ストラタシスの参加でFirstBuildは家電製品の開発スピードを大幅強化

ストラタシスのパートナーシップ

FirstBuildはGEとローカルモーターズが設立した家電製品のあらたな製造拠点だ。ローカルモーターズに集まる多くのデザイナーやエンジニアたちが、FirsBuildを使って自由に製品開発ができるマイクロファクトリー。

このFirst Buildは以前もたびたびご紹介したが、アイデアを持つ多くのデザイナーや起業家が自由に出入りすることができる。35000平方フィートにも及ぶ広大な敷地では、3Dプリンターやプレゼンルーム、試作品を試すキッチンなどが配備され自由に使うことが可能だ。

いわばこのFirstBuildは、クラウドというヴァーチャル空間でつながるアイデアを、現実の世界で製品化しようという新たなカタチの製品開発プロジェクトだ。製品企画から製造販売までを一貫して行う現実世界での拠点になる。

そのFirstBuildに新たなパートナーが参加することになっている。大手3Dプリンターメーカーのストラタシスだ。ストラタシスはこのFirstBuildにカラーマルチ素材のプリントができる高性能3DプリンターObjet500 Connex3を導入して支援する。

Objet500 Connex3は、フルカラーでなおかつマルチ素材に対応した高性能3Dプリンター。これによりFirstBuildの製品開発の幅が更に拡大することになるだろう。本日はストラタシスとのパートナーシップから見るFirstBuildの動きをご紹介。

GEとローカルモーターズの製造拠点FirstBuild

フルカラー3Dプリンターで製品開発を支援

Objet500 Connex3に関してはたびたび紹介しているので、詳しくは述べないが、簡単に言うとプラスチックやゴム状などの複数の材料を合わせた造形物がプリント可能な超高性能3Dプリンターだ。

しかも一つのモデルに最多46色、最小16ミクロンの積層ピッチで物体を作り出すことができる。これまでにない性能とクオリティを提供してくれる機器だが、1台あたりの価格は5,500万円と超高額だ。

到底、一起業家やデザイナーが購入できるレベルのものではない。今回新たにFirstBuildに導入されたことで、このコミュニティの参加者は自由に使用することが可能になる。このObjet500 Connex3の導入にあたってFirstBuildを運営するGE Appliancesのディレクターも「製品開発のスピードを加速させ、なおかつ生産にも使用することができ、時間とコストを大きく削減することができる」と期待を高めている。

FirstBuildに配備されたストラタシスの高性能3DプリンターObjet500 Connex3

ストラタシスのObjet500 Connex3の性能についてはこちらをどうぞ

コミュニティによる製品企画と製造販売

それではここでFirstBuildの仕組みをご紹介しよう。基本的な仕組みは5段階に分かれており、製品企画から製造販売までを一貫してコミュニティで行うという方法だ。

第一段階は「ideate(想像する)」というステップで、はじめに製品化したいアイデアやラフデザイン、などを投稿するところから始まる。

第二段階は「evluate(評価する)」というステップで、第一段階で投稿されたアイデアに対し、投票したりコメントしたりして、作るかどうかを決める段階だ。

この評価を経たアイデアだけが続く第三段階「make(試作)」に進むことになる。このmakeの段階ではプロトタイプを作り、試行錯誤や改良を行い最終形態に近づける作業だ。主に3Dプリンターなどの工作機器はこの段階で使用される。

この試作段階を経たものが第四段階の「produce(生産)」に移行し、小ロット生産が行われる。

そして最後に第五段階である「Sell(販売)」でFirstBuild専用オンラインショップや従来からある小売店で販売される。

このような一連の製品開発の流れは何も珍しいことではなく、これまで通りメーカーが行ってきたこととなんら変わることは無い。ただ1点異なる点は、この製品開発がコミュニティの力によって行われるという点にある。

製品企画から製造販売まで一貫してコミュニティで行う

エントリーされたアイデア

企業とコミュニティの製品企画の違いとは

このようなコミュニティによる製品開発はどのようなメリットをもたらすのだろうか。

FirstBuildではまだ販売まで至っていないが、既に数多くの製品企画案が登場している。また、同社の発表によると、1回のアイデアや製品企画で30個から40個もの試作を作ることがあるという。

このようなコミュニティが行なう製品開発は、企業体という限定的な組織が行なう製品開発とは明らかに異なる動きになるだろう。その違いは大きく分類すると、数とスピードという面で圧倒的な差が出てくる。

例えば一般的なメーカーが新商品を開発する場合、通常はその会社の製品企画部が行なうことになる。企業によって異なるだろうが、数名から数十名の担当者たちがマーケティングから企画、開発を行なうことになる。この場合の企業の製品企画はその部署内の担当者たちの範囲内でしかアイデアが出てこない。

もっと限定的に言えば、部署内の全ての人間が企画を行なうわけではなく、それぞれ担当や役割が決まっていることから、実際にその企画は少数による合議制で製品企画が行われることになる。

この場合の登場するアイデアの数や、改良するスピードは極めて限定的だ。一方クラウドという巨大なヴァーチャル空間に基盤を置くFirstBuildのようなコミュニティの場合は、不特定多数の人間のアイデアが反映されることになる。

そこではオンライン上のやり取りであることから、誰に気兼ねすることもなく自由に発想や表現を出すことが可能だ。また投稿されたアイデアやデザインを判断するのも不特定多数のコミュニティメンバーだ。

このように比較してみると、数の論理で圧倒的にコミュニティによる製品企画の方が、登場するアイデアが多くなることがわかる。また投稿されたアイデアはそこで終わりではなくオープンソースの流れで別の誰かが改良することが可能で、製品の改良段階でも限られた人間が行なうよりははるかにスピーディに改良することができる。

まとめ

こうしたコミュニティによる製品企画には賛否両論あるだろう。しかし、ここで述べたいのは一企業体が行なう製品開発が全く劣っているということではない。10人がアイデアを出す場合と1万人がアイデアを出す場合を比較した場合、どちらの方が、優れたアイデアが数多く含まれているのかということである。

肝心なことは、欧米企業はこのシンプルな理屈に基づき、巨大なオンラインコミュニティを自社の製品開発に活かし、企業競争力を高めつつあるということだ。さらにはオンラインコミュニティに3Dプリンターの力が合わさることで、その製品開発のスピードはさらに加速し、コストははるかに安価になる。

他社よりも早く安く優れた商品を販売し、迅速に顧客からのフィードバックを集め、改良版をさらに上回るスピードでリリースする企業に勝てる企業はいない。このように見てみると、スティーブ・ジョブズのような天才的な製品企画者でもいない限り、これまでの一企業による製品開発のスピードでは太刀打ちは難しくなるかもしれない。

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