスプレーでの加工も可能だ。

GEのコールドスプレー技術

GEのコールドスプレーの記事はこちらをどうぞ

 まとめ

今回ご紹介したVDK6000に限らず、3Dプリンターや、マシニングセンタ、NC旋盤といったコンピュータ制御で製造する機械は、人間の労働によるコストに比べて、はるかに安価にその作業を提供することができる。また同時に、人間の能力とは違い、全てを均一化し全く同じモノをデータ通りにつくることができる。

こうしたデジタル加工技術の進歩は、多くの企業にメリットをもたらす事になる。しかしその一方で人の手によって作り出される微細な感覚というものも絶対的に必要だ。例えば、コンピューターのモニター状で見るのと、実際に機械で自動加工したものでは全然違うということが多い。

そういう微妙な違いを無くしたり、見るものと触るものをアジャストすることができるのは、人間の感覚しかない。今後労働力人口が減少し、コスト効率が求められる時代の中、こうしたロボットの導入ということは必要だが、うまく人の手による加工方法と共存する方法が、いいものをつくるという点では欠かすことができないのかもしれない。

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