進むポリカーボネート(PC)の3Dプリンター用フィラメント開発
フィラメント開発が著しいFDM(熱溶解積層法)の3Dプリンター。特許失効によるデスクトップモデルの普及と同時に、続々と新たな材料メーカーが登場してきている。こうした材料の多くが、これまで金型で使用されてきたものと同様の熱可塑性樹脂だが、最近ではエンジニアリングプラスチックに分類される高強度、耐久性の高い素材がフィラメントとして開発されてきている。
エンジニアリングプラスチックは、通常のプラスチック素材よりも耐久性といった機能に優れる素材で、厳密な定義は存在しないが、一節には100℃以上の高温下に長時間さらされたとしても、一定の強度を保っているプラスチックと言われている。その用途は非常に幅広く、耐磨耗性や靭性などが求められるパーツなどにはじまり、家電製品の筐体など幅広く使用されている。
中には塗装をしなくても美しい表面や強度を保つものや、塗装時にも定着しやすい素材など、通常のプラスチック素材よりも扱い安いものも存在する。そんなエンジニアリングプラスチックの代表的とも言える素材がポリカーボネート(PC)だ。ポリカーボネート(PC)は、アクリル樹脂などとともに有機ガラスとも呼ばれる耐衝撃性に優れる素材。
外観が美しい光沢を放つことから、高級感を出したい家電製品の筐体などにも多用される。例えばアップルのiPhone5などのボディはポリカーボネート(PC)で作られている。このポリカーボネート(PC)もFDM (熱溶解積層法)3Dプリンター用のフィラメント材料としてもいち早く開発が進められており、安価なデスクトップモデルで使用することができるフィラメント材料も登場しつつある。
本日ご紹介するPolymakerのPC-MAXもそんなポリカーボネート(PC)のフィラメント材料だ。Polymakerは既にポリカーボネート(PC)のフィラメントとしてPC-Plusを販売しているが、更に機械的特性を高めたエンジニアリンググレードの存在がPC-MAXである。
ポリカーボネートを更に強化・安定させたフィラメントPC-MAX
今回PolymakerがリリースしたPC-MAXとは、およそ1年以上開発に費やしている新たなフィラメント素材で、前回のPC-Plus同様、ハイテクポリマー材料のリーディングメーカーCovestroとの提携によって行っている。ちなみに、重複になるが、Covestro社は全世界30カ国に拠点を持つ巨大プラスチックメーカーである。
この2社が再び1年以上の歳月をかけてグレードアップされたPC-MAXとはどのような性能を持っているのだろう。端的に言うと、前回のPC-Plusよりも耐久性や機械的強度が強化されている。また前回のPC-Plusよりも印刷時の温度が低くプリントの安定性が飛躍的に向上している。
ちなみにPC-Plusの3Dプリント時の温度は300℃から320℃であったが、今回グレードアップしたPC-MAXの推奨温度は250℃から270℃である。Polymakerの発表ではデスクトップタイプの3Dプリンター用フィラメントのなかにおいて、トップクラスの最高精度の機械的特性を持ち、非常に強靭であるとのこと。実際PC-MAXの検証実験を何度も行った結果、PC-MAXで作られたパーツの多くはそのほかの素材で3Dプリントされたパーツよりもはるかに変形しない、高い強度を持ち続けていることが検証された。
ポリカーボネートの3Dプリンター用フィラメントPC-MAXの特長
- 高靭性:PC-MAXはそのほかの3Dプリンター用フィラメントにくらべて、圧倒的な靭性を備えている。デスクトップ3Dプリンターでエンジニアリングレベルの造形を安価に提供できる。
- 耐熱性:PC-MAXは通常の3Dプリンター用フィラメント材にくらべて優れた耐熱性を持つ。一般的に100℃以上の環境下で使用することができるプラスチックをエンジニアリングプラスチックと呼ぶが、PC-MAXは100℃を超える110℃以上の高温に耐えうる。
- 機械的強度:ポリカーボネート(PC)の最大の特長は強い耐衝撃性や機械的強度だが、PC-MAXもほぼすべての変形試験下のABSとPLAと比較してはるかに改善された機械的強度を持つ。
- プリント安定性:PC-MAXはデスクトップ3Dプリンターに最適化された設計で、適度なプリント温度(250℃から270℃)ほどと優れた反り抵抗によって安定した3Dプリントが可能。
- 後処理:PC-MAXはサポート材の除去といったデスクトップ3Dプリンターで手間となる後処理も簡単に対応可能。8段階の品質管理プロセスによって作り出されたフィラメント材料は、造形後もポリカーボネートらしい滑らかな表面を保ちつつ、同時にクリアコートスプレーでガラスのような透明性を再現可能。
- 耐溶剤性:PC-MAXは難燃剤や化学物質などの溶媒に対して耐性を持っている。
ポリカーボネートの3Dプリンター用フィラメントPC-MAXのスペック
- ガラス転移温度:113℃
- 密度:1.18~1.20グラム/cm³
- 直径:1.75mm/2.85mm
- 交差:±0.05mm、50ミクロン
- 推奨印刷温度:250℃~270度(1.75mm/2.85mmともに)
- 推奨印刷速度:30-90mm/ 秒
- 推奨温水床:80℃
- カラー:ホワイト/ブラック
Polymaker動画
まとめ プロトタイプの幅を広げ高度な精度を実現する
ポリカーボネート(PC)はエンジニアリングプラスチックのなかにおいても最も汎用性が高い素材である。ポリカなどとも呼ばれ、特に工業製品の筐体として人気が高い。そんなポリカーボネート(PC)がデスクトップ3Dプリンターで手軽に利用できるようになれば、プロトタイプの製造もよりリアルなものに近づけることができる。
現在はまだ安価なデスクトップタイプの性能ではプロトタイプやモックアップの域を出ないが、ハードウェアではなく材料、すなわちフィラメント材料の開発から、デスクトップのレベルを上げていこうという動きが見られる。PC-MAXの開発もそんなデスクトップ3Dプリンターのレベルを向上させる開発の一部だということができよう。近い将来、この開発は更に進み、デスクトップレベルでも一定レベルを保った高精度な造形が可能になるだろう。
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