シーメンスの3Dデザインチャレンジに見る製造業を変える3つの効果

3Dデザインと3Dプリンターは製品開発に革新をもたらす

3Dプリンターは製造業での利用がぞくぞくと拡大している。その主な役割は試作から最終パーツの製造まで一貫して行うことができるという点にある。3Dプリンターを導入する最大の理由は、これまでの加工方法に比べ、はるかに短い時間と少ないコストで製造ができるということがあげられるが、3Dプリンターはこうした製造現場の効率化以外にもう一つ大きなメリットをもたらす。

それは製品開発に技術革新と創造性を与えるというメリットだ。例えば従来の金型や金属加工では再現することができなかった形状やデザインが3Dプリンターであれば製造することができる。形状やデザインの限界を超えるということは、これまでその製品が発揮できなかった機能や性能を新たに付与することが可能になるというわけだ。

これは3Dデータからそのままダイレクトに物体が形成される3Dプリント技術の最大の強みだと言えるが、3Dソフトを使いこなすデザイナーやエンジニアの重要性が、ますます増加してくるということを示している。

こうした動きをとらえ、企業も独自にデザインとエンジニアリングに精通した人材を確保する動きにでたり、デザイナーを育成する動きをとりはじめている。本日はドイツの超巨大コングロマリットシーメンスのデザインチャレンジをご紹介。

鉄道車両で代表的なシーメンス

シーメンスの3Dプリントデザインチャレンジ

シーメンスは1847年(創業167年)の超巨大コングロマリットだ。世界中に展開し従業員は36万人を超え、その分野は鉄道から電力、交通、医療、防衛、電子機器、家電製品など多岐にわたる。売上は10兆円を優に超える程の規模。そんなハイテクの巨人シーメンスも3Dプリント技術を積極的に取り入れている。

既に航空機用のガスタービンや燃料ノズルの生産を3Dプリンターで行うことを発表している。本格的な生産が開始されるのは2016年度だが、ボーイング737マックスやエアバスA320neoといった機体に使用されるタービンブレードや燃料ノズルは3Dプリンターで作られることになる。

こうした製造現場への3Dプリンターの導入は冒頭で述べた通り、生産体制の効率化とともに製品開発を大幅に強化するものだ。その振興策の一貫としてシーメンスは新たにデザインチャレンジを開始している。対象となる国はオーストラリアとニュージーランドだが、未来の製造や製品開発を担う人材を広く求め、シーメンス自体のエンジニアやデザイナーもこれからの時代に適合させたい狙いがあるようだ。

とりわけオーストラリアとニュージーランドはシーメンスにとって重要な地域であり、2700名に及ぶ従業員のうち、40%の1080名がエンジニアで占められる。このシーメンス3Dデザインチャレンジは、4つのカテゴリに分類されており、個人でもチームでも参加可能。

これからのデジタル化社会に対応した革新的な製品、技術を競うことになる。審査にあたってはパートナーシップを結んでいる3DsystemsとENGINEERS AUSTRSLIAが審査員に臨む。審査の基準になるのは、創造性とオリジナリティ、機能性の3点で、それぞれのカテゴリごとの課題を、独自の創造的アイデアで解決することが重要なポイントになる。

シーメンスデザインチャレンジのカテゴリ

  • 持続可能なエネルギー分野:省エネ志向であるこれからの時代のエネルギー効率化の実践とプロセス
  • 製造業の未来の分野:より少ない資源を使ってより高い基準で製品の設計と製造を行なう方法
  • インテリジェントインフラストラクチャ分野:建築技術、配電、グリッドセキュリティ、および資源不足や代替エネルギーソリューションの必要性などの重要な条件に留意しているモビリティソリューション
  • デジタル化分野:ヴァーチャルと人間の日常生活のあらゆる側面に対処するための物理的なもの

受賞は2種類に分かれており総合優勝者には、3Dsystemsの3700ドル相当のCubeX 3Dプリンターが授与される。通常の受賞者は、1500ドル相当のSLS3Dプリンターで彼らのエントリー作品が3Dプリントされ、11月24日から28日までメルボルンで開催されるエンジニアオーストラリアコンベンション2014のシーメンスブースで展示されることになる。

まとめ シーメンスの3つの狙い

シーメンスはこのデザインチャレンジの開催にあたり3つの効果を狙っている。

第一に、優秀な人材の確保である。創造性と革新性を持つデジタル技術に精通するデザイナーは今後の製造業にとって最も重要な役割を担うことになる。デザインチャレンジを開くメリットの一つとして、こうした優れた人材を確保する機会にもなる。ましてや世界的企業であるシーメンスのネームブランドで集めれば、より多くのハイレベルな人材を集めることが可能だ。

狙っている効果の第二は、このデザインチャレンジにより、社内のエンジニアやデザイナーの意識を変え、未来のデジタル化された製造業に対応できる人材に変えていこうという狙いがうかがえる。上述の通り、オーストラリアとニュージーランドの社員のうち40%がエンジニアで占められている。こうしたデザインチャレンジで新たな風を吹き込み社員の意識を活性化させることも、大きな目的の一つだ。

第三の効果は、デザインチャレンジで集まるアイデアや作品をもとに、自社の製品開発に利用したいという狙いがある。3Dデータの最大の特長は多くの人間と共有することができる点にある。これがモノのオープンソースの流れを加速させる一因だが、社内にはないアイデアやデザインを結集し、それをもとに製品開発を進めるということがデザインチャレンジでは期待できる。

このようにシーメンスはこのデザインチャレンジをもとに、これからのデジタル化され、効率化された時代に対応する動きに出ている。時代に自社の全てを対応させる、すなわち適者生存こそが、167年間生き残り、拡大をつづけてきた企業の神髄なのだと感じさせてくれる取組だ。

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