シンガポール南洋理工大学(NTU)にHPの3Dプリント研究センターが開設

次世代製造技術に力を注ぐシンガポール

シンガポールは3Dプリント技術に最も力を入れている国家のひとつだ。その理由のひとつがシンガポールのGDPの内およそ20%が製造業で占められているためだ。

そのため次世代製造技術による製造業の競争力強化が、同国にとっての次なる経済成長の鍵となる。具体的には、ロボットや3Dプリント(シンガポールではAdditive Manufacturingの呼びかたを行ている)による自動化と、IoTやAIによるデジタル化だ。

この二つの柱によって、自国の製造業の競争力を強化し、更なる経済成長へとつなげようとしている。その中でも3Dプリンティングは、シンガポールが特に力を入れる分野で、シンガポールの国家戦略であるResearch、Innovation and Enterprise通称RIE2020計画の4つの技術分野の1つ、先進製造技術として取り扱われている。

HPの大規模3Dプリント研究所がNTU(南洋理工大学)に開設

今回ご紹介するNTUにおいても過去に3Dプリント研究所を設けたり、更には政府が支援しているシンガポール進出企業では、ヤマザキマザックなどがアディティブマニュファクチャリングセンターを開設するなど、世界に一歩先駆け3Dプリントの活用が行われていると言っていいだろう。

そして、今回ご紹介するHP(ヒューレット・パッカード)の大規模3Dプリンター研究所は、NTUとNational Research Foundation Singapore(NRF)によって行われる最大規模のものだ。

因みにNTU(南洋理工大学)はシンガポール国立大学(NUS)と共に、アジアで1位、2位にランキングする大学。そしてこのHPの3Dプリント研究所はアジアで初となると言っても過言ではない。

HP-NTUデジタルマニュファクチャリングラボとは

こNTUにあるHP-NTUデジタルマニュファクチャリングラボでは、100人の研究者とスタッフがあつまり、3Dプリントから、人工知能、機械学習、新しい材料とアプリケーション、サイバーセキュリティとカスタマイズを発展させるデジタル製造技術の研究がおこなわれる。スタート時には、3つの分野について15のプロジェクトが行われる。それが以下の通りだ。

  1. 新しい材料とアプリケーション:製造用途向けの高度なポリマー、プリント可能なバイオプリントモデルの開発、温度変化による形状に適応した4Dプリントスマートシステム
  2. 人工知能と機械学習:プリンターが自律的に問題を予測し解決する手段
  3. サイバーセキュリティ:エンドツーエンドのポイントセキュリティインフラストラクチャとマルウェア対策の改善に関する調査

この研究には同時に、データ管理、セキュリティ、ユーザーエクスペリエンス、ビジネスモデルなどの領域まで含んでおり、Additive Manufacturingの設計に関する教育カリキュラムの開発も含まれる。

次世代製造業の導入を加速する核となる研究所

NRTのLow Teck Seng教授は次のように述べている。「本研究所は、シンガポールの産業の成長に直接関連する分野において、大学と企業との共同研究開発パートナーシップを確立することが戦略的に不可欠である」。

現在、世界中の製造業がシンガポールにリージョナルヘッドクオーター(地域統括会社)を設け活動しているが、次世代製造技術を導入することはこうした企業の長期的な競争力にとって重要であり、世界的に急速に発展している第4次産業革命にいち早く対応するものである。

また、NTUのSubra Suresh教授は、次のように語っている。「NTUは機械学習、データサイエンス、アディティブマニュファクチャリングの分野で有名なリーダーです。これらの最先端技術は現在、NTUの教育研究のエコシステムの不可欠な部分であり、NTUスマートキャンパスは、それらのためのテストベッドとして機能しています。これはスマートネーションに変身するというシンガポールのビジョンに沿っています」。

デジタル化の影響は10年で100兆ドル以上とも

またHPのDion WeislerCEOは、「世界経済フォーラムは、今後10年間ですべての業界がデジタル化することによって100兆ドル以上の価値が創出されると予測しています。HPは、 3Dプリンティングのように、この変換の利点を有効にします。シンガポールは、3Dプリント技術の世界的な技術開発拠点、および製造の中心地です。 HP-NTUデジタルマニュファクチャリングラボは、3Dプリントとデジタル製造のエコシステムの核となります。私たちはNTUと協力することを誇りに思っています」。

まとめ AIと3Dプリントの融合で更なる進化の可能性

今回の研究所の発表で最も気になる部分が、人工知能と機械学習、すなわちAIと3Dプリンターの融合だ。例えば、材料特性や設計モデルの形状に応じてAIが自動で最適なプリント方法や設定を行ってくれれば、更に最適なモノが作れるようになったり、ミスプリントなどが圧倒的に少なくなるかもしれない。3DプリンターはAIとの融合によって飛躍的な進化を遂げる可能性がある。

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