「日本ものづくりワールド」が6月21日(水)から23日(金)の3日間に開催された 。この展示会は、設計製造ソリューション展、3D&バーチャルリアリティ展、機械要素技術展、医療機器 開発・製造展という4つの展示会が合わさる日本最大級のものづくりに関する展示会で、毎年、最先端のものづくりに関する技術が公開される。
今年は過去最多、2454社が出展し、3日間で88,554名もの来場者が訪れることとなった。特に、次なる産業革命として、企業競争力を飛躍的に高めるIIOT(Industrial Internet of Things)化の流れが著しい昨今、デジタルをベースにした造形技術である3Dプリントは最も注目を集める分野だ。
今回は、「日本ものづくりワールド2017」の展示から、デジタル生産へと進化を遂げる、ストラタシスの展示から連続生産のためのプラットフォーム「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」をご紹介しよう。
IIOT化が目指す究極の形態は、機械による完全オートメーション化だが、「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」は現時点でその姿を体現した一つの形と言えるだろう。
目指すは“マスカスタマイズ生産”の完全オートメーション化
3Dプリンターのこれまでの中心的な役割は、試作品の製造であった。しかし、造形技術の進化によって、その役割は徐々に“製造”へと進化しつつある。既にストラタシスのハイエンドなFDM 3Dプリンターでは、GEなどの航空宇宙産業をはじめ、自動車産業など、あらゆる業界でのダイレクト・デジタル・マニュファクチャリングが始まっている。
3Dプリンターでの“製造”が可能になれば、あらゆるモノの基準がクラウドとデジタルデータに統合され、顧客ニーズや時代の変化に合わせて、リアルタイムで進化することができる。また必要以上の在庫を抱える必要もなく、ビジネスも効率化することが可能だ。
IIOT時代のものづくりは、あらゆる生産工程(設計から製造、組立、検品など)が、センシング技術によってモニタリングされ、すべての作業工程がデジタル化されビッグデータとしてクラウドに集約される。
そしてリアルタイムに分析、“カイゼン”が行われるが、その最終形態は“人の手”を最小限にとどめた“完全オートメーション化”だ。
今回登場したストラタシスの連続生産システム「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」では、このIIOT化に対応した生産とカスタマイズを視野に入れた新たなシステムである。
複数の3Dプリンターをクラウドアーキテクチャーで一元管理
現在の3Dプリントは、いかに造形技術が進化しているとはいえ現段階では“製造”レベルであり、“生産”を想定したものではない。その最大のネックとなっている部分が造形スピードの課題だ。現在の3Dプリンターは、一つの設計データごとにプリント設定を行い、データの大きさや形状に応じて造形時間も異なる。
しかし、「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」では、独自メソッドによって“連続生産”を実現している。
この新たなプラットフォームは、複数のFDM 3Dプリンターで構成されるモジュール構造をしており、クラウドべースのソフトウェアGrabCADをベースに複数の3Dプリンターを制御、コントロールすることができる。
このクラウドアーキテクチャーでは、データが自動的に各3Dプリンターに送られ複数でプリントできるだけではなく、仮に1台の3Dプリントセルに障害が発生した場合にも、別の利用可能な3Dプリントセルにデータが送られ生産される。また必要に応じて3Dプリントセルを追加し生産能力を拡大することも可能だ。
1000個以上をオンデマンド生産する動きも
この「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」を利用することで、異なる種類のパーツを生産するマスカスタマイズも実現することが可能だ。
日本では今回初上陸だが、既に海外では導入され3Dプリンターによる“生産”が開始されつつある。例えばオークランドの先進製造技術企業FATHOMでは、「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」を導入することで、6つのプリントセルによる連続生産を実現している。
その実績は、約百個のパーツをタイムリーに生産するだけでなく、千個以上のオンデマンド生産を可能にしている。また、In’Tech Industries, Inc.では、このシステムによりOEM顧客を対象に、複数の異なるパーツを生産し、即日もしくは翌日に納品を行っている。
更に、「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」は、生産現場だけではなく教育の分野でも利用することができる。以前、MakerBotイノベーションセンターの事例をご紹介したが、このシステムを教育向けに利用することも可能だ。
サヴァンナ芸術工科大学では、Design Labに「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」を導入することで、学生は高度な3Dプリントサービスを年中無休で利用することができる。ちなみに「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」に搭載されているFDM 3Dプリンターのクオリティは、生産グレードの熱可塑性樹脂が使用できるハイエンドモデルFortus 450mcと同レベルだ。
まとめ 生産性を大幅に向上させ企業競争力を強化する
「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」が製造現場や教育現場にもたらす恩恵は計り知れない。従来の3Dプリンターのように一つ一つの設計データごとにオペレーターが設定を行う必要がない。
これまでは、一つのデータの3Dプリントにある程度、人の手と時間が割かれるのが一般的であったが、このシステムでは、いったんクラウド上で設定を行うことで、不具合があった場合でも問題なく生産されることになる。これにより人員を増員させることなく、生産性を大幅に向上させることが可能だ。
IIOTの最大の特長が、“生産”や“製造”を機械が完全に担うことで、最小限の人員により生産性を拡大させることだが、まさにこのシステムはIIOTの特長を具現化したものに他ならない。
また、3Dプリンターのカスタマイズ性も反映されることでマスカスタマイズを実現する新たな仕組みといえるだろう。
ストラタシスは今回ご紹介した「Stratasys Continuous Build 3D Demonstrator」以外に、生産マシーンとして注目される2種類の造形技術「Infinite-Build 3D Demonstrator」と「Robotic Composite 3D Demonstrator」を発表している。最終品を高品質に生産するストラタシスのFDM テクノロジーは、IIOTの普及の核となるかもしれない。
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