3Dプリンターを通してオープンソースの使い方を学ぶコース
オープンソースの3Dプリンターを教育キットとして使用する取り組みが登場している。ミシガン工科大学は、学生がソフトウェアとハードウェアに関するエンジニアリングの基本を習得するためのキットとしてオープンソースのRepRap3Dプリンターを使用している。
RepRap3Dプリンターは言うまでもなく低価格のFDM3Dプリンターの代表格。組み立て式のオープンソースで低価格で購入することができる。ミシガン工科大学は、このオープンソースの3Dプリンターを使って、新たなコースを学生たちに提供している。そのコースは500ドルの費用で、デルタ式のRepRapを組み立てて、ハードウェアの仕組みとソフトウェアの仕組みを学習するという内容。
コースが修了するころには、ハードウェアとソフトウェアの基本が学べて、完成したRepRap3Dプリンターも手に入るというわけだ。このコースはおよそ50名の定員だがすぐにいっぱいになってしまったという。
自分でパーツを集めて3Dプリンターを組み立てる
このミシガン工科大学の3Dプリンター組み立てコースは、授業の進め方に特長がある。一般的に日本の学校教育の感覚で考えると、クラスには既にRepRapのキットが用意されており、学生は授業で組み立てるという内容を想像する。しかし、ミシガン工科大学は、宿題という形で自宅で3Dプリンターを組み立てるという形式だ。
しかもRepRapを構成するパーツのなかで、CADで公開されていない、一般的なハードウェアの部品は自分で探して購入しなければならないのだ。まさにオープンソースで力と使い方を徹底して教え込む方法で授業ではハードウェア、ファームウェア、スライシング、およびプリンタコントローラソフトウェアを教え、あとは自分で考えさせる仕組みである。
この方法で、授業2日目には学生たちは誰もが3Dプリンターを組み立てるためのパーツを手に入れ、3週間でRepRapを完成させた。
3Dデザインと製品開発へのオープンソースへの利用も学ぶ
このオープンソース教育の面白いところは、3Dプリンターを自分で組み立てるところで終わりではないところだ。むしろ3Dプリンター自体の組立は準備段階にすぎず、ここからオープンソースの教育が始まるといってもいい。
3Dプリンターが組みあがったあとは、さまざまな用途を学ぶために、5つの設計データと試作品を学生たちにオープンに開放し3Dプリントの設計上の利点と経済性を学ぶことが設けられている。
例えばロッククライミングマウントでの3Dプリントでは、オープンソースの3DCADから改良してプリントできれば、わずか1ドルで自宅でつくることが可能だし、例えば、耳鼻喉などの耳鼻科の診察で使用される医療機器は、試作品が提供され、その構造や仕組みをオープンにすることで、適応、改善する方法を学ぶことに繋げられている。
まとめ これからの時代に求められるのはオープンソースを使いこなす力
RepRapのモットーは「お金のない富」だ。そのためこのオープンソースのコースの最終目的も、学生たちが、オープンソースのデザインをつくることによって「富」を生み出すことにあるとしている。ちなみにここでいう「富」とは単なる金銭的な富ではなく、新たな価値を生み出す源泉のようなものだろう。
このオープンソースのコースを通して、学生たちがハードウェアとソフトウェアの両方の仕組みに精通するだけではなく、オープンソースの設計データを使いこなすことによって改良、新たな製品開発を行うことに繋げている。また、最終的には学生が3Dプリンターの構築、テスト、トラブルシューティング、など一通りをこなすことや、3DCADデータの扱いが行えることも含まれる。
このようなミシガン工科大学の取組は、これからの時代の製品開発にとって欠かすことができない基本的なスキルだといえる。設計データのデジタル化が進み、多くのモノがこれまでのような既存の製法によって作るよりも、はるかに迅速に、はるかに低コストで作られるような時代になりつつある。
そうした場合、求められるスキルは考える力、発想する力であり、それをカタチにする力である。その際、ベーシックとなる設計図はオープン化されていてそれをいかに利用し新たなモノを作るかということがなによりも求められる。そうした点から言うとミシガン工科大学のオープンソースコースは今後の時代に求められる最適なコースだといえるだろう。
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