熱可塑性エラストマー(合成ゴム)に特化。NinjaTekの二つの新しいフィラメント

合成ゴムのフィラメントに特化するNinjaTek

FDM(熱溶解積層法)の材料である3Dプリント フィラメント。このフィラメント素材のバリエーションが急速に拡大している。FDM(熱溶解積層法)の特許切れにより低価格な廉価版が登場し始めた2012年や2013年頃には主に二つの材料、ABS樹脂とPLA樹脂がメインであったが、その後わずか数年間でさまざまなフィラメントが登場してきている。

プラスチックはセルロイドフェノール樹脂(ベークライト)の登場以来、さまざまな特性、機能を持つものが開発されているが、おの種類はおおきく分類して二つの種類に分けることができる。それが熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂だ。現代のものづくりにおいて使用されているプラスチック素材は熱可塑性樹脂だが、その大半が加熱して溶かし、冷却して固めるという加工方法をとっており、この加工方法は、基本的にFDM(熱溶解積層法)と同様である。

そのため熱可塑性樹脂のFDM(熱溶解積層法)専用材料であるフィラメントへの開発が盛んになってきている。本日ご紹介するNinjaTekの二種類のフィラメントもこうした熱可塑性樹脂を利用したフィラメントであるが、NinjaTekは特に合成ゴムとして知られる熱可塑性エラストマー(TPE)に特化しているフィラメントメーカーだ。

工業用グレードの性能をもち、耐衝撃性に優れるCHEETAH ™と、硬さとタフさに利点があるARMADILLOをご紹介しよう。

2種類の熱可塑性エラストマー(TPE)の新型フィラメントとは

NinjaTekは既に熱可塑性ポリウレタン(TPU)をベースにした柔軟なフィラメントNinjaFlexを販売しているが、今回新たに異なる柔らかさを持つ2種類のフィラメントをリリースした。ちなみに一応整理しておくと、熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、ポリウレタンをベースにした熱可塑性エラストマー(TPE)のことで、熱可塑性エラストマー(TPE)は合成ゴムの総称である。

熱可塑性エラストマー(TPE)は一言で言うならばプラスチックとゴムの中間に位置する高分子素材で、加熱すると軟化し、冷却すると一定の弾性を保ちながら硬化することができる。金型加工の代表、射出成形ではお馴染みの素材で、ポリスチレンのスチレン系や、ポリ塩化ビニルの塩ビ系、ポリウレタンのウレタン系、ポリアミドなどのアミド系、ポリエチレンなどの原料であるオレフィン系など、その種類はさまざま。

靴底や自動車用パーツなどあらゆるプロダクトに使用されている。ちなみにフィラメント以外での3Dプリントの利用も開始されており、アディダスとマテリアライズが、粉末状の熱可塑性ポリウレタンとレーザー焼結法によりスポーツシューズの靴底の製造を行っている。

以上は余談だが、今回の2種類のフィラメントはCHEETAH ™が、特別に配合された熱可塑性エラストマー(TPE)を使用したフィラメント素材で、一言で言うならば工業用グレードで使用することができる特性を備えている。また、ARMADILLOはNinjaFlexと同様、熱可塑性ポリウレタンをベースにしたフィラメント素材で、NinjaFlexよりも硬く、最も一般的な硬質材料として最適なフィラメントだという。両者とも発売日は近日公開予定。

ゴムのオブジェクトのプロトタイプに最適
靴底やシューズの可能性も広がる

高い耐衝撃性を持つ工業用グレードのフィラメントCHEETAH ™

CHEETAH ™の最大の特長は、FDM(熱溶解積層法)のフィラメントとして最も代表的なABS樹脂の場合と同じような設定を使用してプリントすることができる。その最大の特性は優れた耐衝撃性と高い引張強度だといえる。とりわけ耐衝撃性はABS樹脂の25パーセント大きく、低グレードのナイロンに匹敵する引張強度を持つ。また、耐磨耗性や耐薬品性に優れており、デスクトップ3Dプリンターを使い、工業用グレードに匹敵するオブジェクトやパーツを作ることが可能だ。

カラーも7色で展開予定

CHEETAH ™フィラメントの主要な特長

  • 信頼性の高い、高品質のプリントが可能
  • すべてのタイプのFDM 3Dプリンターでプリント可能
  • 標準のABSの設定​​でプリント可能
  • 耐衝撃性がABSよりも25%大きい
  • 低グレードのナイロンに匹敵する引張強度
  • 優れた耐摩耗性
  • 優れた耐薬品性
  • 層間の優れた造形プラットフォームの接着および結合
  • 優れた後処理機能
  • RoHS指令2002/9​​5/ECに準拠
  • ショア硬度= 98A

CHEETAH ™プリントガイドライン

  • フィラメント径:1.75mm(500g)/3mm(750g)
  • プリント温度:245℃(範囲240℃〜250℃)
  • プリントベッド温度:40℃の周囲
  • プリントベッドの準備:特別な準備は不要
  • 印刷速度:トップ-ボトム層:30-40mm/秒、インフィル速度:50mm-75mm/秒
  • 冷却ファン:使用可能な場合はON

PLAの脆さを克服。反りが無いフィラメントARMADILLO

もう一つNinjaTekがリリースしたフィラメントARMADILLOは、一言でその特性を言うと、PLAフィラメントの弱点である脆さを克服したフィラメントだと言える。ご存知のとおりPLAはFDM(熱溶解積層法)で使用した場合、硬いが脆く割れやすいという特性を持つ。このARMADILLOは、このPLAの弱点を克服したフィラメントだといえよう。

そのため、特別に配合された熱可塑性ポリウレタンを使用しているが、市場に流通している多くの硬い材料と同様にオブジェクトをプリントできる。またPLAやABSなどで懸念される「反り」の問題が実質的にないフィラメントだ。PLAなどではプリントの不具合の一つとして物体が反り返る「反り」と言われる不具合が起きることがあるが、このARMADILLOでは「反り」が起きない。また物性としても優れた耐磨耗性と耐薬品性をもち、安定したプリントが可能だ。

こちらは9色で展開

ARMADILLOフィラメントの主要な特長

  • 信頼性の高い、高品質のプリントが可能
  • 「反り」が無い
  • 優れた耐摩耗性
  • 優れた耐薬品性
  • 層間の優れた造形プラットフォームの接着および結合
  • 優れた後処理機能
  • RoHS指令2002/95/ECに準拠
  • ショア硬度= 75D
  • フィラメント径:1.75mm(500g)/3mm(750g)

まとめ 4種の異なる硬さを持つゴムのフィラメントが充実

NinjaTekは熱可塑性エラストマー(TPE)をベースにしたゴム系のフィラメントに特化することで、既存のABSやPLAでは再現できないオブジェクトの造形を可能にしている。今回ご紹介した、CHEETAH ™とARMADILLOの2種類のフィラメントが加わることによってより剛性が異なるオブジェクトの造形が可能になる。

ちなみに、2種類のフィラメントの特長の部分で述べたショア硬度とは硬さを示す基準の一つで、先端にダイヤモンド半球を取り付けたハンマーを落としたときの跳ね返りの強さで、その物体の硬さ、剛性を計測する基準。最も計測方法が簡単な基準の一つで、ハンマーを落としたときに跳ね返った高さを、元の高さで割った数値になる。

NinjaTekのメインのフィラメントはこれで4種類になったが、さまざまなショア硬度をもち、特長も異なる充実をしている。これにより細かい試作ニーズに応え、作れるプロトタイプの幅も拡大することになるだろう。

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