Form3で200回以上の試作から生まれた小型高性能ノズル。クラウドファンディングで2279%を達成した製品開発ストーリー

試作品での活用事例が広がる3Dプリンター

3Dプリンターの最も代表的な活用例が試作、プロトタイピングでの使用です。特に製品開発のシーンではデザインから形にする過程において、機能や形状などデザイン検証のための試作品を繰り返し作ります。試作品は最終品に近い形や色のほうが望ましく、検証と修正によって最終品の完成度を高めることができます。

今回は光造形3DプリンターForm3を使い、商品の鍵となる小型高性能ノズルを200回以上の試作とテストを行い、クラウドファンディングで目標金額の2279%の応援額を達成した株式会社OKUTECの奥田氏にお話しを伺いました。

Form3で試作し、クラウドファウンディングで2279%を達成

今回ご紹介する奥田氏が開発した「CLOSER FINEMIX (クローザー ファインミックス)」は、「本来混ざらない水と油をミクロンレベルで微粒子化し、添加物不使用で乳化する調理用乳化デバイス」(引用元:【特許技術】全ての美食探求者へ。ファインバブルで料理の可能性を広げる乳化デバイス|マクアケ – アタラシイものや体験の応援購入サービス (makuake.com)だ。特許取得の技術で、水と油を添加物を使うことなく均一に混ざることができるプロダクトです。
これにより料理研究家やお店だけではなく一般の家庭においても、さまざまなソースやオイルなど、食の幅を大きく広げてくれます。

奥田氏は、長年勤務した大手日用品・トイレタリーメーカーであるサンスターを退社し、2017年に株式会社OKUTECを設立、もともと2006年ごろに乳化という技術をしり、乳化に使用されている界面活性剤が無くても機械的に混ぜあわせることができないか?という発想を思いつき開発に至っています。
製品のCOLSERという名前には、もしこの技術が実現すれば、添加物や化学物質を使うことなく、より身近に乳化装置を広げることができるという思いが込められています。これまでにない画期的で身近な製品としてCLOSER FINEMIXはMakuakeで目標金額を大幅に上回る6,837,400円を達成しています。

ブラックとクリアで最終品さながらのプロトタイプを3Dプリント

CLOSER FINEMIXの開発はどのように行われたのでしょうか?およそその開発期間は1年近くに上っています。「設計と試作を繰り返して仕様や性能を決まましたので、商品仕様・最終デザインを決めるまでに約1年程度かかっています。ただ、設計が決まってからの試作は2週間程度で出来たと思います。」(奥田氏)

今回Form3ではブラックとクリアの2種類のレジンを使ってプロトタイプが作られていますが、「この試作品は約9点の部品で構成されており、トータルの出力時間は約30―35時間程度、大きいパーツでも10時間程度で3Dプリントされています。各パーツは3Dプリント後、研磨とクリアコートが施され耐溶剤性を持たせるためウレタン塗料でコーティングされています。」(奥田氏)

ブラックレジンはFormlabsのスタンダードレジンの中でもマットな黒い質感が表現できるレジンで、クリアレジンは、高い透明性を持っています。クリアは造形後にクリアコートを施すことで、積層跡が埋まりより透明性が向上します。

200回を超える試作を3Dプリント。支えるForm3の高い安定性

Form3はデスクトップ型の光造形3Dプリンターの中では比較的造形安定性が高い機械ですが、最終品に近いこのレベルの試作品を作るのにはかなりの試行錯誤がありました。「機械的結合強度が必要な箇所へはリサートを使ってネジ部の補強をするなどを行うことで使えるようになりました。また、最近は寸法公差や造形時の反りなどの特性も造形のトライ&エラーを重ねることで慣れてきました。」

特にこのプロトタイプを作り上げる過程で苦労した点が、本製品の最大の機能である乳化性能の実現です。そのためノズルの試作はおよそ200回に及んだとのことです。

「高いレベルで200回程度の試作テストを実現できたのもForm3の高い安定性のお陰だと思います。例えば形状や寸法を0.1mm単位で変えて性能確認して最も良いポイントを見出すなど、複数パーツを安定して3DプリントできるForm3ならではだと思います。」(奥田氏)。実際に小さい部品で、一度に10~20種類の試作を3Dプリントしています。

まとめ

Form3にはさまざまなメリット、特長がありますが、最大の特長の一つがその高い安定性です。プリント設定のパラメーターを設定する必要がなく、カートリッジとタンクをセットするだけで、機械が自動で材料ごとのプリント設定を行ってくれます。

奥田氏はForm3の魅力について次のように語ってくれました。「一人でも新製品開発できるとのコンセプトで始めた3Dプリンターですが、目論んだ計画以上のことが出来るようになって、この出会い感謝しています。また、現在、次の開発テーマに取り組んでいるところです」。200回に及ぶ試作を実現するForm3の品質と高い安定性が製品開発の現場を支えています。

Form 3+

Form3+は高精細滑らかな造形が特長の光造形3Dプリンターで、非常に高い安定性を誇ります。プリント設定を機械が自動で行うため、複雑な設定や知識は必要ありません。専用スライスソフトで、プリント方向とサポート設定を行うだけで、ほぼ確実なプリントを提供してくれます。

クリアレジン

クリアレジンは高い透明性が特長なレジン材料で、25ミクロン、50ミクロン、100ミクロンの3種類の積層ピッチが選べます。造形後にクリアコーティングを施すことで、さらに透明度を高めることができます。

ブラックレジン

ブラックレジンはマットな質感のブラックの色のレジン材料で、25ミクロン、50ミクロン、100ミクロンの3種類の積層ピッチが選べます。