トートバッグの歴史

バッグは文明発展の基盤ともなった道具と言われている。あらゆるモノを保管し、持ち運び、輸送を可能にする道具として、古代から幅広く使用されてきた。その歴史は道具の歴史の中においても極めて古く、紀元前3000年の古代エジプトの時代から、その使用が確認されている。当時は動物の皮を延ばして変形させ袋状に加工していたが、時代が進みテクノロジーが発展するに伴って、あらゆる素材で作られるようになった。ナイロンや塩ビ(PVC/ポリ塩化ビニル)などの合成樹脂をはじめ、紙や綿、麻といった天然素材、また、最近では軽くて丈夫な最先端素材である炭素繊維を使ったバッグも登場している。その形状や用途も多岐にわたり、硬い箱型のアタッシュケースから、旅行には必須のキャリーバッグ、今ではビジネスシーンにも浸透しているリュックサックなど、あらゆる物を運べる種類が登場している。また、現代ではバッグは、単なるモノを運ぶ機能以外に、ファッションやライフスタイルを象徴するプロダクトとしても広く浸透している。

“Tote”は持ち運びに特化した多用途バッグ

その中において、“持ち運ぶ”という機能に特化し、最も多目的で使用されるバッグが今回ご紹介するトートバッグである。トートバッグは英語では“Tote bag”と書き、直訳すると手提げ袋という意味になる。その名の通り、ものを入れて持ち運ぶというシンプルな機能に特化したバッグで、形状は、袋に持ち手が二本ついているに過ぎない。ちなみに”Tote“そのものの意味は「持ち運ぶ」「背負う」という意味を持ち、その語源は、低地ドイツ語(ドイツ北部の言語)の”tute”(「バッグという意味」)から派生したとされている。この“Tote”の語源から推測すると、おそらくトートバッグと正式には言わなくても、手提げ用のバッグは広く用いられていた可能性があり、1900年ごろから、バッグのことを“トートバッグ”と呼ぶようになった。

100年以上の歴史を誇るLLBeanが開発

バッグそのものを指す言葉として用いられていたトートバッグを、一つのジャンルとして確立した企業がLLBeanだ。LLBeanは、今から100年以上昔、1912年に設立されたアウトドア用品のメーカーでレオン・レオンウッド・ビーンによって設立された。ちなみに会社名のLLBeanとは、彼の名前Leon Leonwood Beanを略したもの。創業者レオン・レオンウッド・ビーンは、アウトドア愛好家であるとともに、9歳からビジネスに関心を示した発明家でもある。LLBean創業のきっかけともなった製品が防水ブーツで、これは、ハンターや漁師として活動していたビーンの、ブーツへの不満から生みだされた製品だ。当時のアウトドア用のブーツは水に簡単に浸されるもので、この不都合を解決するために開発された防水ブーツがLLBeanの最初のプロダクトである「Bean Boot」(メイン・ハンティング・シューズ)である。この防水ブーツは、上部が軽量の革で、下部にゴムを組み合わせることで水の浸入を防ぐもので、当初はカタログ通販によって販売が行われた。ターゲットは全国の狩猟免許を持つ人で、その後兄弟で自らの地下室にブーツショップを開設、現在では、創業以来のブーツ類だけではなくバッグやテント、アパレルなど多数のアウトドア製品を展開している。

氷を運ぶために作られた「Bean’s Ice Carrier」

さて、トートバッグが初めて世の中に広く知られるようになった存在が、1944年に開発された「Bean’s Ice Carrier」だ。「Bean’s Ice Carrier」はその名の通り、氷を運ぶバッグで、冷蔵庫が存在しなかった当時、氷を運ぶためのバッグとして一大人気を博した。LLBeanの創業者レオン・レオンウッド・ビーンは、自らが生まれた育った地でもあるメイン州に本社を構えていたが、当時メイン州では、冬に凍った湖の氷を切り出して倉庫で保存し、夏季には木製冷蔵庫であるIce Chest用の氷として販売するのが一般的であったという。この「Bean’s Ice Carrier」は、生地にキャンバス地が採用されており、氷が解けだしても水が染み込まないという機能から、アウトドアや海のレジャーを楽しむ多くの人々から愛用されることとなった。また、当時の冷蔵庫用の氷は重く大きいことから、「Bean’s Ice Carrier」の造りは頑丈で大きくなり、氷以外のものを運搬することに利用が拡大。暖炉の薪や野菜を運ぶといったことにも使用され、アウトドアやレジャーだけではなく、一般的な生活にまで溶け込むようになったのだ。

Coachのデザイナー、ボニー・カシンがファッションアイテムに進化

その後トートバッグは1950年代には女性の実用的なバッグとして普及し、1960年代には個人のライフスタイルに取り入れられたファッションアイテムとして進化を遂げることとなった。トートバッグをファッションアイテムに進化させたのは、アメリカのスポーツウェアのパイオニアデザイナーといわれるボニー・カシンだと言われている。ボニー・カシンは高級革ブランドのコーチ (Coach)のデザイナーとして活躍した人物で、彼女が手掛けた「Cashin Carry Tote Bags」は、スタイルと機能性を両立したトートバッグとして女性用ハンドバッグの地位を確立した。

まとめ あらゆるタイプ・あらゆる素材が登場

トートバッグはその後、アメリカのファッションデザイナー、ケイト・スペードによって更にファッションアイテムとして普及することとなった。また、現在では学生からビジネス、ファッションまで、あらゆる用途に使用される。更に世代や性別もさまざまで老若男女、幅広い層に普及している。素材もレザーからナイロンまで幅広く、価格帯も多岐に渡っている。まさにトートバッグは、その“多用途”に使えるという機能性から、バッグの中では最も普及した種類の一つと言っても過言ではない。

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