電子回路基板の試作を可能にするマシーン
3Dプリンターは樹脂や金属などの物体を試作することができるマシーンだが、同じように開発が盛んなのが、電子回路基板の試作マシーンの開発だ。電子回路とは言うまでもなく、電気で動く製品の心臓部とも言えるパーツで、機械を動かすには無くてはならない部分。
この電子回路は、回路図が組み込まれたプリント基板という緑色のボードが一般的だが、これは基板メーカーでなければつくることは難しく、1枚単位から試作するのは難しい。おし電子回路を試作しようと思えば、ユニバーサル基板などのボードに電子部品を配置し、1箇所1箇所ずつ手はんだ付けをしなければならない。
しかし、3Dプリンターと同じようにプリント基板がオンデマンドでデータから1枚ずつ作ることができれば、製品開発のスピードをはるかにスピードアップすることができる。こうした点を受け、いわばプリント基板のラピッドプロトタイピングを可能にするプリンターの開発が行われているが、本格的な開発状況が公開されている。本日は以前もご紹介した回路基板のプリンターVoltera V-Oneの開発状況をご紹介。
導電性インクで2層のプリント基板を試作可能
Voltera V-Oneは現在クラウドファンディングキックスターターで資金調達を開始している。既に目標金額の7万ドルを超える24万ドルの調達に成功している状況だ。以前ご紹介した際には導電性インクを使い15分程度でプリントできるというレベルであったが、今回の公開では、更に突っ込んだ機能まで紹介されている。
あらたに公開された機能では、2層のプリント基板を試作できることが発表されている。1枚目に導電性インクで回路図がプリントしたあとに、カートリッジを絶縁性のインクカートリッジに付け替えることでそれを可能にしている。これにより、複雑な電子回路も2層までならば対応できるというわけだ。
下記はあらたVoltera V-Oneの動画になるが、プリント中の模様が公開されている。また、現在は動画では公開されていないが、このプリンターにリフローの機能を追加することを計画しており、現在開発中にあるとのことだ。リフローとは、回路図が描かれた回路基板に電子部品とペーストはんだを接着し、高音で熱し電子部品を取り付ける工程のことをいう。
本来はリフロー炉と言われる巨大な機械を使用し、そこに回路基板がプリントされたプリント基板を送り、ペーストはんだと電子部品を装着し、上下から熱を加え実装するという工程になる。にわかには信じ難いが、もしこのV-Oneにリフロー炉の機能が搭載されれば、より精密な電子機器の試作品をつくることができるだろう。
Voltera V-One動画
まとめ 電子回路と筐体両方がデータから試作できる時代に
3Dプリンターがデータから物体を造形できるのと同様、このVoltera V-Oneもデータから回路基板をプリントすることができる。この二つの技術が合わさることで、電子機器製品の開発スピードは飛躍的に向上するだろう。また同時に電子機器製品のベンチャー企業やスタートアップなどにとってはより低コストでプロトタイプをつくることが可能になる。
こうしたラピッドプロトタイピングに特化したマシーンの開発が各地で行われており、中にはvoxel8やグラフェンの3Dプリントのように樹脂の筐体に電子回路を内蔵する開発まで行われている。こうした物体と電子回路の融合が機能し始めるのはもう少し先で、現状の電子機器では、プリント基板のような複雑な回路基板が必要になる。
そうした点からすると、Voltera V-Oneのような2層化まで実現できるプリント基板の試作マシーンはより役割が高まるのだろう。しかしあくまでも、試作の範囲に留まるレベルであり、最終品の製造とは別個に考える必要がある。
電子機器のクオリティを左右する、はんだの重要性についてはこちらの記事をどうぞ
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