高機能ポリエステルの3Dプリンター用フィラメント材料登場
FDM(熱溶解積層法)の3Dプリンターの進化に伴って、3Dプリンター材料も進化してきている。特にFDM(熱溶解積層法)に関していえば、従来の金型と同様の熱可塑性樹脂が使用できるため、水平利用が著しい。
代表的なABS樹脂やPLA樹脂に加え、ポリカーボネートや、ポリエチレン、ナイロンポリアミド、炭素繊維配合素材など、さまざまな熱可塑性樹脂がフィラメント化されつつある。そのような中、新規に3Dプリンター用フィラメント材料の開発に乗り出すメーカーも多い。
デスクトップタイプの3Dプリンターの普及が進めば進むほど、材料ニーズも多角化し、需要が増すためだ。今回ご紹介するNexeoソリューションもそんな新たに3Dプリンター用フィラメント材料の開発と販売に乗り出す企業だ。
もともとNexeoソリューションは、世界最大の化学・プラスチック製品の販売代理店で、あらゆる分野の業界(自動車、石油・ガス、航空宇宙産業、医療、消費者製品など)に26000以上ものプラスチック製品を供給している。1200以上のサプライヤーネットワークを持ち、北米やアジア地域を中心に事業展開している。
そんな彼らが開発した3Dプリンター用フィラメントが2種類のポリエステル系フィラメントだ。プラスチック材料開発の専門会社DSMと共同で開発している。
本日はプラスチック業界の巨人が開発した2種類のポリエステル系3Dプリンター用フィラメント、高品質のポリエチレンテレフタレート(PET)のARNITE®ID3040と、優れた柔軟性を持つ熱可塑性コポリエステル(TPC)のフィラメントARNITE®ID2045をご紹介しよう。

強度と安定性に特化。ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィラメント
ポリエステルというと、繊維の代替品としての存在が有名だが、もともとポリエステルが開発された当初は、ポリエチレンテレフタレート(PET)としての開発から始まったとされる。
ポリエステルとポリエチレンテレフタレート(PET)の特性や用途に関しては別途ご参照いただければと思うが、ポリエステルが3Dプリンター用フィラメント材料となった場合、安定した高品質のプリント精度を発揮するといわれている。
一般的にポリエチレンテレフタレート(PET)の特性は高い透明性と引っ張り強度や耐衝撃性に優れる特性を持つとされているが、Nexeoソリューションが開発したARNITE®ID3040シリーズは、それに加えて高い層間接着性を有しているとされている。
ご存知の通りFDM(熱溶解積層法)は1.75mmもしくは2.85mmの太さのフィラメント材料を溶かして積み上げる製法だが、その際の層と層の間の接着性がARNITE®ID3040シリーズでは高く、低収縮で寸法安定性が高く、高強度なパーツを造形することが出来る。
これにより自動車業界や消費者向け製品といった高い水準を要求されるアプリケーションに最適な高精細を発揮できるとのことだ。カラーはブラック、グレー、ナチュラルホワイトの3色。価格は48.95ユーロ。

非常高い柔軟性。熱可塑性コポリエステル(TPC)のフィラメント
もう一つ、ポリエステル系のフィラメントが、高い柔軟性を持つ熱可塑性コポリエステル(TPC)のフィラメントARNITE®ID2045だ。
こちらのARNITE®ID2045シリーズは、柔軟性と靭性に特化した3Dプリンター用材料で、なんとその伸び率は、一般的な3Dプリンター用フィラメント材料と比較して400%も伸びる。これは熱可塑性ポリウレタン(TPU)系のポリマーよりも高い伸び率で、同時に高いUV特性と耐薬品性も有する。
また同じポリエステル系のARNITE®ID3040シリーズの層間接着性も引き継ぎ、安定性においても遜色ない性能を持つ。こちらのARNITE®ID2045シリーズはエレクトロニクス製品やスポーツ用品などに最適で、カラーは3040と同様ホワイト、グレー、ブラックの3色だ。価格は39.95ユーロ。

ナイロンポリアミド系もリリース
Nexeoソリューションは、この二種類のポリエステル系フィラメント以外に、ナイロンポリアミド系の高性能3Dプリンター用フィラメント材料も開発している。Novamid®IDといわれるこのシリーズは、1030シリーズと1070シリーズの2種類登場しており、1070シリーズは、プレミアムレベルのフィラメントとして、高強度、高耐熱、高靭性の特性を有している。
耐熱性は150℃の環境下においても耐えられるほどで、自動車やエレクトロニクス業界など、高い機能性が求められる業界に最適なフィラメントといえるだろう。こちらもブラック、グレー、ホワイトの3色で、44.95ユーロ(1030シリーズは39.95ユーロ)。

従来のABSが持つ反りの課題や、PLAが持つ脆さの課題は、こうした新たなフィラメント開発により徐々に克服され、そしてデスクトップレベルの3Dプリンターの性能すら押し上げることになる。現在はメーカーの機械も専用材料が当たり前の状況だが、将来的には様々な樹脂に対応した汎用性の高い機体が主流になるかもしれない。
まとめ 3Dプリンター用材料の多角化は機械の汎用性を高める
FDM熱溶解積層法の3Dプリンター用材料は、従来はABS樹脂とPLA樹脂が主流であったが、さまざまな高機能を誇るフィラメント材料が登場しつつある。中でも高い期待が集まる素材の一つが、今回ご紹介したポリエステルだ。ポリエステルはさまざまな種類が存在し、高機能な種類も存在するが、そのポリエステルの多様性がフィラメント開発にはうまくいかされているといえるだろう。
従来のABSが持つ反りの課題や、PLAが持つ脆さの課題は、こうした新たなフィラメント開発により徐々に克服され、そしてデスクトップレベルの3Dプリンターの性能すら押し上げることになる。現在はメーカーの機械も専用材料が当たり前の状況だが、将来的には様々な樹脂に対応した汎用性の高い機体が主流になるかもしれない。
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