IT教育に力を入れるシンガポール情報通信開発庁(IDA)
シンガポールはITを国の経済力を牽引する力と考え、教育界におけるIT教育の導入を躍起になって行っている。
ちなみにシンガポールの国家予算に占める教育の比率は20%ととても高く、将来を担っていく人材育成に国を挙げて取り組んでいる。
スマートフォンやタブレット端末の普及でモノがどんどんデジタル化されていく中、公立中学校や高校において様々なIT教育が組み込まれつつある。
この教育のIT化を推進しているのがシンガポール情報通信開発庁、通称IDAと呼ばれる機関で、シンガポール教育省と共同して教育プログラムにIT化を取り入れている。
それではシンガポールは具体的にどのようなITプログラムを公立学校にとりいれているのだろうか。
本日は3DCADによるプログラミングと3Dプリント技術についてご紹介。
既に1500名の学生が3D教育を受ける
2013年度以来、シンガポールは教育システムへのIT化の導入をおこなってきたが、今回シンガポール情報通信開発庁が発表したところによると、段階的に公立学校の授業でソフトウェア、3DCADのプログラミングの授業を導入していくことを発表した。
3Dプリント技術は、製造業のデジタル化の波をさらに加速させていくことから、その時代に対応できる人材を育成することを目的としたものだ。
このIT化プログラムは既に一部の公立の中学校、高校で試験的に導入されており、約1500名の生徒たちが3DCADデータによる製品設計と3Dプリントによる試作品の製造を実地に学んでいる。
また、単純な3DCADデータとソフトウェアの使い方だけではなく、webを使ったアプリケーションの制作方法や、プログラミング言語 Pythonの学習などもおこなわれており、広範なプログラミング技術を体得することを目的としている。
こうしたプログラミングや3DCADに関する実地教育は一部の名門校では既に行われていたが、シンガポール情報通信開発庁はすべての公立校に導入し、次世代を担う多くの人材を育成したい考えにある。
このIT化の教育に関して、生徒たちの保護者もこれからの時代を認識しており、子供たちが幼い時期にこうした基礎教育を与えることに賛成しているという。
プログラミング教育を受ける生徒
まとめ -IT化で国際競争力を高めるシンガポール-
シンガポールはIT化で更なる国際競争力を高めようとしている。ある公立学校では全ての生徒がスマートフォンを使用し授業を行っている。
また、ある学校では最先端の人口知能が組み込まれた教育ソフトを使用し、授業を行っているところもある。
今回のプログラミングと3Dプリント技術の教育システムの導入も相まって、更なるIT教育を推し進める政策だ。こうしたシンガポールのIT教育の普及はどのような目的をもっているのだろうか。
それは世界の物流拠点として、また組み立て拠点として自国経済を立国させているシンガポールの都市国家としての特性によると考えられる。
昨今の急速なデジタル技術の加速と、それによって引き起こされる様々なモノのIT化は物の物流や製造の成り立ちを根本から変革してしまう動きを巻き起こしている。
そのため、次世代の物流や次世代の製造に対応するためには、その時代に対応することができる人材の育成によって国の国際競争力の底上げを行う必要があるからだ。
今はまだ3Dプリント技術は勃興の段階だが、技術力向上にともない、パーツや消費財をデータからダイレクトに製造する動きもみられつつある。
こうした製造プロセスの変化は早晩当たり前の動きになることは必至で、物流や組立製造も従来とは異なるプロセスや管理手法、ノウハウが必要になってくる。
そのためIT教育を普及させることは、物流と組立製造が経済の柱の一つであるシンガポールには「都市国家として生き残る」ための重要政策なのだと考えられる。
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