次世代製造を担う新たなマテリアルが登場
次世代製造技術として注目が集まる3Dプリント技術。アディティブ・マニュファクチャリングともいわれるこの製造技術は、クラウドをハブとすることで、サプライチェーンを変革し、マスカスタマイゼーションをもたらすと期待されている。
その次世代化の鍵を握るテクノロジーが、造形技術と材料の進化だ。特に材料の進化は、3Dプリンターで造形できるバリエーションを拡大し、その用途を飛躍的に広げてくれる。
今回はそんな材料開発の分野でも業界の最先端を行くストラタシスの新たな材料をご紹介しよう。ストラタシスは、熱溶解積層法(FDM)とインクジェットタイプのPolyJetといわれる二つの製法の3Dプリンターを提供しているが、今回登場した材料は、それぞれの3Dプリンターの表現力と用途を更に拡大することになる。
新材料「Vivid Color」とは。表現を50万色に拡大
最初にご紹介するのが世界初のフルカラー&マルチマテリアルを実現した3DプリンタStratasys J750の機能をさらに拡充する最新マテリアル「Vivid Color」だStratasys J750は、36万色の表現力を誇る3Dプリンタだが、この「Vivid Color」の登場によって、その表現力はなんと50万色まで拡大することになる。
Stratasys J750は、CMYKWの5色を配合することで、造形モデルに多彩なカラー表現を実現できるが、「Vivid Color」は、この5色のうちのMとY、マゼンダとイエローの高い色再現性を実現するために開発された材料だ。
この「Vivid Color」を使うことで、従来のカラー表現では実現することが出来なかった完成度の高いカラー表現と、透明性も実現している。
モデルのサーフェイスや解像度を向上。最終品と遜色ない仕上がり
また「Vivid Color」はカラー表現の質と幅を高めるだけではなく、ソフトウェア制御と連動することで、造形モデルのサーフェイスや解像度なども高めることができる。これにより、最終品に遜色がないアウトプットを実現することが可能となった。
製品開発のプロセスを変革する表現力
このように、「Vivid Color」がもたらすカラーバリエーションの拡大、色の高品質化、サーフェイスと解像度の向上という機能は、ものづくりの現場にどのような影響を与えるのだろうか。
第一に、製品開発のプロセスを飛躍的に向上させてくれる効果をもたらすだろう。一般的に製品が企画されてから量産工程に入るまでには大まかに、製品企画から、コンセプト策定、ラフデザイン、デザイン、試作、改良、量産といった流れになる。
この流れは製品の種類によって異なるが、ほぼ全てのプロセスにおいて、モックアップや試作品など何らかの形でアウトプットされるのが一般的だ。このアウトプットは、従来は、切削や塗装といった手段で作成されていたが、Stratasys J750と「Vivid Color」はこの工程を激変させる力を持っている。
例えば、「Vivid Color」を使えば、コンセプト策定の段階から、最終品さながらのクオリティのモデルを作ることが出来る。また、デザイン案の検討や試作、改良の段階でも同様だ。しかも、データがあれば3Dプリンタで出力するのにわずか1日でできる。
これは切削と塗装にかかる時間に比べはるかに短い期間で、必然的に製品開発に要する期間を圧倒的に短縮してくれることにつなげられるのだ。これは製品開発の期間が決められているメーカーにとっては、開発そのものの幅を広げ、よりよい製品開発を実現することを意味している。
透過性機能の検証にも力を発揮。自動車業界が注目
更に、「Vivid Color」の色調と透明性のクオリティは、機能検証の面でも新たな価値を提供している。
例えば、下の写真のような自動車のテールランプの開発では、意匠や色の表現性だけではなく、光の透過性など、プロダクトとしての“機能”も検証が必要だ。このように「Vivid Color」では、高い透過性が必要とされる製品開発では大きなメリットを発揮する。
量産段階に移る前のカラー検証もより正確に
最後に、「高品質な色調」という効果は、量産段階に移る際にも大きな効果を発揮する。これまでは、試作段階の見た目と、量産段階での見た目を完全に同じにすることは難しかった。
塗装して忠実に近づけたとしても、質感や微妙な色は、量産で使用するものと完全に一致させることは難しい。しかしStratasys J750と「Vivid Color」であれば、試作段階から、金型量産と極めて近い色や質感を表現することができる。こうした量産工程に移る前の検証なども、より効率化し、奥深い試みができるようになるのである。
FDM 3Dプリンタの最終品製造を広げる新たな新材料が登場
今回ストラタシスが発表した新材料は、熱溶解積層法(FDM)3Dプリンタの材料もリリースしている。熱溶解積層法(FDM)はストラタシスが開発した3Dプリント技術だが、その最大の特長は、金型量産で使用される熱可塑性樹脂を使い、最終品にも使用できる造形ができる点にある。
今回登場した材料は、その幅をさらに広げ、3Dプリンティングが最も注目されるデータからの直接製造、ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリングを実現させるものといえよう。
Nylon 12CF。炭素繊維配合で軽量・高強度、金属パーツの代替品にも
今回登場した注目の材料がNylon 12CFだ。その名の通りナイロンをベースにした材料だが、チョップドファイバー、すなわち炭素繊維が35%含有されている点が最大の特長だ。
ナイロンはもともと優れた靭性と耐衝撃性に優れる特性を持つが、炭素繊維が配合されたNylon 12CFは、優れた剛性と強度も備えている。
しかも軽量性も備えており、ストラタシスのFDM熱可塑性プラスチックのなかで最高の剛性対重量比を実現している。主な用途は機能性が求められるパーツ類や、最終製品、更には治具や工具などの製造用ツーリングアプリケーションに最適だ。
更に期待が集まるのが幅広い種類の金属アプリケーションと置き換えることができる点である。
ABS樹脂に耐候性を付与したASAも登場
更に熱溶解積層法の材料として登場したのがASAだ。ASAは強度や耐久性、耐熱性に優れるABS樹脂に耐候性が強化された樹脂である。特にストラタシスが誇るハイエンドのFDM 3Dプリンタでこの材料を使用すれば、最終品として使用できる高品質なパーツを作ることが出来る。
下記は、ハイエンドFDM 3DプリンタFortus900mcとASAで作られた実寸サイズのバンパーだ。高い強度と耐候性を兼ね備えたASAならではのパーツだ。また、造形後の表面処理や塗装なども施すことが可能で、最終品のパーツ製造が現実のものになり始めている。
まとめ 自動化とマスカスタマイゼーションを促進する力
3Dプリンティングは、アドバンスド・マニュファクチャリング、すなわち次世代製造技術の中心として、今世界中の企業が注目を集めている。その理由は、3Dプリンタの進化がもたらす二つの影響力である。
第一が、自動化による効率化だ。「Vivid Color」の部分でもご紹介したが、この技術はクオリティと表現の幅が拡大すればするほど、製品開発のプロセスを効率化する。リードタイムの短縮とコストの低下は企業競争力を強化することにつなげられる。
そして第二の影響力が、最終品やマスカスタマイゼーションへの利用だ。表現力とクオリティが向上すれば、利用できる製品の範囲も広がり、より細かいエンドユーザーのニーズに応えることが出来る。この二つの特性を実現する材料が今回ご紹介した「Vivid Color」や「Nylon 12 CF」だと言えよう。
今回ご紹介した「Vivid Color」と「Nylon 12CF」は、高い強度と耐候性を兼ね備えたASA材料と合わせて、本日から13日金曜日まで、ポートメッセ名古屋 第1展示館で開催されている第3回 名古屋 設計・製造ソリューション展で展示されています。
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