ストラタシス・ジャパンとダイハツCOPENの3Dプリントカスタマイズが登場

設計・製造ソリューション展が開催、ストラタシスブースが注目

6月24日(水曜日)から26日(金曜日)にかけて、今年で27回目となる設計・製造ソリューション展が開催された。この設計・製造ソリューション展は日本ものづくりワールド2015の総称のもと、設計・製造ソリューション展、機械要素技術展、医療機器開発・製造展が合わせあったもので、いわば日本の製造業に関するあらゆる企業が集結する一大展示会。

3日間の来場者数はおよそ8万人に及び、3D&バーチャルリアリティ、設計・製造ソリューション展の部分では、今年も最先端のテクノロジーによるさまざまな企業が自社の取り組みを展示している。3Dプリンターがブームとなった2013年から約3回目を迎えるこの展示会だが、今回は従来とは一味違う展示を行う企業も登場している状況だ。

過去の展示会では、3Dプリンターそのものの展示とつくられた物体がメインの展示であったが、今回行われた展示会では、さらに一歩突っ込んだ、今後のものづくりを変える提案型とも言える新たな展示ブースが登場している。3Dプリンターがデザインの幅を拡大し、企業競争力を強化すると注目を集める中、海外とは違い今ひとつ具体的な事例に乏しいのが日本の実情。

本日はそんな日本メーカーの時代に対応する動きと、それを3Dプリントの力で後押しするストラタシスの取り組みを展示ブースとともにご紹介しよう。

ダイハツCOPENの3Dプリントカスタマイズパーツが登場

数ある3Dプリンターメーカーや3Dソフト関連の展示ブースの中で、今回一際目を引いたのがストラタシス・ジャパンが展示するブースだ。ストラタシスの3Dプリンターは、販売を行う他社も展示ブースを出しているが、ストラタシスの展示ブースは、単なる3Dプリンターそのものの展示ではなく、それをつかった画期的な取り組みそのものを展示している。

通路を通って最も先に目を引くのが、ダイハツ工業の軽スポーツカー、COPENでの3Dプリンターをつかったカスタマイズ事例。ダイハツ工業のCOPENはつい先日、パーツをオプションで着せ替え可能という取り組みが、一躍話題になったが、今回ストラタシス・ジャパンにより発表された3Dプリントカスタマイズパーツ、「Effect Skin」のプロジェクトはCOPEN「ローブ」での展開になる。

従来のCOPENのカスタマイズパーツはわざわざディーラーに持っていかなければパーツ交換をすることができないが、ストラタシス・ジャパンと共同で進める「COPEN Effect Skin 3DP」は、「DRESSパーツ」を3Dプリンタで製造販売する予定とのことだ。COPENのバンパーやエンブレムの周辺のデザインを、3DクリエイターのSUN JUNJIE氏がデザインしたアルゴリズミックデザインを使用しユーザーがカスタマイズできるという。

今回展示された、「Effect Skin」のパーツは、ベースとなるデザインが12パターン種類。選んだデザインは3Dプリンターで製造される仕組み。現在は予定だが、3Dプリントサービスのように、将来的には、ユーザーがWEB上でそのベースデザインを元に自分の好きな形にカスタマイズできるようになるかもしれない。

従来のCOPENのパーツはディーラー交換が必要だが、このスタラタシス・ジャパンと手がける「COPEN Effect Skin 3DP」ではユーザーが簡単にシールのような形で貼れる形態を目指すとのこと。この仕組みが整えば、わざわざディーラーに行かなくても、ユーザーは自宅に届いた3DプリントのEffect Skinで愛車をカスタムできるようになるだろう。ちなみに展示されているパーツは外部での使用に強いABS樹脂の強化版、耐候性につよいASA樹脂と、ABS樹脂に塗装したものになる。

車両のフロントバンパー部分、エンブレム周辺などがカスタマイズ可能
12種類のASA樹脂、ABS樹脂から選択可能。
デザインはベースデザインからユーザーがWEB上でカスタム可能の見込み
ASA樹脂なので耐候性も抜群、ディラーでの交換も不要
エンブレム周りも
デザイナーのSUN JUNJIE氏

進むマスカスタマイゼーションの流れと製品開発

既に同様の取り組みはトヨタが次世代コンセプトカーのi-ROADで3Dプリントカスタマイズの取り組みを開始し始めているが、このダイハツ工業とストラタシス・ジャパンの取り組みからも、マスカスタマイゼーションの流れが確実に進んできていると言えるだろう。

ベースとなるプロダクトを基軸に、ユーザーが自由にカスタマイズできる幅が拡大する。また同時に言えることは、多種多様に細分化するユーザーの幅広い好みに対応する為、製品開発の方法も、従来の一部の部署による製品開発のスタイルから変形を余儀なくされる。

こうした部分でも、既にダイハツ工業はこのCOPENを中心にして新たな時代の製品開発を進めてきた経緯がある。昨年末までに行われた「モノ造りを志す皆様と情報共有の取組みについて」というプロジェクトでは、デザイナーやクリエイター、パーツメーカー、学生など、ものづくりに興味がある人々と情報共有を行い、図面データを共有、それにより不特定多数のアイデアをCOPENの開発に採用し始めている。

このような不特定多数のアイデアをクラウドベースで集約し3Dプリンターをつかった製品開発は、欧米を中心に行われ始めているが、日本ではこのダイハツ工業の取り組みがかなり先進的な部類に入ると言えるだろう。ちなみにストラタシスブースでは、その他のメーカーと3Dプリンターをつかったさまざまな事例が展示されており、他のデバイスと作品のみの展示とは一線を画しているといっていい。

タカラトミーでの3Dプリンター事例
ソニーMESHでの使用

まとめ 新たな製品開発の可能性を示す

このダイハツ工業とストラタシスの「COPEN Effect Skin 3DP」は、これからの時代の製品開発やデザインの幅を拡大させるものとして大きな意味を持っているのではないだろうか。3Dプリンターの最大のメリットは高速性やコスト効率などさまざまな部分があるが、その最大のものは、人々の自由な発想やアイデアを世の中に開放する役割に尽きる。

これまでの金型に代表されるような従来の製造技術は、習得し使いこなすのに何年も時間がかかるが、3Dプリンターは、従来の製造技術に比べ、自らの考えやアイデアを生み出すことがはるかに容易に可能になる。すなわち、より優れた人や、より人に価値を与えたいと思っている人たちを開放し、そしてそれを有形物として世に提供することが可能になる。

まだまだこの3Dプリンターの持つ本質的な可能性と、製品開発の民主化という部分を日本では明確に認識されていない部分が多い。それを知らしめるためにもこの「COPEN Effect Skin 3DP」は新たな時代のものづくりを広める上でも大きな役割を負っているといっていい。

しかし、その一方で、3Dソフトや3Dプリンターの扱い方だけではなく、それ以前のどのようにアウトプットしていくかという、より根源的なデザイン教育が必要になるだろう。つまり、3Dデザインも3Dプリンターでだされた物体もそれは、単にアウトプットされたものに過ぎず、そこに至るまでの全く無形な部分から有形に落とし込む力こそがデザイン力にほかならない。

こうした教育があって初めて、3Dデザインと3Dプリンターの使い道も生きてくるだろう。

COPEN Effect Skin 3DP

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