9パーツで構成されるプラスチック製無人航空機
世界最大の航空機会社であるボーイングとイギリスの国立大学シェフィールド大学の先進製造プロセス研究センター(以下AMRC)が産学連携のプロジェクトとして無人航空機の3Dプリント製造を行った。
かねてから航空機製造の分野では3Dプリント技術の応用や様々な試みがなされているが、目的の一つは、3Dプリント技術を使うことによる、新たな機体のデザインや、開発を目的としている。今回設計された無人航空機はストラタシスの高性能3DプリンターFortus 900mcで作られたものだ。
Fortus 900mcはストラタシスの3Dプリンターの中でも最も高速で、精密な3Dプリントが可能な機器。また、プリントできる大きさも現行の3Dプリンターの中ではかなり大きな部類に属し、914㎜×610㎜×914㎜までのサイズが可能だ。
材料も9種類から選択可能だが、今回ボーイングとシェフィールド大学が使用したのはABS-M30という熱可塑性プラスチックになる。今回の無人航空機はこのABS-M30のプラスチックによってなんと、わずか9つのパーツから構成されているという仕組みだ。
無人航空機
飛行動画
無人航空機の空気抵抗
ストラタシス社のFortus 900mc
品質改良がスピードアップ
今回のボーイングとシェフィールド大学が行った無人航空機の製造時間はすべてのパーツを製造するのにわずか24時間に過ぎない。これは3Dプリンターを使わないで製造した場合、120時間もかかるという。
さらにABS-M30は熱可塑性プラスチック材料の中でもコストが最も安い部類に属しているため、圧倒的な製造に要するリードタイムを削減するだけではなく、コスト削減も果たすことにつながっている。ちなみに完成体の総重量はわずか2kg以下で、翼の全長は1.5メートルだ。
また、今回の試作はリードタイムとコスト削減を達成しているだけではない。3Dプリント製造は製品開発における品質向上を顕著に示すものだ。この試作品をテスト飛行したところ、高速で優れた安定性を機体にもたらしている。
また、この成功によって、さらに機体の最適化を行うことが可能いなるという。将来的には、GPSによる遠隔操作を行い、震災時における被災地の生存者の捜索支援などに利用したい考えだ。
ちなみにシェフィールド大学は100年以上の歴史を持つ伝統的な大学で、ノーベル賞受賞者も過去に5人も排出している大学。特に先端技術の研究において世界の中でトップクラスに入ると言われている。
まとめ
今回の無人航空機の製造で見られる3Dプリンターのメリットは、何と言っても性能向上が従来よりもはるかに早く、安く、簡単にできることを示している。
3DプリンターのFDM方式という方法はプラスチックを積層して物体をかたちづくることから、金型をわざわざ作らなくても、データ通りの物体を製造できる。そのため、金型に要するコストを削減したうえで、性能を発揮させるための設計がそのまま物体に反映させることが可能だ。
また、今回の例では製造に要するリードタイムが5分の1に短縮することができている。結果としてコスト削減と品質向上、リードタイムの削減という3Dプリンターの持つメリットを最大限生かした取組であった。
航空機産業は機体の軽量化といった面から3Dプリンターをパーツ製造に使用する研究開発が着々と進んでいるが、製品開発や試作品の実験などでも大きな力を発揮している。
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