製造ラインに組み込まれる3Dプリンター
3Dプリンターはもともと量産する前の試作品製造の目的で使用されてきた。
大量生産に移る前のその製品や部品のデザインや機能、形状などをチェックするための模型を作るためのものだ。
そのため、成形されるクオリティもあくまで模型の域を出るものではなく、材料も石膏とプラスチックに限られていた。しかしここ数年で圧倒的に3Dプリンターの性能が向上し、対応できる素材も増え続けてきている。
そうした状況を受け、単なる試作品を製造するだめの道具としてではなく、直接パーツ類を製造する目的で使用が開始され始めている。
こうしたことは製造業を営む企業にとってどのようなメリットをもたらすのだろうか。本日は在庫管理という観点から経営に対する3Dプリンターの役割を、従来の製造と比較して考察してみたい。
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経営における在庫の価値
日本の製造業、特に中小企業の製造業は基本的には受注生産という形態をとっている企業が多い。
例えば客先から「こういう形状のこういう部品を作ってくれ」という受注を受けた場合、客先のエンジニアや担当者と協議を行い、材質や形状、デザインなどを決めそれに基づいて生産を行う。
例えば仮にその部品が自動車用のパーツだったとしよう。その場合、そのパーツの価値はどのように決まるのだろうか。
そのパーツが使用されている自動車が製造され続けている間はそのパーツは価値があると考えられる。
従来の大量生産方式の場合、例えばそのパーツの製造を客先から10万個注文された場合、生産は予備や納期対応なども加味して11万個を製造するとする。
その場合10万個は客先に納品するとしても、残りの1万個は在庫として自社に保管することになる。
1個当たりの製造原価が100円とした場合、100万円分の在庫を保有することになる。しかし、そのパーツが価値を持つのは使われている自動車が製造している間であるため、その機種が製造中止になり、そのパーツが使用されることがなくなってしまう場合に、100万円分の在庫は一気にゼロ円の価値になってしまう。
しかし、経営上の財務会計の場合、この二度と使用することのない100万円分の在庫は帳簿上、100万円の資産として計上されることになってしまう。
資産として計上された場合には、当然税金がかかってくる。
全く無価値な在庫にも関わらず100万円分の税金だけは支払わなければならないとされるのだ。
もちろん上記の例は在庫に関する経営上の価値を説明するための極端な例だが、量産による製造体制をとる場合、当然多かれ少なかれこのような問題は起きると考えられる。
3Dプリンターの性能向上が在庫をなくす
今の時代どこの企業も在庫は極力持たないようにしている時代だ。
製造業の現場においては可能な限り最小限の在庫で抑えるための経営努力がなされていることと思われる。
そうした面から言うと、3Dプリンターを使用することは在庫管理をより最小限にとどめてくれるメリットをもたらす可能性があるのではないだろうか。
確かに現時点では3Dプリンターの性能はまだ限定的なもので、使用できる素材も一部の素材に限られている。
しかし技術の進歩は目覚ましいものがあり、素材もここ数年で種類がどんどん拡大している。例えば3Dプリンターの性能の一つである積層スピードもどんどん改良されつつある。
機種によっては造形スピードを60%カットしたものも登場している。また、素材の種類も拡大しており、金属類やゴム系の材料、木材など、様々な材料が増え、異なる材料を組み合わせて精密にプリントすることができる機種も発表された。
こうした技術進歩は急速に進むことで、3Dプリンターを単なる模型の製造機器としてではなくパーツのダイレクト製造に取り組もうという動きが一部の企業では起きている。
GEやシーメンスなどの航空機部品の製造や、フォードなどに代表される自動車産業、ナイキやアディダス、自転車のジャイアントなどのスポーツ産業など、少しずつではあるが、3Dプリンターからパーツをダイレクトに製造する動きが見え始めている。
これらの企業が共通して言っていることは、①大幅なコスト削減が可能になった、②製造時間が短縮された、③パーツの性能が向上した、というメリットを挙げている。
3Dプリント技術を製造に導入することは在庫を極力減らすというメリットだけではなく、製造自体のコスト効果と品質向上をもたらす用途で注目を集めているのだ。
まとめ
いつか使う在庫であれば構わないが、量産した際の余分なストック分は、その部品が使われなくなってしまえば一気に無価値になってしまう。
無価値なのにもかかわらず資産とみなされ税金を支払わなければならないのは、経営という観点から見れば贅肉が付いた経営だ。
また、将来的に3Dプリンターの性能が飛躍的に向上し、ある程度の生産が可能になったとしても、従来の製造方法と十分コストの比較をし、導入を検討する必要があるだろう。
少なくとも技術が向上したとはいえ高性能な3Dプリンターは非常に値段が高く、また専用のオペレーターも必要となるため、デバイスとソフトウェア、CADオペレーターといった人員体制まで含めた設備投資になる。
こうした設備投資は中小企業にとってはかなりの負担となるため、最近ではキンコーズなどの中小企業を対象とした高性能な3Dプリントサービスも徐々に増え始めている。
現状の製造プロセスと在庫管理をきっちり見直し、その上で個別の要望に対応する目的として3Dプリントサービスなどを利用してもいいかもしれない。
少なくとも、デジタルデータからダイレクト製造する流れは徐々にいろいろな業界に浸透しつつあるため、その知識や使用方法は大いに学ぶ必要がある。
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