布に電子回路を3Dプリント。NanoDimensionのスマート繊維

電子回路とプリント基板の3DプリントNanoDimensionの進化

電子回路の多層プリント基板の3DプリンターメーカーNanoDimensionは、2016年にフラッグシップモデルである3DプリンターDragonFly 2020をリリース。

世界中からの注目を集め、アメリカの株式市場にも参入を果たした(米国預託証券(ADR)の取引市場であるOTCQX市場で取引開始)。さらにはイスラエル発のベンチャーとして、大手イスラエル防衛会社への最初の導入も決定し、実質的な生産販売を開始している。

この多層プリント基板の3DプリンターDragonFly2020は、オリジナルの導電性銀ナノインクとエポキシ樹脂を使って多層化を実現しているが、さらに目指す先荷は単なるプリント基板だけではなくIOT時代に対応したデバイスに使用することができるプリント基板の開発も実現しようとしている。

以前ご紹介した「エレクトロニクス製造が変わる。多層プリント基板3Dプリンターの驚異的な力」で、すでにフレキシブルな柔軟性のあるオンデマンド製造に乗り出しているが、さらにそれを進化させえた導電性布の開発に成功したとの発表がされた。

本日は迫りくるIOT時代のものづくりを加速する導電性布の3Dプリントをご紹介しよう。それによるとNanoDimensionは生地そのものに電子機器やセンサーを埋め込むことを可能にしたという。

多層プリント基板をオンデマンド製造できるNanoDimensionの3Dプリンター

布に電子回路を組み込む3Dプリント技術を開発

IOT時代においては、これまでのインターネットの時代とは違い、あらゆるモノがインターネットに接続されるようになる。そこではクラウドアプリケーションによって様々なデータが収集され、同時に人工知能によってその人に最適な機能、提案がリアルタイムで行われるようになる。

この人工知能とデータベースによってコントロールされるモノは、衣服も例外ではないだろう。例えば、衣類にセンサーなどの電子機器が埋め込まれ、インターネットに接続されるようになれば、その人個人のフィジカルデータなどが収集され、気候や体調にあった状態に衣類がカスタマイズされるといった機能が将来できるかもしれない。

しかし衣類などをウェアラブルデバイスにするためには、薄い生地にセンサーや電子回路といった電子機器を組み込まなければならない。これまでの一般的なハードウェアはいくら極小化しているとはいえ、ボード状の形状に限定されていることから、従来のものを生地に織り込むことは非現実的である。

この従来の不可能をNanoDimensionは彼らの3Dプリント技術によって確立している。

繊維素材に導電性インクで弟子回路を描ける技術を開発。

繊維テキスタイル会社と共同で完全なスマート布の開発に成功

この技術は欧州の大手機能性テキスタイル会社と共同で開発されたもので、布の上に導電性の回路パターンをプリントするもの。この試験で使用されたインクは、以前もご紹介したAgCite™銀ナノ粒子の導電性インクで、既にDragonFly2020にも使用されている。

この回路パターンはセンサーなどの電子機器を設置できるように最適化されたもので、実際にプリントするだけではなく、印刷された導体が作用するかどうかのテストも行われている。NanoDimensionによると、電子機器を配置し回路パターンをプリントしたのちも、その生地は繊維ならではの高い弾性率を保持したまま正常に電子回路として機能することが可能とのことだ。

これにより衣類本来の機能である柔軟性を保持したまま運動時などにも制限を受けることはなく、“スマート衣類”を生成する導電性生地として提供が可能になったとのこと。

布に電子回路をプリント可能な銀ナノインク。

まとめ 巨大化するスマート繊維市場に対応する開発

衣類のIOT化、すなわちスマート繊維の市場は今後急速に拡大するといわれている。NanoDimensionによると、現在のスマート繊維市場は8億ドルといわれているが、2020年には、47億ドルに拡大すると予測されている。その年間成長率は33.58%に及び、通常の衣類からスポーツ、医療、航空宇宙産業、自動車など多岐にわたる。

例えば先にもご紹介したようにセンサーや熱特性を加えたウェアラブルデバイスなどは、スポーツから医療まで当たり前の機能として衣類に付与されるだろう。

また、デジタル市場として期待が集まるVR(仮想現実)によるVR専用手袋のニーズなど、あらゆる分野でスマート繊維は必要になる。こうした市場が急速に拡大するスマート繊維の開発にとって、NanoDimensionの開発した導電性のスマート布は大きな影響を与えることになる。

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