8ヵ月連続で経済成長し続けるシンガポール
シンガポールは人口わずか540万人程度で、面積も東京23区程度の大きさからなる都市国家だ。人口と国土は小さいながらもその国際競争力は非常に高く三年連続で2位の競争力を誇っている。国際競争力のランキング評価は世界経済フォーラムによって発表されているが、経済の安定性や、労働市場、革新性、高等教育レベルなど12分野の指標によって評価がされる。
こうした高い国際競争力と相まって、経済成長が著しく、8ヵ月連続で製造業の経済が拡大している。シンガポールは世界の物流拠点として有名であるが同時に世界のエレクトロニクス産業の製造拠点としての地位を向上させつつある。一部のエコノミストによると2013年度のGDP成長率は2.5%から3.5%にも上ると予測されている。
エレクトロニクス産業
世界のエレクトロニクス産業の製造拠点
シンガポールはエレクトロニクス産業の製造拠点だ。エレクトロニクス産業とは例えば携帯電話やパソコン、ゲーム機、カーナビゲーションといった製品などでシンガポールの製造業の基盤をなすものだ。
シンガポールのエレクトロニクス産業の歴史は古く1960年にアジア初のテレビ組立工場が開設された時にさかのぼる。今では世界の物流拠点と相まって世界のエレクトロニクス産業の組み立て工場としての役割も担っているのだ。シンガポールの役割はざっくり言うと部品を輸入し組立て再輸出するというもので、日本からのシンガポールに対する輸出額も1兆8,593億円に上り、主要な輸出品目は一般機械が18.4%、石油製品が13.9%、半導体電子部品が10.4%となっている。
まさにエレクトロニクス産業はシンガポール経済の機関産業となっている。
具体的にはシンガポールの製造業の生産高に占めるエレクトロニクス産業の割合は33%を占めている。また、雇用者数は8万人に上り製造業の総雇用者数の約半分45%を占めている。特に半導体分野に強く、ウェハーの生産量は全世界の10%を占め、ハードディスクの生産では全世界の40%を占めいている。
具体的な製造拠点としては
- 世界トップ3に入るファウンドリーを含め、ウエハーシリコン製造工場14ヶ所
- 世界トップ6に入る半導体組立検査受託会社3社を含め、半導体組立・検査事業所20ヵ所
- 集積回路設計センター約40ヵ所
- 世界トップ3に入るハードディスクドライブメーカー
- 世界トップ5に入る4社の電子機器受託製造サービス企業(EMS)
- 世界トップ10に入る9社のファブレスIC設計企業
※シンガポール経済開発庁より抜粋
このように世界のエレクトロニクス産業の製造拠点としての地位を保っている裏側には、シンガポールの製造業にかける総合的な政策がある。
シンガポールの人材・最先端技術に投資する政策
シンガポールは自国経済の成長を持続するためにどのように取り組んでいるのだろうか。世界の物流拠点の中心としての存在だけではなく、世界のエレクトロニクス産業の中心としての地位を保ち、より成長させていくために最先端技術の取り入れと資金の投下を惜しんでいない。その取組は最先端技術の導入からビジネス環境整備、人材開発とあらゆる面に及んでいる。
1.ビジネス環境整備に多額の予算を投じるシンガポール
シンガポールは人口が少ないため他国の投資が集まるためのビジネス環境の整備に多額の予算を投じている。シンガポールの製造・研究開発に対する予算のうち63%は環境整備に投じられており、主な重点分野は人材育成にある。あらゆる国籍の人間がシンガポールで働ける環境を整えている。
こうした取り組みは技術系の人材を育てることに役立ち、投資家のニーズにこたえられる経済基盤と環境を作り出している。
2.人材開発プログラムの実施
同時に、人材を経済成長の推進力としてとらえることから、国立大学である南洋工科大学で人材開発プログラムを実施し、エレクトロニクス産業のニーズに合った高度な知識を持つ人材を輩出している。主な分野として注力産業であるウェハー製造分野や、IC設計、低電力開発、環境開発等、今後主力となるビジネス分野の人材育成に取り組んでいる。
3.最先端技術3Dプリントに対する投資
シンガポールは人材育成に努めるだけではなく、積極的に最先端技術の導入を行っている。シンガポールはIT先進国としても知られるが、同時に3Dプリント技術を国の重要政策と位置付け研究開発に取り組み始めている。シンガポールは多数の部品を集積し組み立てる製造プロセスを取っているため、全世界のサプライチェーンに通じているといっても過言ではない。
3Dプリント技術が持っているパーツのダイレクト製造という特徴はサプライチェーンと物流に対しても大きな影響を与えることは必須だ。このような3Dプリンターを導入することによって世界の製造拠点としての地位をさらに向上させることを目指している。
まとめ
シンガポールは国土面積が日本の東京23区程度しかなく、人口もわずか500万人近くの小国で資源もない国だ。そのためシンガポールの政策は人材が資源であるととらえ、経済発展を目指そうというものである。
また、自国内が小さく資源もないため初めから国の外に目を向ける力を持っている。例えば3DプリンターやITなどの最先端技術の利点を素早く理解し、すぐさま取り入れる体質を国が持っていると考えられる。
こうした特徴は資源をもたない都市国家の特徴なのであろうか。バルト三国のラトビアなどもIT先進国として知られ、中学校でもIpad,Iphoneで授業を行い、既にネットを使った選挙投票が実施されている。
また同時に基本的に人口が少ないことから企業が戦う戦場も国内市場ではなくグローバルな世界で戦っていくことが当たり前となっている。自国のみの市場では小さすぎて到底ビジネスとして成り立ちにくい部分があるためだが、グローバルに展開することでその分野に関する情報取得が容易になり技術レベルが向上しやすい特徴がある。
このような都市国家がとる政策と自国産業の核になる企業の取組は今後の日本にとって大いに参考になるのではないだろうか。日本も島国で資源が乏しいと言われているが、人口はこうした都市国家とは比べ物にならないくらい多く基本的には内需で経済が成り立っている国だ。
しかし今後少子高齢化で人口が減少することで内需が縮小していくため海外に市場を求め展開する必要がでてくる。その際シンガポールのような都市国家の政策は全てが適用できるわけではないが参考の一助となるだろう。
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