アリゾナ州立大の実験結果に見るPLA樹脂の3Dプリントに最適な方法

PLA樹脂の長所と短所

広く普及が期待されている低価格3Dプリンターは基本的に二つの素材を使用するケースが多い。PLAABSだ。両方ともプラスチック素材には違いはないが、原料が異なりそれぞれで特性が異なる。

ABS樹脂は粘りがあり、強度が強い。また成形後の加工も容易で、やすりやサンドペーパーなどでの後処理も簡単にできる。その一方で粘りが強いことから大型の造形物を作るのには適していない。

PLA樹脂は植物由来のプラスチックで、成型されたものは粘りが少なく強固。大きい造形物をつくるのに適しているが、成型温度が低いため、高温に弱いという弱点を持っている。また固いため造形後の後加工が難しいという点がある。

このように既存のプラスチック素材はそれぞれ作る目的物に応じて使い分ける必要があるが、安価な低価格3Dプリンターを使用する場合、多少なりとも造形物に不満が残ることも多い。

特にプリント中に多少の汚れがついたり、あるいは均一性が保てなかったりということを感じている人も少なくないだろう。

現在3Dプリンターの性能は日に日に向上しており、特に低価格3Dプリンターの性能を向上させようという研究はいたるところで行われている。本日は、アリゾナ州立大学の学生が実験した調査結果、PLA樹脂を使う場合の3Dプリント造形物が強固になる方法をご紹介。

かれらは、PLA樹脂を用いて3Dプリントする場合に、より強く、より堅く、より丈夫に造形物をプリントするにはどういう条件であれば最適なのかを実験している。

PLAの3Dプリントに影響を与える4つの条件

かれらが行った実験の結果、PLA樹脂の3Dプリントに影響を与える項目は大別して4種類の項目があるとしている。それはプリント方向、プリント速度、アニール温度(熱処理温度)、アニール時間(熱処理時間)だ。実験条件や使用する3Dプリンターの性能によって異なるだろうが、上記4つの項目を踏まえPLA樹脂に最適な条件を発表している。

最適なプリント方向

第一の条件のプリント方向だが、実験結果から推奨される最もPLA樹脂の強度を高める方向は、水平方向にプリントし積層することが最適だと発表している。

最適なプリント速度

第二の条件であるプリントスピードは、どれぐらいのスピードでノズルが動き、ノズルから抽出されるかを示している。彼らの発表では少なくとも秒速90㎜以上のスピードが最適であるとのことだ。これは秒速45㎜で実験した場合と比較しており、速度が速い方が強い目的物が作れるとしている。

最適なアニール温度とアニール時間

第三に最適なアニール(熱処理)温度と時間だが、彼らは厚さが4分の1インチあたり、約30分の時間で、140℃の温度が最適だとしている。半分の条件、70℃で15分で実験した場合には強度が低下したとのことだ。

まとめ

こうした調査レポートや実験は、それを行うときの条件や環境によって大きく異なるが、3Dプリンターの最適な使用方法のある程度の目安にはなるのではないだろうか。

今、各社がそろって3Dプリンターの改良と性能向上に取り組んでいるが、とりわけ低価格3Dプリンターの性能を向上は今後の普及にとっても大きな影響を与えるだろう。

特にプリントスピードと解像度の二つは低価格3Dプリンターの性能にとっては重要で、より精度が高く、より早く造形することができる性能が求められる。今回発表されたアリゾナ州立大の実験は少なからず低価格3Dプリンターの性能向上に貢献すると考えられる。

また、3Dプリンター自体の性能とは別に、材料自体を開発する動きもみられる。樹脂素材とナイロンやカーボンナノチューブを混ぜた新材料の登場や、さまざまな特性を持つ素材が開発されたり、今後も低価格3Dプリンターで表現できるものが増えていくだろう。

価格が今よりもさらに低下し、スピードや精度が向上し、素材が多角化されることで更なる普及につながることになる。

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