中学生から実践的な3Dプリント技術を習得させる動き
今3Dプリンターを教育カリキュラムに取り入れる動きが加速している。その動きは政府レベルから企業レベルまで至り、新たな技術に対応した人材を急速に育てる方向で動いている。本サイトでもたびたびご紹介してきたが、政府レベルではアメリカやイギリス、シンガポールなどの動きが盛んだ。こうした諸国は公的機関の枠組みには収まらない柔軟な対応をしており、彼らは必要とあれば、ためらいもなくベンチャー企業に公的資金を投じる。
一方企業側も独自に人材育成に動いている。例えばオートデスクは全世界の学生を対象に無料で3Dデザインソフトを開放し始めた。また3Dエンジニアたちが集うクラウドコミュニティのGrabCADは、学生を対象にクラウドシステムの利用料を大幅に値下げを行っている。
国や企業がこうした人材育成に注力する動きの背景には、一つは3Dプリンターと3Dデザインの技術が、大きく国家や企業の競争力を高めるという力があるからだ。しかし競争力を高めるためにはそれを使いこなす人材が必要になる。この技術に対応した優れた人材を数多く確保することは、それだけ国や企業の成長力を押し上げることになる。このような企業や政府の3Dプリント教育には一つ特長がある。
それは中学レベルからこの技術を習得させようという動きだ。中学レベルから習得させることのわけは、おそらく高等学校、大学ではより高度で実践的な製品設計を学び、大学卒業後はすぐに即戦力として戦える人材を育成するためだろう。そんな中学生レベルの教育カリキュラムの内容に関して、ストラタシスが新たに14週間の3Dプリントカリキュラムを公開した。その内容は中学レベルとは思えないほどで、設計から製造まで学べる驚くほど実践的なものだ。
本日はストラタシスの超実践的な14週間3Dプリントカリキュラムをご紹介。
超実践的なストラタシスの3Dプリントカリキュラム
このストラタシスの3Dプリントカリキュラムは、全14週間にも上る本格的、実践的な3Dプリントカリキュラムだ。その内容は、まさに「設計から製造まで」の基本的な知識と実践力が身につくといったもの。目的は中学以降の高等教育でさらに専門的な技術習得に結び付けることだという。内容としては、基本的なCAD技術、3Dプリントの歴史、そして社会的、経済的影響力といった講義形式のものと、実践的なCADデザイン、3Dプリントも含んでいる。
講義形式のカリキュラムでは、3Dプリント技術の適切な使用によるコスト削減効果やリードタイムの短縮、はてはサプライチェーンへの影響力まで習得する。3Dプリント技術に関してはストラタシスの持つFDMとPolyjet、二つの製造方法が中心に紹介され、中間試験、期末試験も制定されてある。
期末試験では生徒の設計と課題解決に関するプレゼンテーションと、超実践的だ。また学生たちのより突っ込んだ学習むけに5つのエクストラコースが設けられている。例えばいくつかをご紹介すると、サウンド印刷といった音の波を3Dプリント化する実習や、ポストプロセスといった、FDM3Dプリンターで作られたパーツの後処理方法であったり、伝統的製法とでデジタル製造を行う企業の工場見学など、バリエーションに富んだ実習内容になっている。ストラタシスによるとこのコースを修了した生徒は、以下の5つのスキルをマスターすることができるとしている。
ストラタシス3Dプリントカリキュラムで習得できる点
- 単一のプリントで完全に機能する稼働部品を製造できる。
- 製造分野における現在および新規の3Dプリントアプリケーションの理解
- 各3Dプリント技術の利点と限界の理解
- シナリオ評価と3Dプリント技術の適切な使用方法
- 時間とコストを節約するための3Dプリント技術の使用の特定
まとめ 既にアメリカ、シンガポールの学校では導入も
このストラタシスの3Dプリントカリキュラムは既にアメリカやシンガポールの一部の学校では採用済みだという。こうしたカリキュラムの無料公開は教える側の教師にとっても非常に役立つものだ。ボストンにあるウェントワース研究所ではこのストラタシスの3Dプリントカリキュラムを使って教えているが、プロレベルのプレゼンテーションを教師が準備するのに十分な時間がなく、このカリキュラムが非常に有効に働いているという。
ストラタシスの3Dプリントカリキュラムは、この技術については詳しくない政府や学校などの公的機関が定めるよりも、より具体的で実際的なカリキュラムだと言えよう。我々が予測するよりも早く、3Dプリンターの教育体制は整うかもしれない。
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