シリコーンのデスクトップ3DプリンターPicsima 登場

シリコーンのデスクトップ3Dプリンター開始

半導体から医療用、さまざまなプロダクトに使用されているシリコーン。近年では、産業用以外にも、その柔らかい独特の質感や、優しい見た目が人気で、コンシューマ用のプロダクトでも使用が目立つ素材だ。更には、いろいろな加工方法に対応しており、形状も硬さも柔らかいものから、硬いもの、発泡成形まで、自由に表現することができるのが魅力。

機能性にも優れており、耐熱性や耐衝撃性など耐久性が高いのも多用される理由でもある。こうしたことから近年ますます需要と消費が拡大する傾向にあるシリコーンだが、3Dプリントにも対応が開始されてきているようだ。前回、シリコーンと3Dプリントに関しては、シリコーンメーカーであるワッカーケミー社の取り組みをご紹介したが、今回はより、手軽に利用できるデスクトップタイプの展開である。

本日は、画期的なシリコーンの3Dプリンターを開発したイギリスの企業、フリップデザインをご紹介しよう。フリップデザインは、工業デザインの分野で、プロダクトデザイン、製品設計や研究開発、材料プロセスの開発など、幅広い分野で事業を行う企業で、今回のシリコーンの3Dプリント技術もイギリスで特許を取得している。

FDM 3Dプリンターのようにシリコーン素材を使う技術

デスクトップタイプの3Dプリンターというと、主力となるのはFDM(熱溶解積層法)のタイプが主流だか、今回フリップデザインが開発した3Dプリント技術は、まるでFDM(熱溶解積層法)3Dプリンターのようにシリコーンをダイレクト製造することができる。ちなみにシリコーンはケイ素を中心にした高分子素材で、FDM(熱溶解積層法)で使用されるプラスチック素材、加熱すると溶けて、冷却すると固まる熱可塑性樹脂ではなく、加熱すると固まる特性を持つ熱硬化性樹脂に分類される。

また、デスクトップタイプの3Dプリンターでもう一つ主流なのが、光造形タイプ。この光造形はシリコーンと同じ、加熱すると固まる熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂アクリル樹脂ポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂が材料になる。それではフリップデザインはどのように、熱硬化性樹脂であるシリコーンをFDM(熱溶解積層法)のように使うことを可能にしたのだろうか。

これまでシリコーンの加工は金型での加工方法が中心であった。射出成型や押出成形、プレス成形など、溶けたシリコーンを流し込み、加熱して固める成形方法が主流。このシリコーンの特性を3Dプリントに応用する研究は、既に3年前からイギリスの有名大学、シェイフィールド大学と共同で行われている。当時は目や耳や鼻といった医療用のシリコーンパーツの3Dプリントが目的であったが、現在は更に産業用にまで使用できることを目指し開発された。

さまざまな柔らかさや硬さに対応するシリコーン。
最近では医療用や半導体だけではなく、さまざまな用途に使用される。

3つの素材でシリコーンの硬さを調節。Picsima 3Dプリント技術

それがPicsima 3Dプリント技術というもので正確にSTLやCADファイルから直接シリコーンの重合を行ない押出を制御する技術だ。つまり、Picsimaメソッドはシリコーンの生成に使用する3つの素材、基油、架橋剤、及び触媒を混ぜ合わせて、ノズルから押し出すという画期的な技術である。通常、この3つの素材は金型ないで一緒に混合し加熱するが、Picsima 3Dプリント技術では押出ノズルでそれを可能にしている。

また、架橋剤はシリコーンの柔らかさや硬さを決定し、触媒は、硬化時間の短縮に繋がるといい、この二つの素材の配合を変えることで、非常に柔らかいものから、硬いものまで、さまざまなショア硬度の3Dプリントオブジェクトを作ることが可能。使えるシリコーンはFDAが承認したシリコーンであればなんでも動作し、言うなれば金型で使われているシリコーン素材であれば、このPicsima 3Dプリントで使用できるのだ。

これによりものづくりの幅が更に拡大し、ソフトで柔軟な3Dプリント補綴用をはじめ、医療機器や家電製品、産業用のプロトタイプといった製品のダイレクト製造に可能性を拡大する。また、Picsima 3Dプリントではサポート材や専門ツールも不要で、フルカラーに着色することも可能だ。

シリコーンのデスクトップ3DプリンターPicsima
さまざまなシリコーンのオブジェクトをオンデマンドに生産

Picsima 3Dプリンター動画

まとめ さまざまな用途に拡大するシリコーンの製品開発を促進

現在、フリップデザインは、シリコーンの3Dプリントサービスを開始しているが、最終的には、今回ご紹介した、このPicsima 3Dプリンターを製品化しヨーロッパ、北米、中国などの市場に投入することを目指している。現在、FDM 3Dプリンターを中心に、3Dプリンターで使用することができるプラスチック素材が急速に拡大しつつある。

高度な特性を持つエンジニアリングプラスチックや炭素繊維などの最先端素材も徐々に3Dプリント技術に適応が始まっている。そのような中、医療用だけではなく、家電製品や、日用品などさまざまなコンシューマ向けプロダクトの素材として重宝されている。

例えば、鍋の取手などは耐熱性が高いフェノール樹脂(ベークライト)から、より質感や手触りが優しいシリコーンを使うケースが増えたり、発泡シリコーンによる照明カバーなど、機能性だけではなく独特の質感や手触りが評価され、エンドユーザー向けのプロダクトに浸透しつつある。そのような中、シリコーンがより手軽にオンデマンドで利用できるということは、ものづくりの幅や製品開発の幅がますます拡大するだろう。

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