最終品「Vapor Carbon Elite」に3Dプリントを使用
昨年2013年の6月に発表されたナイキの3Dプリントシューズは、3Dプリントブームと相まって一斉にメディアで騒がれた。
その時に3Dプリントされたのはアメフト用のスパイク「Vapor Laser Talon」の滑り止めの製造だが、当時はまだ単純に試作品の製造目的で3Dプリンターが使用されていたにすぎなかった。
しかしこのほどナイキが発表したところによると、2014年2月開催予定のアメリカ最大のアメリカンフットボール大会「スーパーボウル2014」で「Vapor Laser Talon」の後継モデル「Vapor Carbon Elite」を投入する見通しだ。
「Vapor Carbon Elite」は「Vapor Laser Talon」と違い、試作品の製造ではなく実際に使用される最終品に3Dプリントされたスパイクが使用されることになるとのことだ。
Vapor Carbon Elite
マイケル・ジョンソンと共同開発
ナイキは今回製造を開始する「Vapor Carbon Elite」の製品開発にあたり、従来モデルの「Vapor Laser Talon」以来、伝説のスプリンターと言われオリンピックでも数々のメダルを手にした世界的陸上選手マイケル・ジョンソンと共同で開発にあたっている。
マイケル・ジョンソンとナイキの製品開発チームはアメリカン・フットボールの距離である40ヤード(約36m)のダッシュでの使用に最適な設計を研究し、「Vapor Carbon Elite」をフットボールチーム全員に使用できるモデルにした。
具体的にはプレイヤーが移動を開始する「ゼロステップ」の処理を可能な限りなくすことに研究の焦点は当てられ、「ゼロステップ」の工程中に起こり得るすべりを低減させることを可能にしている。
このように製品設計にあたって、アメリカン・フットボールの距離、プレイヤーの行動、その際の物性など、あらゆる部分を分析しそれをデザインと3Dモデルにおとしこみを行うことで性能向上を行っている。
「Vapor Carbon Elite」はこうした従来の製品企画に関する分析やアイデアと、3Dモデリング作業が合わさることで、プレイヤーの推進力と牽引力をアップすることが果たされたモデルだ。
3Dプリントされたスパイク部分
「Vapor Carbon Elite」スーパーボウル2014モデル
製造に関する動画(スパイクの3Dプリント)
まとめ
ナイキは「Vapor Carbon Elite」の製品開発に3Dプリント技術を使用することで製品開発にかける期間を圧倒的に短縮することに成功している。
従来は2~3年ほどかかるが現在ではわずか6か月程度で製品企画と開発が可能になると発表している。
さらに従来は試作品製造として3Dプリント技術を使用してきていたが3Dプリント技術の飛躍的な向上によって、最終品をダイレクトに製造することを実現した典型的なケースだ。
今回「Vapor Carbon Elite」で3Dプリントされた部分はスパイクなどを含む靴の基盤部分で、ナイロンを3Dプリントすることによって生成されている。
こうした最終品の3Dプリントは一重に3Dプリント技術の向上によるものだが、2014年度以降、こうした動きはさらに強まっていくだろう。
今年に入り3Dプリントメーカーが新たなニューモデルを発表していることや、いろいろな分野での3Dプリント製造が研究段階から実用段階に移りつつあるのが現状だ。
今後も3Dプリント技術の精密さの向上と素材の多角化は、更なる使用の幅を広げてくれるだろう。
その一方で製品開発における企画とデザインの重要さを忘れてはならないのではないだろうか。
ナイキは確かに3Dプリント技術を使用することによって従来とは比べ物にならないくらい短い期間で企画から開発にこぎ着け、表現できることの幅も拡大しているが、その裏付けには徹底した実用研究とユーザーの特性を分析しぬいている研究が背景にあるからだ。
これを表現するのがプロダクト・デザインであり、3Dプリント技術は単なる作業と製造工程を示す一つの技術に過ぎないともいえる。
3Dプリント技術はより製品開発の幅を拡大してくれるツールだが、その根底にあるのはあくまでも市場とユーザーの経験に裏打ちされた製品企画とプロダクトデザインであることを忘れてはならない。
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