UPSはわずか10ヶ月で3Dプリントサービスを100店舗に拡大

全米100店舗に拡大する3Dプリントサービス

3Dプリンターの郵便物流サービスにもたらす影響は甚大だ。物流サービスは送る物の重量と距離によって値段が変わるが、3Dプリンターであればコストはゼロ。

将来的に本格的な3Dプリント生産が普及すれば、郵便物流の規模やサービスは全く異なる物になるだろう。

基本的に企業活動は時代に即したものでなければ必ず衰退が待っているが、そんな3Dプリント時代を見据えていち早く動き出している企業も多い。

UPSもそんな企業の一つだ。日本ではキンコーズのサービスでFedexの方がよく認知されているが、UPSもFedex同様世界展開する国際的な運送会社。その数は全世界200ヵ国におよび、日本ではヤマト運輸と提携している。

ちなみにFedexもUPSもアメリカ発の企業だが、両者ともにいち早く3Dプリントサービスを開始している。Fedexは日本でもプリントサービスのキンコーズがり、既に各店舗で3Dプリントサービスを行っているが、UPSはアメリカ本土で本格展開を開始した。

以前の記事、「拡大する3Dプリントサービス! UPSストアが3Dプリンタ事業を開始」でUPSの3Dプリントサービスの開始をお知らせしたが、サービス開始から約10ヶ月経過しいよいよ本格的な参入に踏み切ったようだ。

中小企業をターゲットにしたサービス

昨年10月にUPSが3Dプリントサービスを開始したときは試験的なものにとどまるものであった。

しかし、全米4300店舗のうちわずかニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴなど6店舗から開始したこのサービスは、ここに至って100店舗まで拡大を果たしている。4300店舗のうちの100店舗だからまだ本格普及には至っていないが、それでもこの急増ぶりはすさまじい。

導入されている3DプリンターはストラタシスのFDMタイプの高性能3DプリンターuPrint SEプラスで、高解像度のABS樹脂のプリントが可能だ。

このストラタシスの3Dプリンターを導入する目的は、UPSがメインターゲットとして中小企業をとらえているためだ。

昨年10月にこの3Dプリントサービスを開始したきっかけとなったのが、中小企業に対して行われた3Dプリンターに関するアンケート。当初UPSの顧客である多くの中小企業経営者にオンライン上でアンケート調査を行ったところ、多くの経営者が今後3Dプリンターによる試作や販促用のプロトタイプ作成に興味を示していることがわかった。

そして試験運用の6店舗で実際のサービスを開始したところ、幅広い企業から使用され3Dプリントサービスを求める顧客の数が増えていることを感じ、サービス拡大に至ったという。確かに中小企業の立場に立ってみれば高性能な3Dプリンターを導入するだけでもかなりのコストがかかるため、こうしたUPSのような3Dプリントサービスは必要に応じて利用できるため、多くのニーズにマッチしているのだと思われる。

UPSは全米100店舗に3Dプリントサービスを拡大

UPSで導入されているストラタシスのFDMタイプ3DプリンターuPrint SEプラス

ストラタシスの3DプリンターuPrint SEプラスのスペック

  • 対応素材:ABS樹脂 アイボリー、ホワイト、ブロー、蛍光イエロー、ブラック、レッド、ネクタリン(桃色)、オリーブ、グレー
  • 造形サイズ:203mm×203mm×152mm
  • 積層の厚さ:0.254mmまたは0.330mm

UPSの3Dプリントサービス動画

まとめ 物流業界の3Dプリント進出は世界的な動き

UPSの3Dプリントサービスは今後さらに拡大を続けるに違いない。明確な計画が発表されているわけではないが、おそらく将来的には全米の全ての店舗に限らず、全世界200ヵ国での展開を視野に入れているのではないだろうか。

どんな小さいパーツや商品であれ、遠いところにモノ送るのには送料がかかる。中にはモノや場所によっては、商品自体の値段よりも物流コストが高くつく場合もある。

しかし、3Dプリントサービスを利用すればデータを送り現地でプリントするという対応が可能になるため、そうした物流コストを削減することが可能だ。今はまだ3Dプリンターで作れる物は限定的だが、素材や製法が多角化することで、さまざまなモノがデータから作られるようになるだろう。

そのような時代は徐々にだが、着実に近づいている。UPSやFedexがいち早く3Dプリントサービスに進出していることはこうした時代の先を読んでいるからに他ならない。またこうした着眼点を持つのは企業だけではない。

政府レベルでもアメリカ、シンガポールやフランスなどは将来くる3Dプリント時代に自らの産業を適合させるために3Dプリンターの研究開発に打ち込んでいる。アメリカやフランスでは郵政公社が3Dプリントサービスを開始し始めたり、物流拠点として組立加工産業で成り立っているシンガポールは巨大な3Dプリントセンターを建設した。

このような先進的取組を行なう企業や国は、事業の運営にとって最も必要な条件が時代との適合性だと重々承知しているのだろう。

物流事業と3Dプリントサービスの記事はこちらをどうぞ

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